Q:マイコンは、0と1で表された2進数だけを扱うデジタルコンピュータに使いますよね。ところが、「アナログに強いマイコン」があるって聞きました。どういうことですか?
A:マイコンはいろんな装置に組み込まれています。それらの装置には、アナログ機能が必要なものと、そうでないものがあります(図1)。
例えば、ボタンを押して計算式を入力し、結果をLCDに出力する電卓には、基本的にアナログ機能が必要ありません。しかし、エンジニアが電圧を測るときに使用するデジタルマルチメータ(DMM)では、アナログ電圧を取り込んでデジタル値に変換する必要があります。その他にも、温度を測る温度計、重さを測るはかり、スピードを測る速度計など測定装置の多くは、まず温度/荷重/速度などのアナログ量(連続量)をセンサを用いてアナログ電圧に変換し、さらにデジタル値に変換して出力します。
このように、測定やセンシングを行う装置の多くは、装置としてアナログ機能を必要としています。
さらに対象の温度、明るさ、速度などを滑らかに制御する装置では、これらのアナログ量を出力する機能も必要になります。
Q:確かに、身の回りで使われているいろんな装置には、アナログ入力やアナログ出力が必要なものがたくさんありますね。
A:そのような場合に使われる電子回路が、アナログ電圧をデジタル値に変換するA/Dコンバータと、デジタル値をアナログ電圧に変換するD/Aコンバータです。A/Dコンバータは「アナログ電圧→デジタル値」という変換を行う変換器、D/Aコンバータは「デジタル値→アナログ電圧」という変換を行う変換器です。
1970年代に初めて登場した頃のマイコンは、デジタル回路だけで構成されたLSIであり、電卓のようにアナログ機能を必要としない装置に使われました。その後、アナログ入力やアナログ出力を必要とする装置にマイコンを使いたいという要望が多くなってきましたが、デジタルLSIにアナログ機能を組み込むのは技術面でもコスト面でも大変でした。その頃は、マイコン自体にはアナログ機能を持たず、外付けのA/DコンバータICやD/AコンバータICと組み合わせて使うのが普通でした。
1980年代にはLSIの製造技術が進み、デジタル回路とA/DコンバータやD/Aコンバータを統合したLSIが容易に作れるようになってきました。そこで、以前は外付けだったA/DコンバータやD/Aコンバータは、次第にマイコンに取り込まれて、マイコンのI/O機能の1つとなっていきました(図2)。
Q:それが「アナログに強いマイコン」なのですか。
A:A/DコンバータやD/Aコンバータを内蔵しているだけなら、今ではごく当たり前なので、特に「アナログに強い」とは言えません。
A/DコンバータやD/Aコンバータが変換する際の分解能や精度が高いこと、変換の速度が高いこと、多チャネルの切り替え機能や同時サンプリング機能、CPUを介さない自動データ転送機能など、性能・機能が優れていれば「アナログに強い」と言えるでしょう。
最近ではA/DコンバータやD/Aコンバータ以外にも、コンパレータやオペアンプなど、さまざまなアナログ機能を内蔵したマイコンも登場しています。オペアンプは、A/D変換の前のアナログ信号処理、D/A変換の後のアナログ信号処理を柔軟に行うことができる万能のアナログ素子です。以前は外付けのコンパレータやオペアンプと抵抗などの受動部品を使用して回路を実現していましたが、内蔵することによってより小型で低コストのシステムを構築できるようになりました。
Q:マイコンの多機能化が進んでいるのですね。
A:最初に見たように、マイコンにはアナログ機能を必要としない用途もありますから、全てのマイコンが「アナログに強い」必要はありません。ただ、測定やセンシング、自動制御などの用途で使うマイコンは、「アナログに強い」ものを選ぶと便利です。
テキサス・インスツルメンツ(TI)のMSP430™マイコンは、超低消費電力であることに加えて、豊富なアナログ機能を搭載した品種が多いことでも知られています(表1)。これからは、IoTデバイスのように、小型で長期間動作して、周囲の環境を常時測定する装置がたくさん使われるようになります。MSP430は、そのような用途に最適なマイコンと言えるでしょう。
【関連リンク】
※CapTIvate、MSP430およびMSP432はTexas Instruments Incorporatedの商標です。その他すべての商標および登録商標はそれぞれの所有者に帰属します。
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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2016年3月31日
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