5GやIoT、自動運転、AIなどの「6つのメガトレンド」およびトータルソリューションを成長の鍵とするMicrochip Technologyは、サプライチェーンの制約が厳しい状況にあった2022年も、堅調に成長を続けた。足元では世界的な景気後退の懸念が高まるが、同社は2021年に導入したPSP(優先サプライヤープログラム)を活用しながら、引き続き生産能力の増強などを進めていく方針という。「2023年も成長の勢いが続く」と語るMicrochip Technologyの社長兼CEO(最高経営責任者)を務めるGanesh Moorthy氏に、2023年の事業戦略を聞いた。
――2022年の業績はいかがでしたか。
Ganesh Moorthy氏 サプライチェーンの制約が厳しい状況においても、Microchipの事業は引き続き非常に好調だ。2022年第1〜3四半期累計の売上高は、前年同期比で約25%増となった。同年7〜9月期で当社の年間売上高のランレートは初めて80億米ドルを超えており、同年10〜12月期の連結売上高は前期比で3.0〜5.0%増、前年同期比では22.7%増の成長になると見ている。10〜12月期には、連続9四半期の売上高更新を達成する見込みだ。当社は、この勢いが2023年も続くと予測しており、同年1〜3月期も前期から引き続き成長できるだろう。
――2023年の展望についてお聞かせください。重視する成長戦略はどのようなものですか。
Moorthy氏 当社の内部指標を通して見ると、景気動向は引き続き堅調だ。われわれは、トータルシステムソリューションと、主要市場の6つのメガトレンド(5G[第5世代移動通信]インフラストラクチャ、IoT[モノのインターネット]、データセンター、eモビリティ、持続可能性、ADAS[先進運転支援システム])を通じ、自社資源を活用した有機的成長を加速する取り組みを継続してきた。これこそ当社が、半導体業界において極めて多様かつ堅実なビジネスを行い、高成長、高利益率、高キャッシュ生成を実現する企業の1社として数えられている理由だ。
事業の成長機会を捉えるとともに充実したサービスを顧客に提供し、シェアを拡大し、売り上げ総利益率を高める。そして、当社製品に特化した生産能力に関し、外部委託製造先における投資レベルの不足分を補うための設備投資を適切に増加させていく。
――需要の減退により一部半導体の在庫が高水準となっています。2023年の半導体供給は今後どうなるとお考えですか。
Moorthy氏 顧客側に一定の在庫備蓄があることは分かっている。これは、戦略的な在庫備蓄のほか、製造に必要な他の部品を待つために発生する在庫によるものと考えている。
受注残の出荷の後ろ倒しを求める散発的な要求は見られたが、これらは、当社が数四半期にわたって抱えている大量の未対応受注残(顧客が特定の四半期での出荷を要求し、当社がその四半期に提供できなかった受注残)のごく一部であり、事業に大きな影響はないと考えている。一方で、短納期要求はさらに高まっている状況だ。われわれは、当社のチップを必要とする顧客に可能な限り供給し、また、顧客の在庫レベルを最適化するため、顧客各社の在庫状況を見据えながら、引き続き慎重に供給の再配分を行っていく。
当社の標準受注残に関する90日間の解約不能条項とPSP(Preferred Supplier Program: 優先サプライヤープログラム)の受注残に関する最短12カ月の解約不能条項は、顧客が必要以上の数量を発注するのを効果的に抑制している。われわれは、2023年も引き続き供給不足が続くと予想している。
――2021年に需要と供給の不均衡の問題に対処するためPSPを導入しましたが、このプログラムをどのように評価していますか。
Moorthy氏 PSPはMicrochipと顧客との相互のコミットメントだ。連続12カ月間以上のキャンセル不可の発注と引き換えに、優先的に製品を納品する。これによって当社は、原材料への投資、生産能力の増強、従業員の増員を統制の取れた方法で行い、資源を慎重に配分できる。
業界全体に制約が残る中でも供給の優先権が得られることから顧客にも高く評価されており、多くの顧客が18〜24カ月のPSPを契約している。PSPによるこれらの受注額は、2022年7〜9月期の全受注額の50%をはるかに上回るまで増加し、その水準を維持している。
――世界的な景気後退の懸念が高まっています。Microchipはどのように対処していきますか。
Moorthy氏 業績不振に苦しむ半導体企業がある中、当社の事業は高い回復力を示している。前述の有機的成長戦略は、何年にもわたり当社にデザインウィンの勢いをもたらし、収益の追い風となっている。また、当社売上高の86%を構成する産業、車載、航空宇宙、防衛、データセンター、通信インフラのエンドマーケットは堅調で、民生市場の売上高も回復力に優れた家電製品分野に限られている。さらに、当社の大半の製品は、最も制約された状況にある生産能力を必要とする専門的技術に基づいて製造されており、過剰出荷の可能性はほとんどない。
もちろん、当社はインフレ率と金利の上昇によるマクロ条件の衰えを認識している。好調な社内業績指標とマクロ環境の不確実性が交錯する中、われわれは今後起こり得るさまざまなシナリオを想定しており、各種指標を注視している。これらの指標を活用することで、必要な時に計画的な対応策を講じられると考えている。
当社の事業に悪影響をもたらす弱含みのマクロ環境が存在する場合、またはそのようなマクロ環境が生まれた場合、1)強力なPSP受注残、2)需要のクッションとして働く目先の未対応受注残、3)過去にないほど減少した自社内および流通在庫の補充の必要性、4)平均を上回る長期的成長傾向、5)通常は非常に少ない資金需要、6)営業経費のバッファーとなる高比率の変動報酬、という当社の特長を組み合わせ、事業をソフト ランディングさせることを目指していく。
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アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2023年2月9日