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産業機器における電源の“隠れた悩み”を解決するユニークICを一挙紹介電流変更可のLDO、ヒステリシス調整可のリセットICなど

1台にさまざまな電源回路を搭載する産業機器。搭載する電源回路の数が多いために、電源に求められる要素も千差万別だ。そうした中で、産業機器向け電源ICを拡充しているトレックス・セミコンダクターは、これまでは見過ごされてきた産業機器市場の隠れた電源の悩みを解決するユニークな製品を相次いで投入し、にわかに注目を集めている。本稿では、そうした“隠れた悩み”を解決するユニークな電源ICを紹介していく。

» 2016年11月28日 10時00分 公開
[PR/EDN Japan]
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 産業機器市場は、少量多品種生産が主流であるが故に、民生機器や自動車市場に比べ、実に多種多様な開発ニーズが存在する。電源回路システム1つをとっても産業機器市場では、“業界標準”と呼べるような画一的な仕様は存在せず、まさに機器ごとに異なる仕様、要件を満たした電源が構築されている。

 こうした多種多様なニーズが存在する産業機器向け電源市場において、その存在感を高めつつある電源ICメーカーがある。それは、トレックス・セミコンダクターだ。

 トレックスは、携帯型音楽プレーヤーを皮切りに、モバイル端末向けの電源ICメーカーとして事業規模を拡大。現在も世界的なスマートフォンメーカーなどに対し“小型”“高効率”を特長にした電源ICを提供し、バッテリー駆動機器向け電源ICで確固たる地位を築いているメーカーだ。

 モバイル機器向け電源ICメーカーとしてのイメージが強いトレックスだが、2010年頃から、車載市場とともに、本格的に産業機器市場に参入。モバイル機器市場で培った“小型・高効率技術”に、車載、産業機器市場に不可欠な“信頼性”を付け加えた製品展開を実施。そして、近年では“小型・高効率+信頼性”とともに、極めて変化の激しいモバイル機器市場で培った“ニーズを的確に捉え、迅速に製品へと反映させる”というマーケティング力と開発力を生かした“トレックス独自のユニークな製品”を相次いで投入。これまで見過ごされていた産業機器市場での潜在的な課題を解決する特色ある製品展開で、産業機器市場におけるトレックスの存在感を高めつつあるのだ。

 では、産業機器市場で注目を集める“トレックス独自のユニークな製品”とはどのようなものなのか。代表的な製品をいくつか紹介していこう。まずは、最大出力2Aの高速LDOレギュレーター「XC6230」だ。

万能なLDOレギュレーター「XC6230」

 産業機器の電源、パワーデバイスとしては往々にして、高耐圧、ハイパワーなデバイスに注目が集まりがちであり、“2A出力のLDOレギュレーター”ではインパクトがないように思えるかもしれない。しかし、産業機器では、多くのLDOレギュレーターが必要になっており、その分、課題も多くなっているのだ。

 というのも、産業機器に搭載されるマイコンの数は、センサーの搭載や機能増に従い増え続けている。同時に、マイコンの搭載増により、マイコン近傍で、そのマイコンに応じた電源を供給するためのLDOレギュレーターの搭載数、強いてはLDOレギュレーターの種類も増えているわけだ。LDOレギュレーターの種類が増えれば、その分、調達、在庫管理のコスト、リスクも増える――という課題が生まれているのだ。

 XC6230は、こうした産業機器市場におけるLDOレギュレーターの課題を解決する製品として開発された。その開発コンセプトは、“万能なLDOレギュレーター”であり、“1つのLDOレギュレーターであらゆるマイコンに電源を供給できる”を目指した。

最大出力2Aの高速LDOレギュレーター「XC6230」の概要 (クリックで拡大)

 一般に、LDOレギュレーターは、出力電圧については、外付け抵抗器の抵抗値を変えることで、任意の電圧に設定できる。しかし、最大出力電流については、LDOレギュレーター製品ごとに決まっており、変更できない。

 もちろん、“大は小を兼ねる”で、最大出力電流2Aのレギュレーターを、500mAや1Aの供給能力で足りるところに、使うことはできる。ただし、この“大は小を兼ねる”形でLDOレギュレーターを使用した場合、レギュレーターに搭載されている過電流保護機能は“大”を前提にした保護機能であり、出力電流を抑えた使用では、過電流保護機能がない状態になる。例えば、500mAの電流で事足りる箇所に、最大2Aの出力電流のLDOレギュレーターを実装し電源供給はできるが、万が一、600mA以上流れた場合に、電源供給をストップさせたいと思っても、レギュレーター単体では、ストップできない。信頼性が要求され、なるべく機器全体を止めずに故障領域を最小限にとどめたいというトレンドの強い産業機器分野で、保護機能が働かない“大は小を兼ねる”でのレギュレーターの使用は実質的にできない。

