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高精度な電流検知をシンプルな設計で実現 EVの800Vシステムでも使えるホール効果電流センサーも登場システムの高効率化を支える電流センサー

電気自動車(EV)や工場の自動化で使われる制御機器では、エネルギー効率の向上のためにより高精度な電流センシングのニーズが高まっている。Texas Instruments(TI)はこうした要求に応えるべく、電流センシングソリューションを拡充している。2023年8月には、EVの800Vバッテリーシステムでも使えるホール効果電流センサーや電流センシングソリューションを大幅に小型化するシャント抵抗内蔵電流モニターを発表した。いずれも、電流検知システムの設計を簡素化できる製品だ。

» 2023年10月06日 10時00分 公開
[PR/EDN Japan]
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EVの普及やシステムの自動化で高まる、高精度電流センシングのニーズ

 カーボンニュートラル/脱炭素社会に向けた取り組みが活発になり、再生可能エネルギーの利用や電気自動車(EV)の普及、工場やシステムの自動化が進んでいる。それに伴い、これらの分野で使用される制御機器やシステムでは、さらなる高性能化や省電力化のための高精度な電流センシングに対する要求が高まっている。

 電流センサーは文字通り、配線やケーブルに流れる電流を測定・検出するデバイスだ。モーターや電力変換装置の駆動/制御、システムの過電流保護、装置の稼働状況のモニタリングなどで非常に重要な役割を担っている。モーターは、電流センサーで測定した電流値をフィードバックすることでトルクを制御する。電力変換装置では、周波数変換のための位相制御に電流値が使われる。多くのシステムで必要になる過電流保護機能や、EVや産業機器に搭載されているバッテリーでも電流のモニタリングには電流センサーが欠かせない。

 電流センシングの精度が向上すると、制御機器やシステムでは無駄が少なくきめ細かい制御が可能になり、システム全体のエネルギー効率を高めることができる。過電流保護では、より信頼性の高い保護機能の実現につながる。こうした理由から高精度な電流センシングが求められている。

 高精度な電流センシングを実現するには、ソリューション全体のサイズやコスト、測定/検出のスピード、設計の複雑さも考慮しなくてはならない。これらの要素と精度は、一般的にトレードオフの関係にあるからだ。

 Texas Instruments(TI)は、高精度のニーズに応えつつトレードオフも解消できる電流センシングソリューションを拡充している。

 TIはこれまでも、さまざまなシステムで顧客のニーズに沿った電流センシングを実現するための技術開発に注力してきた。TIの電流センシングソリューションは、シャント抵抗式電流センサーを構成するための高精度/高速オペアンプや絶縁型A-Dコンバーターといったディスクリートから、ホール効果電流センサー、シャント抵抗を内蔵したデジタル電力モニターまで、多岐にわたる。顧客は、システムの要件に合わせて柔軟に製品を選択できる。

TIは、さまざまなシステムで高精度なセンシングを実現する製品群をそろえていて、高精度な電流センシングに向けても製品を拡充している 提供:日本テキサス・インスツルメンツ

高電圧システムで高精度の電流センシングを実現

 TIが2023年8月に発表したばかりのホール効果電流センサー「TMCS1123」は、太陽光発電システムやEVの充電ステーションなど、高電圧システムにおける高精度電流センシングのための製品だ。

 EVでは近年、充電時間の短縮やパワートレイン部品の小型化/高出力化を図るため、バッテリー電圧を現在の400Vから800Vに高める動きが始まっている。このような高電圧システムではより高い信頼性が求められる他、高電圧に対応できる部品や回路設計が必要になるのでシステム設計が複雑になる。

 高電圧システムでは、ホール効果電流センサーではなくシャント抵抗式電流センサーが一般的に使われている。温度の変化によって測定誤差が大きくなってしまう前者に対し、後者は高精度のシャント抵抗、アンプ、A-Dコンバーターを使うことで電流測定範囲と動作温度範囲の全範囲、そしてセンサーの寿命全体にわたって測定ドリフトが1%未満という高い精度で電流をセンシングできるからだ。

 だが、シャント抵抗式電流センサーはアーキテクチャによってどうしても信号の伝搬遅延が長くなる、ハイサイド/ローサイド電源が必要なので部品点数が多くなり設計の複雑さが増す、といった課題がある。シャント抵抗の抵抗値に比例して発熱するため熱設計が難しく、消費電力が高くなりがちというデメリットもある。

