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イノベーションが続く知られざる成長市場、ディスプレイデバイスの開発を今こそ日本で注力したい理由とはディスプレイの進化を支える“立役者”

ディスプレイにおいて、パネルと同様に不可欠なのがディスプレイデバイスIC(DDIC)である。車載やVR/ARなどディスプレイの新しいアプリケーションが登場する中で、イノベーションへの取り組みも活発に行われ、今後さらなる成長が期待されるポテンシャルの大きな市場だ。同市場で攻勢をかけるOmniVision Groupは現在、グローバルで開発力を加速するための重要拠点として日本に着目し、日本国内で研究開発拠点の新設と拡張に注力している。

» 2022年05月31日 10時00分 公開
[PR/EDN Japan]
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ディスプレイの進化を支える“立役者”

 世界中で年間13億〜15億台出荷されるスマートフォン。市場自体は飽和状況にあるといわれるものの、既に社会インフラになっていると言っても過言ではなく、新しい機種が発表されるたびに、機能も着実に向上している。中でもディスプレイは、スマートフォンのデザインや機能において最も注目されるものの一つだ。とりわけ解像度やタッチ性能の向上には目を見張るものがあり、有機ELディスプレイ(OLED)を搭載する機種も増えている。

 スマートフォン向けディスプレイの進化を陰で支えているのが、ディスプレイデバイスIC(DDIC)だ。ディスプレイの正確な駆動のみならず、高精細化や低消費電力化、駆動回路の複雑化の低減、ディスプレイの保護など、DDICが果たす役割は非常に大きい。

 DDICの需要は堅調な拡大が見込まれていて、アジアを中心に数量ベースで年間85億〜93億個の出荷が予想されている。売上高ベースでも、平均販売価格(ASP)の上昇により2021年は特に大きく伸びた。2022年の市場規模は、140億米ドルに達するとみられている。

 DDICの研究開発も進んでいる。例えば、タッチコントローラーICとディスプレイデバイスICを統合したTDDI(Touch Display Driver Integration)は近年、台頭している技術の一つだ。TDDIにより、液晶ディスプレイ(LCD)モジュールを低コスト化しつつ、高精細なディスプレイと滑らかなタッチ性能を実現できる。

 華やかなディスプレイの影で見過ごされがちだが、DDIC/TDDI市場は、グローバルで成長が加速している、ポテンシャルの大きな市場なのだ。

タッチ&ディスプレイ市場への参入で急成長

 この“前途洋々”なDDIC/TDDI市場で攻勢をかけているのが、米OmniVision Groupだ。1995年に設立された同社は、CMOSイメージセンサー(CIS)を手掛けるOmniVision、パワーマネジメントICやパワーデバイスなどを手掛けるWill Semiconductor、CISを手掛けるSuperPixが統合された企業である。

OmniVision Group 日本支社長 薄井明英氏

 2020年からDDIC/TDDI市場に参入し、同社の3つ目の主幹事業として事業の拡大に力を入れてきた。2021年には7300万個のTDDIを出荷し、DDIC/TDDIの売上高は前年比で2.6倍と大きな成長を遂げている。OmniVision Group 日本支社長を務める薄井明英氏は、「Synapticsから買収したモバイルLCD向けTDDI事業をさらに拡張していく」と語る。

 OmniVision GroupでDDIC/TDDI事業を手掛けるOmniVision Group Touch & Display Solutions(以下、OTD)事業部のシニアディレクター兼プロダクトマネジメントを務めるHarley Yin氏は、「われわれには、Synaptics時代からの高品質な製品と、大手顧客と構築してきた良好な関係がある」と強調する。「ディスプレイ駆動技術では、画質と消費電力はトレードオフの関係にある。当社はそこを最適化し、高画質かつ低消費電力化を実現できるDDIC/TDDI技術を持っている」(同氏)

 2022年1月に米国ネバダ州ラスベガスで開催された「CES 2022」では、最新のスマートフォン向けTDDI「TD4377 TDDI」を発表したばかりだ。1080pのフルHD解像度と最大144Hzのディスプレイフレームレート、2倍のタッチレポートレートを、非常に低い消費電力で実現し、顧客から高い評価を受けている。

 さらに、台湾と中国・深センに開発拠点(R&Dセンター)を構えていることもOTDの利点の一つだ。「主要なパネルメーカーはアジアに存在する。カスタマイズ性が強いDDIC/TDDIの開発では、顧客の要求をいかにリアルタイムで捉えられるかが勝負になる。中国や台湾、韓国のパネルメーカー各社と現地の言葉でスムーズかつ緊密なやりとりを行える当社は、その点で大きな強みを持っている」(同氏)

 OmniVision Groupとなってからは、グローバルなサプライチェーンや販売チャネルの点でサポートが強化された。グループ全体で大手ファウンドリーサプライヤーと強固な関係を構築しており、供給量を拡大している。「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによるサプライチェーンへの影響を考慮して、DDIC/TDDIのサプライヤーを見直し、われわれにアプローチしてくる顧客も増えている」(Yin氏)

モバイルからタブレット、車載、AR/VRへ

 現状はモバイル向けのLCD DDIC/TDDIを中心に事業を展開しているOTDだが、今後はモバイル向けOLEDや、ノートブックPC、タブレット、車載、VR(仮想現実)/AR(拡張現実)などの対象アプリケーションの拡大、さらに将来、マイクロLEDなど新しいアプリケーションの創造も担っていく。