「XC6230」は外付け抵抗1本で電流制限値を設定できる (クリックで拡大)

 こうした状況で、XC6230は、電圧同様に、外付け抵抗器の抵抗値で、電流制限値を設定できるのだ。電流制限設定範囲は、300mA(外付け抵抗=200kΩ)から2.5A(外付け抵抗=0Ω)まで。すなわち、これまでバラバラのレギュレーターを使っていた200mAクラスから2AクラスのLDOレギュレーターを全て「XC6230+抵抗器1本」に置き換えることができるのだ。

 「抵抗器1本を追加するため、電源単位でみればサイズ/コスト増に見えるが、1リール(=3000〜5000個程度)での購入が求められるLDOレギュレーターの品種数を1つにできることによるコストダウン効果の方が大きい。在庫管理などの手間も大きく削減できるメリットがあり、発売から1年程度だが、他にはない万能レギュレーターとして、採用数が急拡大している」という。

 なお、XC6230の入力電圧範囲は1.7〜6.0V(耐圧7V)で入出力電位差は1.0A出力時0.16V。消費電流は45μA、スタンバイ電流は0.1μA。逆流電流防止、突入電流防止、CL高速ディスチャージといった付加機能や、過熱保護機能なども備える。動作周囲温度は−40〜+105℃。パッケージは、小型リードレスのUSP-6C(1.8×2.0×0.6mm)とリード付きのSOP8FD(6.0×4.9×1.55mm)の2タイプある。

「XC6230」が搭載する主な保護機能の概要 (クリックで拡大)

ヒステリシスを外部調整できるリセットIC「XC6132/34シリーズ」

 トレックスでは、XC6230と同様、デバイスを共通化しコスト/リスクの抑制に貢献できる産業機器向けの“万能デバイス”として、ヒステリシスを外付け抵抗で任意に調整できるリセットIC「XC6132/34シリーズ」も販売している。

 「モーター駆動用途などでは電圧変動が激しく、リセットICを反応させたい変動と反応させたくない変動が存在し、機器やシステムによって微調整をしたいというニーズが高い。これまでは、検出/解除遅延時間を設定できるものがほとんどだったが、XC6132/34シリーズは、検出電圧、解除電圧などヒステリシス自体を外部調整できるため、細かなリセットニーズに1つの製品で対応できる」。

ヒステリシスを外部調整できるリセットIC「XC6132/34シリーズ」の概要 (クリックで拡大)

 XC6132/34シリーズは、センス端子と電源入力端子が分離され、別電源の電圧を監視することができる特長がある。仮に、監視する電源の電圧が0Vまで低下しても、出力を検出状態に保持するといったことが行える。センス端子は、外付け抵抗で任意の検出、解除電圧を設定できる他、12〜15Vといった高電圧の監視も行える利点がある。「通常のリセットICは、5〜6Vの電圧しか検出できず、信号の電圧レベルが±15VのRS232cの挿抜監視用途などでは、ディスクリート部品で回路を組む必要があった。XC6132/34シリーズであれば、抵抗で分割するだけで対応できる」という。

 XC6132/34シリーズの動作電圧範囲は1.6〜6.0V。検出電圧範囲は、XC6132が0.8〜2.0V、XC6134が0.8〜5.0V。XC6132には、サージ電圧保護機能が備わる。

 いずれも消費電流は、検出時1.28μA、解除時1.65μA。出力形態は、NチャンネルオープンドレインないしCMOS。パッケージはUSP-6CとSOT-26の2種類あり、動作温度範囲は−40〜125℃だ。

 「XC6132/34シリーズは、細かなヒステリシス調整ができる上、産業機器1台に5〜6種類ほど使われてきたリセットICを1種類に集約できるメリットがあり、万能レギュレーターのXC6230同様、多くの引き合いを得ている」とする。

レギュレーターを代替できるDC-DCコンバーター「XC9263/64シリーズ」

 XC6230やXC6132/34シリーズなどのように、これまで見過ごされがちだった産業機器の細かなニーズに応えたトレックス製品は、DC-DCコンバーターにも存在する。その代表的な製品が「XC9263/64シリーズ」だ。