 ホール効果電流センサーは、伝搬遅延が短い上にパッケージに封止されているのでシステムに組み込みやすい。パッケージのリードフレームを経由して電流が流れ込むので、高精度の抵抗は不要だ。ローサイド電源のみでセンサーに電力供給できるので、シャント抵抗式電流センサーよりも必要な部品点数が少なく、設計がシンプルになるという利点もある。

 ただ、ホール効果電流センサーは温度範囲と寿命全体にわたってドリフトが大きいというデメリットがある。既存のホール効果電流センサーは、絶縁動作電圧が最大でも700〜800Vという点も課題になる。800Vバッテリーを搭載するEVで使うには、1000〜1100Vの絶縁動作電圧が必要だからだ。これらの理由から、ホール効果電流センサーは高電圧システムではほとんど採用されてこなかった。

 TMCS1123は、これらの課題を解決した製品だ。EVなどの高電圧システムで、これまでは使えなかったホール効果電流センサーが使えるようになる。

1100VDCの強化絶縁動作電圧

 TMCS1123はガルバニック絶縁を行うためのデバイス構造を最適化し、強化絶縁動作電圧を1100VDCに引き上げている。センサーを導体の近傍に配置したこととドリフト補償を内蔵したシグナルコンディショニング(信号調整)回路によって、寿命全体および動作温度範囲の全体にわたって最大±1.75%という高い合計感度誤差を実現した。既存のホール効果電流センサーは最高クラスでも±3%なので、精度が大幅に向上していることが分かる。独自のアルゴリズムを活用することで寿命全体の感度ドリフト誤差は±0.50%、温度ドリフト係数は50ppm/℃を実現した。

 こうした特性により、TMCS1123を電流センサーとして採用したシステムではキャリブレーションやメンテナンスの回数を低減できる。これは、メンテナンスにかかるコストと時間の削減にも貢献する。

 その他、差動型のホール効果センシングを採用しているので磁界による干渉やクロストークを大幅に下げられる。過電流検出や高精度な電圧レファレンス、センサーアラートといった機能も搭載しており、少ない部品点数で高精度かつ信頼性が高い電流センサーを構築できる。

 信号帯域幅が250kHzと広く、伝搬遅延時間が600ナノ秒と短いことも特徴だ。システムでより厳格な制御ループを実現できるので、電力損失を最小限に抑えられる。

「TMCS1123」を使ったEVチャージャの回路構成例 提供:日本テキサス・インスツルメンツ

 2023年第4四半期には周波数帯域幅がより広いバージョン、2024年第2四半期には車載認証済みのバージョンがリリースされる予定だ。

シャント抵抗内蔵でソリューションサイズを85%小型化

 TIは、シャント抵抗をチップに内蔵する独自技術「EZShunt」を用いたデジタル電力モニターの製品ラインアップも拡充した。EZShuntは、パッケージ内のリードフレームをシャント抵抗として活用する。外部シャント抵抗が不要になるので、設計を簡素化して電流センシングソリューションのサイズを小型化できることが最大の特徴だ。

 新しいラインアップの一つである「INA700」は、電流センシングに特化した16ビットのデルタ・シグマA-Dコンバーターを搭載し、わずか1.3mm×1.2mmのWCSP(ウエハーチップスケールパッケージ)を実現した製品だ。INA700を用いることで、電流センシングソリューションを従来比で最大84%小型化できる。INA700の総測定誤差は5A時で±0.7%と低く抑えられている。

「EZShunt」を適用したデジタル電力モニターは、電流センシングソリューションの小型化と設計の簡素化をうたう 提供:日本テキサス・インスツルメンツ

 「INA781」は20ビットのデルタ・シグマA-Dコンバーターを搭載。−0.1〜85Vという広い同相電圧範囲に対応し、25℃において75ARMSのフルスケール電流を測定できる。

 TIは他にもパッケージや電流定格、電圧レールが異なるさまざまな品種をEZShuntのファミリーとしてそろえている。自動車の12V系/48V系システムやデータセンターのサーバなど幅広いアプリケーションで、電流センシングソリューションの設計を簡素化できる。

 TMCS1123、INA700/INA781ともに、評価基板も入手可能だ。

 システムのエネルギー効率や安全性を高める上で重要な役割を果たす電流センシングソリューション。TMCS1123やEZShuntを含め、TIの電流センシングソリューションは高電圧対応や高精度といったシステム要件を満たしつつ、設計の簡素化も同時にかなえる製品だ。

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提供:日本テキサス・インスツルメンツ合同会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2023年11月5日

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