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小型リードレスパッケージでも自動外観検査に対応! 車載専用の“コイル一体型”DC/DCコンバータが登場ウェッタブル・フランク構造を採用

小型化が要求される自動車のECU(電子制御ユニット)に向けて、新概念のDC/DCコンバータが登場した。リードレスパッケージながらハンダ接合部の自動外観検査に対応する小型パッケージにコイルまで内蔵したDC/DCコンバータ「XDL601/XDL602シリーズ」だ。なぜ、リードレスパッケージなのに、自動外観検査に対応できるのか? XDL601/XDL602シリーズを詳しく紹介していこう。

» 2018年11月20日 10時00分 公開
[PR/EDN Japan]
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 自動車業界は、100年に1度とも呼ばれる大きな変革期を迎えている。それを象徴するキーワードの1つが「CASE」だ。Connectivity(=外部との接続)、Autonomous(=自動運転)、Sharing(=共有サービス)、Electric(=電動化)という4つの大きなトレンドの頭文字をとった言葉。自動車がさまざまな方向性の進化を同時に遂げようとしていることを示している。

 CASEに代表される多面的な自動車の進化は、自動車に搭載される機能の数が一層増えることを意味する。実際、自動車の機能を実現するECU(電子制御ユニット)の数は増え続けている。一方で、燃費/電費向上、ひいては環境配慮のために、自動車は軽量化が求められる。また、快適性を高めるために車室空間を大きくする必要があり、ECU搭載点数をむやみに増やし、ECUの重量や占有スペースを増やすことはできない。ECU一つ一つのサイズを小型化する必要性がある。

 ECUの搭載点数の増加は、自動車開発を一層、高度なものにしている。ECUの搭載密度が高まれば、熱やノイズの対策はより難しいものになる。また、ECU自体の評価/試験工数も増大する。自動車の開発現場は、CASEに代表される変革期の到来に伴い、抱える課題も大きくなってしまっているのが現状だ。

小型化/高密度実装が要求されるECUに向け、トレックスが提案する電源の最適解

 電源ICメーカーのトレックス・セミコンダクターは、自動車の開発現場が抱える課題解決に対し、電源ICという側面からサポートしている。具体的には、スマートフォン向けなどで培った小型・低消費電力電源IC技術をベースにした自動車向け電源ICの開発を強化しているのだ。その一貫として2018年11月、ECUの小型化に貢献する降圧型DC/DCコンバータICの新製品「XDL601/XDL602シリーズ」の量産出荷を開始した。

“micro DC/DC”コンバータ「XDL601/XDL602シリーズ」のパッケージ内イメージ。DC-DCコンバータICとコイルが並ぶ形でパッケージ内に内蔵されている。ICとコイルを並べた配置についてトレックスは「IC、コイルともに基板との接続面が広く、放熱性に優れる配置」と説明する

 XDL601/XDL602シリーズの最大の特長は、電源回路で必須のコイルをパッケージに内蔵した「コイル一体型DC/DCコンバータ」であること。トレックスでは、2009年から「“micro DC/DC”コンバータ」という名称で、コイル一体型DC/DCコンバータを展開。“micro DC/DC”コンバータは電源回路の小型化に貢献するだけでなく、時間のかかるDC/DCコンバータとコイルのマッチングが不必要で、熱やノイズの発生も抑えられるといった特長を持つ。こうした多くの利点から、スマートフォンをはじめとしたモバイル機器や各種民生機器、産業機器などの幅広い用途で採用され、既に1億個以上の出荷実績を持つ。自動車用途でも「車載情報機器を中心に、既に多くの採用実績がある」(トレックス)という。

 そうした中で、XDL601/XDL602シリーズは「“micro DC/DC”コンバータとして初めて、“車載用途に特化した製品”として、車載市場特有のニーズを反映する形で開発した」という。XDL601/XDL602シリーズは“micro DC/DC”コンバータとして初めて、車載用ICの品質規格「AECーQ100(Grade2)」に準拠し、自動車用途で求められる−40〜+105℃という周囲温度での動作を保証した。そして、「これまでの“micro DC/DC”コンバータでは応えきれなかった車載分野特有のニーズに応えることが可能になった」という。

 そのニーズとは、ハンダ接合部の自動外観検査への対応だ。“micro DC/DC”コンバータがこれまで採用してきたリードレスパッケージでは、ハンダ接合部の目視検査が難しく、車載顧客が求めるハンダ信頼性を高めることができないという事情を抱えた。

 “micro DC/DC”コンバータは、電源回路を小さくするというその特長を生かすため、実装面積の小さなリードレスパッケージ「DFN」を採用している。しかし、DFNパッケージは、先述の通り、ハンダ接合に異常があるかどうかは、外観では分からず、X線検査装置などが必要になる。

