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EMI低減に効く電源IC、電磁ノイズの発生を抑える2つの最新アプローチどうする? ノイズ対策

今や、電子機器において不可欠となっているEMI対策。Texas Instruments(TI)は長年、EMIの低減とEMI規格適合への迅速化を実現する電源ICの開発に注力してきた。TIの最新の電源ICに搭載された、低EMI化に向けた2つのアプローチを探る。

» 2021年05月17日 10時00分 公開
[PR/EDN Japan]
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 自動車の電動化やIoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)技術といったメガトレンドにより、自動車や産業機器に搭載される電子機器の数は増加の一途をたどっている。それに伴って、半導体や電子部品はさらなる高性能化が求められるようになっており、例えば電源システムのDC-DCコンバータICはスイッチング周波数が高くなる傾向にある。

Cecelia Smith氏

 Texas Instruments(TI)のアナログ電源製品部、昇圧およびマルチチャネルDC/DCコンバータ バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャを務めるCecelia Smith氏は、「こうしたトレンドでは、車載および産業用アプリケーションの電源システムを設計するエンジニアにとって、EMI対策は不可欠だ。とりわけ伝導EMIを低減することが極めて重要になる」と語る。

 TIの電源ソリューションにおいて超低EMIは、高電力密度や低IQ、ガルバニック絶縁性能などと並ぶ、重要な要素である。TIは長年にわたり、低EMIを実現でき、EMI認証試験や設計も容易になるような電源ICの開発と提供に尽力してきた。

 TIは、「発生したEMIの影響を抑える」「EMIの発生を発生源で根本から抑える」という2つのアプローチでEMI低減に向けた電源ICを提供する。

電源ICにおける、EMI低減に向けた2つのアプローチ

発生したEMIの影響を抑える

 「発生したEMIの影響を抑える」方法では、外付けEMIフィルタのサイズを小型化し、コストとEMIの両方を低減する。その一例が、2021年4月に発表したばかりの降圧DC/DCコントローラIC「LM25149-Q1」「LM25149」だ。LM25149-Q1が車載向けとなる。アクティブEMIフィルタ(AEF)と、デュアル・ランダム・スペクトラム拡散(DRSS)技術を内蔵しているのが特長だ。

 AEFは、入力バスの電圧リップルを検知して180度出力信号の逆相電流を生成し、スイッチング段で発生するEMI電流を直接打ち消す。具体的には、150kHz〜10MHzの低周波数帯の伝導EMIを検出して低減するため、AEFが無効の場合と比較すると、スイッチング周波数が440kHzのとき(AEFを無効にした場合の排出量と比較して)にアクティブフィルタの使用でEMIを最大50dBμV、従来のパッシブ・フィルタを使用する場合に比べると約20dBμV低減できる。

 さらに、AEFをコントローラICに内蔵することで、外付けフィルタが行うフィルタリングの負担を軽減できるため、小型の外付けフィルタで十分対応できるようになる。これにより、外付けEMIフィルタを、面積で約50%、体積で75%以上縮小することが可能になる。

左が従来のソリューション。外付けEMIフィルタを面積で約50%、体積で75%以上縮小できるようになる

 DRSSの基本となるスペクトラム拡散は、EMIの原因となるエネルギーを複数の周波数に分散することでEMIのピークを低減する方法だ。ただ、スペクトラム拡散は一般的に、単一の帯域(RBW:分解能帯域幅)に対してのみEMIを低減する。だが、EMIは複数の帯域で発生するので、その点が課題となっていた。LM25149-Q1/LM25149に搭載されているDRSSは、低周波数の三角変調プロファイルを、さまざまなRBWを対象とする高周波数のサイクルごとのランダム変調プロファイルと組み合わせることで異なるRBWをターゲットとした2つの変調プロファイルを重ね合わせることで、高周波と低周波の両方においてEMIピークを下げることが可能だ。