 産業機器でDC-DCコンバーターが使用されるのは、3A以上の電流を必要とする場合が多い。逆に、3A未満の電流が必要な際には、レギュレーターを用いられるケースがほとんどだ。

 一般に、レギュレーターはDC-DCコンバーターよりも効率は大きく劣るが、価格は安い。産業機器で用いられる12〜15V入力から5Vへ降圧するLDOレギュレーターではなおさら、価格差が大きく、レギュレーターの採用が多くなっている理由になっている。

 しかし、パワコンなどの制御基板で必要になるマイコンなどへの電源供給用途では、「負荷1mA程度のスタンバイ時から負荷500mAの動作時の範囲で電源の効率を改善したいというニーズが高く、そうしたニーズに応えられる電源ICとしてXC9263/64シリーズを開発した」という。

DC-DCコンバーター「XC9263/64シリーズ」の概要 (クリックで拡大)

 XC9264シリーズは、負荷1mAなどの軽負荷時の変換効率を高めることのできるPFM(パルス周波数変調)制御モードと、重負荷時の変換効率に優れるPWM制御モードを負荷に応じて自動切り替えする「PWM/PFM自動切り替え機能」を搭載。これにより1mAから500mAの負荷領域(12V→5V変換時)で85%以上の効率を実現する。

「XC9264シリーズ」はPWM/PFM自動切り替え機能を搭載し、軽負荷でも高い変換効率を実現する (クリックで拡大)
「XC9264シリーズ」とLDOレギュレーターの比較。「XC9264シリーズ」はLDOレギュレーターに比べ、回路面積を5分の1、損失を2分の1、発熱を4分の1にそれぞれ削減できる (クリックで拡大)

 この高い効率により、LDOレギュレーターでは不可欠だった放熱フィンや基板の補強加工が不要になり、システムコストを大幅に低減できる。さらに、XC9263/64シリーズは、システムコストの削減を図るため、2.2MHzという高速スイッチングでの動作を選択できるようにした(他に1.2MHz、500kHzも選択可能)。この高速スイッチングにより、外付けのコイル、コンデンサーのサイズを抑えられるため、より一層のコストダウン、サイズダウンを実現。LDOレギュレーターでは70mm2以上のサイズが必要だった電源回路を、XC9263/64シリーズわずか15.8mm2の実装面積で実現できる点からも、その優位性が分かるだろう。

 「LDOレギュレーターからDC-DCコンバーターへの置き換えをためらわれる要因として、コスト以外にも、バックアップ電源からの動作を想定する用途を中心に“DC-DCコンバーターはLDOレギュレーターのように入出力電位差がないところまで動作しない”という理由が挙がる。その課題にもXC9263/64シリーズは対処した」という。

 一般に、XC9263/64シリーズがターゲットとする定格20V耐圧(入力電圧範囲3〜18V)クラスのDC-DCコンバーターは、チップサイズを抑えるためにハイサイドトランジスタ、ローサイドトランジスタともにNチャンネルMOSFETを用いるケースがほとんどだ。しかし、この構成であれば、デューティー比80%程度が最大で、入出力電位差が大きくないと使用できない。そこで、XC9263/64シリーズは、5V耐圧など低耐圧DC-DCコンバーターで主流のハイサイドトランジスタにPチャンネルMOSFET、ローサイドトランジスタにNチャンネルMOSFETを用いる構成を採用し、デューティー比100%が実現でき「5.5Vから5.0Vといった電位差の少ないケースまで対応できるようにした」とする。

「XC9263/64シリーズ」はデューティー比100%まで対応し、入出力電位差が小さいところまで使用可能だ (クリックで拡大)

 XC9263/64シリーズは、パワーグッド機能を搭載しソフトスタート時間も設定可能な多ピンのUSP-6Cパッケージと、リード付きのSOT-25パッケージの2種がある。

 トレックスでは、「産業機器向けの電源は、高耐圧/大電流領域に注目が集まり半導体メーカーもそうした領域に対する製品投入を強化する傾向にある。当社も産業機器市場参入当初はそうした先入観を持っていたが、ユーザーの声を聞くうちに数百mAクラスの電源でも、いろいろな課題があり、それらを解決したいというニーズがあることに気付いた。20Vなど中耐圧で、数百mAクラスの電源ICは、他社を含めあまり選択肢がない状況であり、今後も、高耐圧/大電流製品と並行して拡充を進めてきたい」としている。

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提供:トレックス・セミコンダクター株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2016年12月27日

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