 例えばOLED向けDDIC/TDDIでは、2022年第1四半期に同社初となるAMOLED DDICを発表。同年第3四半期には機器メーカーに向けて出荷を開始する予定だ。車載やVR/AR向けでは、OmniVision Groupが強みを持つCISやパワーマネジメントICを組み合わせたキットソリューションを展開していく。

 特にCISとDDIC/TDDIは、画像の取り込みやディスプレイに関わる共通の技術課題を解決できるキーデバイスであり、今後、さらなる高画質化や高コントラスト化、視認性の向上に向け、共有できるIP(Intellectual Property)やアルゴリズムも多い。またパワーマネジメントICと組み合わせることで、システムレベルでより一層の消費電力削減に貢献できる。OmniVision Groupのポートフォリオを存分に生かし、使いやすさを追求したキットソリューションを開発して、早期の市場投入を目指す。

車載やVR/ARなど新しいアプリケーションに向けたソリューションの開発に注力していく

 DDICは長い歴史がある技術だが、これまで粗利率は決して高くはなかった。だが、昨今の半導体不足の影響もあり、価格が上昇して収益性のある製品へ変わりつつある。しっかりと“基礎固め”をしたDDIC/TDDI技術への継続的な投資に加え、OmniVisionのソリューションと組み合わせることで、新しいアプリケーションに対応するイメージングソリューションビジネスを、スピーディかつ幅広く展開していく。

 スマートフォン向けTDDI市場では現在、8.7%のシェアを占め、第6位のOTDだが、2022年はシェアを18%まで引き上げ、第3位に高める計画だ。「生産体制と販売チャネルを確保しており、18%までシェアを高められると確信している」とYin氏は自信をのぞかせる。2024年には、現在のOTD関連事業の売り上げを倍増させ、1000億円の売上高を目指す。「これまでOLED DDIC市場では、韓国勢がシェアの80%を占めていた。だが近年、中国のパネルメーカーのシェアが急激に増加している。われわれの戦略の一つは、中国や台湾のパネルメーカーでのシェアを拡大し、プレゼンスを上げていくことだ」(Yin氏)

 だが、こうした成長を狙う上で大きなボトルネックがある。それが人材だ。

開発拠点の拡張、日本は「ファーストチョイス」

 このボトルネックを解消すべく、OTDは日本での開発拠点拡張を急ぐ。台湾と深セン以外に、日本とシンガポールで研究開発を強化していく方針。日本では既にセンシングソリューションのR&Dセンターがある横浜および京都の拠点を拡張し、DDIC/TDDIの他、ディスプレイデバイスのデジタル/アナログ設計、エマージングディスプレイ向けのIP開発、チップ設計や評価業務などに携わる約20人の設計エンジニアを採用する計画だ。

OmniVision Groupの日本国内のR&Dセンター

 Yin氏は「日本ではディスプレイデバイス関連は斜陽産業だとみられることも多い。だが世界的に見れば、イノベーションも活発で、新しいアプリケーションも次々に登場している、期待の成長市場だ」と語る。

 では、なぜ、日本にディスプレイデバイスのR&Dセンターを設け、大々的にエンジニアを採用する方針にしたのか。日本のパネルメーカーは勢いを失って久しい。Yin氏は、「ディスプレイの根幹技術は、日本にルーツを持つと考えている。現在でも、製造装置などに日本の技術が使用されている。それ故、日本には、経験豊富な優れたエンジニアが存在すると見込んでいる。さらに当社は、日本の主要ディスプレイメーカーとも長い付き合いがある」と強調した。

 日本で拡張するR&Dセンターでは、モバイル向けから車載、AR/VRなどの新しいアプリケーション向けまで、全てを対象にする。「2022年に発表したばかりのAMOLED DDICは、台湾、米国、中国の開発チームがグローバルで協力して開発した製品だ。今後、グローバルでの開発力を高めていく上で、アジアの大手顧客と地理的に距離が近く、優れた技術者がいるエリアで設計者を確保することが不可欠だ。日本が、われわれにとってはファーストチョイスなのだ」(Yin氏)。薄井氏は「日本にR&Dセンターを開設することで、OmniVision Group のDDIC/TDDI事業拡大を後押ししていく」と意気込む。

 新しいアプリケーションでは、モバイル向けとは要件が異なることも多い。例えば画素密度は、ハイエンドスマートフォンで800ppi台のところ、AR/VR用ディスプレイでは最低でも1000ppiになる。Yin氏は「人材を得て、これらの課題を解決できるソリューションが開発できれば、われわれにとって大きなビジネス機会になる」と語る。

AR/VRなどの新しいアプリケーションでは、DDIC/TDDIに要件が従来とは異なるケースも多く、常に新しいソリューションが求められる

 「ディスプレイは、イノベーションが継続して起きている分野だ。OmniVision Groupとなってから、非常に良い業績と大きな成長を経験できている。日本には優秀な設計エンジニアが数多く存在すると確信している。世界的には急成長しているディスプレイ市場で、ぜひ活躍してほしい」(Yin氏)

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提供:オムニビジョングループ/ウィル・セミコンダクター・ジャパン合同会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2022年6月9日

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