 「車載機器領域では、絶対的な信頼性を求めるために、自動外観検査を必須にしているケースが多い。特にハンダの鉛フリー化によって実装不良が生じやすくなっており、自動外観検査でより確実に接合部の信頼性をチェックしたいというニーズが高い。そのため、リードレスのために“micro DC/DC”コンバータを採用したくても、採用できないというユーザーも多かった」(トレックス)

 実装面積の小さいリードレスパッケージでありながら、ハンダ接合部を外観でチェックするには……。

ウェッタブル・フランク構造

 この相反する課題に対し、トレックスは「ウェッタブル・フランク構造」と呼ばれる端子形状を採用したDFNパッケージを開発し、リードレスながら自動外観検査に対応することに成功した。

 従来のDFNパッケージは、パッケージ側面に端子が露出しているものの、端子とハンダの接合性を高める外装メッキは端子底面のみ形成された。そのため、端子側面のハンダぬれ性が劣り、実質的なハンダ接合は端子底面のみに限られた。その端子底面と基板の接合部は、外観検査ではその様子を伺い知ることができなかった。

 一方のトレックスが開発したウェッタブル・フランク構造のDFNパッケージは、端子側面までハンダ接合を促す外装メッキを施し、端子底面と、外観確認可能な端子側面の両方で、ハンダ接合を行う。これにより、基板と端子側面が確実にハンダ接合されているかどうかは、ハンダ仕上がり状態がフィレット形状(=富士山のすそ野のような形状)になっているかどうかで判断できるわけだ。

ウェッタブル・フランク構造端子のイメージ図。外装メッキが端子側面にまで形成され、ハンダと接合。結果として、外観確認可能なハンダフィレットが形成させる (クリックで拡大)
XDL601/XDL602シリーズを基板実装した際の写真。フィレット形状のハンダが形成されていて、外観で実装具合を確認できる (クリックで拡大)

 「これまで製造工程上、端子側面に外装メッキを施すことは難しかった。今回、端子に切り欠きを入れた特殊な端子形状にすることで、端子側面にも外装メッキを形成することに成功し、自動外観検査対応のDFNパッケージを実現した」とする。

 トレックスは「このDFNパッケージにより、幅広い車載用途に対し、“micro DC/DC”コンバータの利点を提供できるようになった。今後、製品化する車載用“micro DC/DC”コンバータには、この自動外観検査対応DFNパッケージを展開していく」とする。

高効率! 発熱、ノイズも小さい!!

“micro DC/DC”コンバータ「XDL601/XDL602シリーズ」

 自動外観検査対応DFNパッケージ採用“micro DC/DC”コンバータの第1弾製品であるXDL601/XDL602シリーズは、入力電圧範囲2.5〜5.5Vで、出力電圧は0.8〜3.3V、最大出力電流1.5Aの高効率降圧型DC/DCコンバータであり、5V入力/3.3V、500mA出力時の効率は、93%を誇る。スイッチング周波数は3.0MHz。XDL601はPWM制御方式、XDL602はPWM制御/PFM制御自動切り替え方式を採用する。

 パッケージサイズはいずれも3.6×2.5×1.6mm。コイルを外付けする従来型DC/DCコンバータに比べ、電源回路サイズを50%以上削減できるという。

コイルを外付けする従来構成(左)に比べ、電源回路サイズを半分以下に抑えられる (クリックで拡大)

 電源回路サイズを縮小すると部品実装密度が高まり、電源回路の放熱が難しくなるが「“micro DC/DC”コンバータは、元々変換効率が高いため発熱が小さい上に、パッケージ裏面に大きな放熱用端子を設けているため高い放熱性を持つ。全動作温度範囲で、放熱性を気にせず、ICのスペックをフルに引き出すことが可能」(トレックス)と言い切る。

大きな放熱用端子を設けたXDL601/XDL602シリーズでは、ICの発熱が非常に小さい (クリックで拡大)

 また輻射ノイズも、ノイズ発生源の1つであるDC/DCコンバータ部とコイル間の配線がコイル一体化により極めて短くなっている上、ノイズ発生源(=コイルや配線)を樹脂パッケージに封止しているため大幅に抑制している。

コイル一体型構成(左)とコイル外付け構成(右)でのEMI測定データ比較 (クリックで拡大)

 トレックスでは、「XDL601/XDL602シリーズは特に、車載カメラモジュールなど熱やノイズを抑えながらも基板サイズに余裕がないECUに最適なDC/DCコンバータICだ。今後、さまざまな車載用途に対応していくため、ウェッタブル・フランク構造のパッケージを用いた車載用“micro DC/DC”を投入していく。既に、最大入力電圧18V品、36V品という中・高耐圧製品の開発に着手し、2019年1月に開催される展示会『オートモーティブ ワールド』でサンプル品を披露できるだろう」としている。

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提供:トレックス・セミコンダクター株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2018年12月19日

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