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システムの信頼性向上には「絶縁」の見直しが近道、最新のソリッドステート・リレーなら小型化もかなうEVや産業機器の高電圧化に応える

システムの安全性と堅ろう性を実現するために欠かせない絶縁技術。絶縁性を確保する部品として、従来のメカニカルリレーに代わって台頭し始めているのが、可動接点部分のないソリッドステート・リレー(SSR)だ。20年にわたり絶縁技術に投資してきたTexas Instruments(TI)が電気自動車(EV)と産業機器向けに発表した新しいSSRは、従来のリレーから置き換えることで、システムの信頼性を向上しつつ、ソリューションサイズを最大90%削減することも可能になる。

» 2022年07月28日 10時00分 公開
[PR/EDN Japan]
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システムの信頼性と堅ろう性の実現に不可欠な絶縁

 スマートフォンなど小型のパーソナル電子機器から、医療機器、自動車、工場や発電所などの大型施設まで、日常生活や社会基盤はさまざまな機器やシステムによって支えられている。これらのシステムの信頼性と安全性を実現しているのが、絶縁だ。

 絶縁の最も重要な役割の一つは、高電圧回路と低電圧回路を電気的にしっかりと分断しつつ、信号や電力を安全に伝達することである。FA(ファクトリーオートメーション)やモーター、発電システムなどでは、数百ボルトや数千ボルトにも達する非常に高い電圧が使われている。もともと高電圧だが、特に自動車や産業機器の分野では、より大きなエネルギーを引き出すべく、バッテリー電圧や動作電圧がさらに高まっている傾向にある。バッテリー電圧が400Vから800Vへ移行しつつある電気自動車(EV)は、その一例だ。

 このようなシステムでは、モーターなどの高電圧電源の部品と、それより大幅に低い電源電圧で動作する繊細な電子部品とを、電気的に絶縁しつつ、通信は安全に行える絶縁技術が欠かせない。また、機器や人体に悪影響を及ぼす可能性がある高電圧サージからの保護や、グランドループの排除などでも、絶縁は極めて重要になる。言い換えれば、絶縁をしっかり行うことで、機器/システムの安全性や信頼性を向上できるということでもある。

20年にわたる絶縁技術への投資

 このように、安全で堅ろうなシステムの実現に不可欠な絶縁に、およそ20年にわたり投資し続けてきたのがTexas Instruments(TI)だ。2006年に、SiO2を使用した静電容量式アイソレーターを発表して以来、絶縁技術の確立と、絶縁製品の製造技術の確立という2つの方向でノウハウを蓄積してきた。2014年にはTIとして初めて強化絶縁製品を発表、2020年には独自技術でトランスを統合した絶縁型DC/DCコンバータを発表するなど、着実に絶縁関連のポートフォリオを拡充。デジタルアイソレーターから絶縁アンプ、絶縁コンパレータ、絶縁インタフェースICまで、非常に幅広い製品群を展開している。

TIは約20年にわたり絶縁技術に投資してきた 出所:日本テキサス・インスツルメンツ

 その中で、EVや産業機器向けの絶縁製品として最も新しいのがソリッドステート・リレー(SSR)だ。

無接点なので「摩耗なし」、SSR(ソリッドステート・リレー)の利点

 SSRとは、可動接点部分を排除し、電気的絶縁を確保して電力と信号を伝送するリレーである。可動部品がない無接点リレーなので、接触器を機械的にオン/オフする従来のメカニカルリレー(電磁リレー)に比べ摩耗がなく、従って信頼性が向上するのが最大の特長だ。

 EVや産業機器で主に使われている電磁リレーは、オン抵抗が低いというメリットがある一方で、可動接点部分の摩耗や、スイッチング速度の限界といった課題がある。前述したように接触器を機械的にオン/オフするので、スイッチング速度にはどうしても限界があり、5〜15ミリ秒というのが一般的だ。

 もう一つ主流として使われているフォトリレーは、可動部品がなく高い絶縁電圧を実現できるという特長がある。ただ、内部に搭載するLEDの劣化や、伝送できる電力量の制限といったデメリットを抱える。さらに、外部電流制限抵抗や、LEDのオン/オフを管理する外部FETといった部品を追加する必要がある。

 TIのSSRは、こうした従来のリレーが持つ課題に対応する製品だ。今回TIが新たに市場に投入したのは、絶縁型ドライバ「TPSI3050-Q1」と絶縁型スイッチ「TPSI2140-Q1」である。機械的な劣化がないので、従来の電磁リレーに比べ信頼性と耐久性を10倍に高めることができる。スイッチに半導体を使うので、マイクロ秒単位と、電磁リレーに比べて非常に高速なスイッチングが可能だ。さらに、単一の絶縁バリアを介して電力と信号を伝送するので、2次側バイアス電源が不要になることに加え、TIが得意とする統合技術を用いることで、従来に比べて絶縁ソリューションサイズを大幅に小型化できるというメリットがある。