 AEFとDRSSにより、多くの周波数帯、とりわけ車載向けEMC規格である「CISPR 25」で重要になる2つの帯域、9kHzの150k〜30MHz帯および30M〜108MHz帯においてEMIを大幅に減衰できる。

 LM25149-Q1/LM25149は3.5×5.5mmの24ピンVQFNパッケージで提供される。両製品とも量産品は2021年第4四半期に供給開始の見込み。評価モジュール「LM25149-Q1EVM-2100」は、TIのWebサイトから8160円で購入可能だ。

EMIの発生源を根本から抑える

 2つ目のアプローチ「EMIの発生を発生源で根本から抑える」は、AEFやバイパス・コンデンサの搭載や、寄生成分が極めて低いパッケージの使用によって、EMI発生を“元から断つ”方法だ。AEFやバイパス・コンデンサを統合することで、設計がよりシンプルになり、開発にかかる時間も短縮できる。

 一例として、同期降圧DC/DCコンバータIC「LMQ61460」が挙げられる。特に、産業用アプリケーションで求められる超低EMIに対して最適化した製品で、2020年12月に量産を開始した。入力電圧範囲が3V〜36Vと広く、定格電圧は42Vと入力サージ保護設計も容易になる。LMQ61460は、スイッチノードの電圧リンギングを最小限に抑える「HotRod」パッケージを採用している。HotRodはボンドワイヤのない、リードフレームベースのフリップチップパッケージだ。ボンドワイヤを使わないことでスイッチング・ループの寄生インダクタンスが低減されるので、結果的にスイッチノードのリンギングも抑えられる。さらに、ピン配置を最適化して、2個の入力コンデンサを対称に配置できるようにしている。対称にすることで、発生する磁場を閉じ込める性能が向上し、EMIを最小化できる仕組みだ。

 EMI低減に貢献するその他の製品ラインアップとしては、DC/DC充電ポートコントローラの「TPS25850-Q1」がある。同製品も、DRSS同様、エネルギーを分散するスペクトラム拡散周波数ディザリングによってEMIを軽減する。さらに、2.2MHzと高いスイッチング周波数を備えているので、より小型のインダクタを使用できる他、AM帯域内のノイズ発生を抑えることも可能になる。TPS25850-Q1は、動作周波数が400kHzと2.2MHzの2種類のリファレンスデザインをそろえる。

 「LM5157-Q1」は、2021年3月に発表した非同期昇圧コンバータICである。DRSSを搭載し、EMIフィルタの設計を簡素化できるよう、外部クロック同期も搭載した。LM5157-Q1は、昇圧、SEPIC、フライバック・コンバータなど複数のトポロジーに対応できるため、幅広い車載アプリケーションに活用できる。

 2020年4月に量産を開始した絶縁型DC/DCバイアス電源「UCC12050」も、EMI低減を意識した特徴的な製品だ。1次/2次間の容量がわずか3.5pFと非常に小さいトランスを、TI独自の技術で統合。これにより、2層プリント配線板の設計も、CISPR 32 クラスBのEMI認証試験をクリアできる。パッケージサイズが10.3×10.3×2.65mmと小型な点も特長で、絶縁が必要な産業用アプリケーションの電源ソリューションを最大80%縮小する。

 こうした2つのアプローチに沿った電源ICに加え、TIは電源設計ツール「WEBENCH Power Designer」のEMIシミュレーションツールや、EMIドキュメント、EMIテスト環境などを用意。コストを抑えつつ、EMI規格への適合を迅速化できるよう、包括的な製品とサポートを提供する。

EMI低減と、EMI規格への適合の迅速化に向け包括的なサポートを用意している

 Smith氏は「TIは、低周波および高周波のEMI関連の課題を解決すべく、半導体技術やパッケージング技術を駆使した独創的なソリューションを今後も提供していく」と語った。

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提供:日本テキサス・インスツルメンツ合同会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2021年6月16日

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