従来のリレーとTIのソリッドステート・リレーの比較

ソリューションサイズを最大9割減に

 TPSI3050-Q1は、10Vゲート・サプライを内蔵し、最大5kVRMSまでの強化絶縁に対応する。ゲートドライバ、絶縁電源、デジタルアイソレーターの機能を統合することで、電磁リレーに比べソリューションサイズを最大90%小型化することが可能だ。

「TPSI3050-Q1」を採用すると、ソリューションサイズを最大90%も削減することができる 出所:Texas Instruments

 TPSI2140-Q1は、耐圧が1400Vでスイッチング電流は最大50mA、最大3.75kVRMSの基礎絶縁に対応する。1MΩ以上の抵抗の使用に対応し、フォトリレーに比べて300%以上となる2mAのアバランシェ電流に耐性がある他、フォトリレーの4倍以上となるTDDB(Time Dependent Dielectric Breakdown/経時的絶縁破壊)性能により、システムの安全性と信頼性を強化できる。信号用FETと抵抗を内蔵し、フォトリレーに比べてソリューションサイズを最大50%小型化した。

日本テキサス・インスツルメンツ 営業・技術本部の内原将幸氏

 日本テキサス・インスツルメンツ 営業・技術本部の内原将幸氏は、「EVでも産業機器でも、部品をいかに小型化するかというのは、顧客が常に抱えている課題の一つだ。EVであれば、部品の小型化はシステムの軽量化につながり、航続距離を伸ばすことにも貢献する。ただ、一般的に小型化と信頼性の向上を両立するのは難しい。小型化により部品の集積度が上がればノイズの対応も難しくなり、EMI規格の準拠のハードルも上がる。この難しい“両立”を実現したのが、今回の新しいSSRだ」と語る。

 TPSI3050-Q1の用途は、EVのBMS(バッテリ管理システム)のプリチャージ回路などを想定している。「DCリンクキャパシタを用いるアプリケーションでは、突入電流対策として、プリチャージ用のリレーが必要になるケースが多く、SSRのメインターゲットと考えている。これらのアプリケーションでは電磁リレーが主流だが、SSRへの置き換えを狙う」(内原氏)

 TPSI2140-Q1は、絶縁不良検出の用途をターゲットとする。TIのバッテリパック・モニタ「BQ79631-Q1」などと組み合わせることで、800V BMSの絶縁不良を、フォトリレーよりも高速かつ高精度に検出できるようになる。電源内蔵の高精度絶縁型アンプ「AMC3330」と組み合わせれば、EV充電や太陽光発電システムの絶縁監視に適したAFE(アナログフロントエンド)を構成することも可能だ。

 電磁リレーやフォトリレーからの置き換えもしやすい。上記の表で課題として挙げていたEMIに関わる設計については、「IC内部のレイアウトの最適化、周波数拡散付与、Faraday shieldsなどを入れることでノイズ対策をとっており、現時点では基準をクリアできる段階にまで来ている」と内原氏は説明する。「気になるところがあれば、設計サポートフォーラム『TI E2E』にて、PCBレイアウトをサポートし、対策を強化することも可能なので、ぜひ気軽に相談していただけたらと思う」(内原氏)

絶縁型コンパレータなどの製品も拡充

 SSRに加え、強化絶縁に対応したコンパレータ「AMC23C12」も発表した。標準的なコンパレータの機能と、高い信頼性を持つガルバニック絶縁バリアの機能を組み合わせた製品で、LDO(低ドロップアウト)レギュレータ、ウィンドウコンパレータ、高精度電圧リファレンスを内蔵することにより、ソリューションサイズを従来比で50%小型化した。400ナノ秒未満の応答時間によって過電流と過電圧を超高速に検出するため、システムの保護能力を強化できる。

 この他、2020年と2021年には、TI独自のトランス内蔵技術を適用した絶縁型DC/DC電源「UCC12050」「UCC14240-Q1」をそれぞれ発表。電源断や整流器、トランスなどをワンパッケージにした製品で、低EMIを維持しつつ、既存のソリューションに比べ容積を最大80%も削減できる。

 このようにして培ってきた絶縁技術や統合技術は、新たに投入したSSRにも存分に生かされている。

高電圧への移行が好機に

 EVや産業機器では、従来の電磁リレーやフォトリレーが主流ではあるが、内原氏は「SSRには大きなポテンシャルがある」と強調する。「EVのように、高電圧システムに移行していくのが近年のトレンド。それに伴い、耐圧に対する要求も高まっている。従来の電磁リレーやフォトリレーでは、そうした要求に応えられない可能性が高くなっていくのではないか。太陽光発電システムやESS(電力貯蔵システム)でもSSRの導入は始まっていて、EVでも市場の成長とともに、SSR市場の拡大も加速するとみている」(内原氏)

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提供:日本テキサス・インスツルメンツ合同会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2022年8月27日

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