標準品のAC-DCスイッチング電源などを手掛ける台湾MEAN WELLは、DC電源で世界第3位の売り上げ規模を持つメーカーだ。1万品種を超える圧倒的な製品群と在庫力、そして24時間以内の迅速な出荷を強みとする。十分な市場実績を持つMEAN WELLは、深刻な部品不足を経験した機器メーカーにとって信頼に足る新たな調達先の候補となるはずだ。
全世界で猛威を振るった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響によって生活環境は様変わりし、経済活動も大きなダメージを受けた。機器メーカーのほとんどは、「製造に必要な電子デバイスを調達できず、生産ラインが長期間停止して機器/システムを計画通りに出荷できない」という状況に陥った。この結果、電子機器業界や自動車業界を始め、さまざまな産業の生産活動に大混乱が生じた。
半導体や電子部品の供給難から、電源製品を含めさまざまな電子機器の納期に大幅な遅れが生じた。そうした中、コロナ禍で部品調達が最も厳しい時期でも安定した出荷を実現した電源メーカーがある。台湾のMEAN WELL Enterprisesだ。
台湾・新北市で1982年に設立されたMEAN WELLは、自社ブランドによる標準品電源を全世界で販売している。売上高上位の競合他社がOEM/ODMを中心としたビジネスモデルなのに対し、MEAN WELLは自社ブランド品の販売比率が全売上高の99%を占めているのも大きな特徴だ。
2022年のグループ売上高は14億9300万米ドル(447億台湾元/約2000億円)。2022年の売上高をベースにした「2023 MTC(マイクロテクノロジー・コンサルタント)レポート」によれば、グローバル電源(DC出力)メーカーの売上高ランキングで世界第3位になっている。
台湾および中国の広州と蘇州にある工場を主力製造拠点とし、一部はインド・バンガロールの工場でも生産している。市場規模の拡大に合わせた設備投資も継続的に行っていて、2022年には生産能力が年間で1億台を超えた。蘇州工場は引き続き生産能力増強に取り組んでいる。その効果もあり、2024年には全社の生産能力が約2倍の1億8000万〜2億台規模に達する見込みだ。
この他、R&Dセンターを台湾と広州、蘇州に、テクニカルサポートセンターと物流センターをそれぞれ世界8カ所に設けている。世界19カ所に営業拠点があり、245社以上の販売代理店が顧客をサポートしている。
MEAN WELLの大きな強みは、圧倒的な“品ぞろえ”と、在庫力や迅速な出荷に支えられた入手可能性だ。
MEAN WELLが用意している標準電源の種類は、2022年時点で1万3409機種に及ぶ。しかも、毎年1割程度の新機種を追加している。出力容量が0.5W〜360kWの範囲で、AC-DC電源、LEDドライバー、AC-DCバッテリー充電器、DC-DCコンバーター、DC-ACインバーターといった製品を提供する。
これだけの機種があれば、標準品であってもさまざまなシステムの電源仕様にきめ細かく対応可能だ。「漏れ電流への対応」や「放熱対策」などの特別な要求があれば、標準品をベースに安全規格に準拠する範囲でカスタマイズにも応える。
これだけの品種をそろえているにもかかわらず、MEAN WELLは「標準品在庫の95%を、24時間に出荷」という、スピーディな出荷を誇っている。
MEAN WELLは、市場の動向に合わせて標準電源を計画的に生産するオンライン情報処理システムを1991年に導入した。このERPを活用し、工場と営業拠点、販売代理店、協力メーカーの情報を連携させて生産と販売、管理業務の効率化を図った。
これによって電源の製造に必要な電子部品を計画的に調達していることに加え、全体の80%の機種を完成品在庫として保有している。こうした生産システムの確立により、標準品在庫の95%は24時間以内に出荷できる。1000個以上の大ロット受注でも30日間のリードタイムで出荷する体制を整えている。
こうした生産システムは、コロナ禍の部品不足でも力を発揮した。MEAN WELLは、部品不足が始まった当初からWebサイトで生産能力と受注状況を公開し、これらの情報を基に納期を顧客に伝えた。データを見ると、部品不足が最も深刻な時期とされていた2022年2〜4月でも最長180日の納期を達成していたことが分かる。
独自の生産計画も、安定した入手可能性を支えている。コロナ禍の時期でも、電源の製造に必要な部品は、ほぼ計画通りに調達していた。MEAN WELLにおける「納期の長期化」は部品不足が問題ではなく、「自社工場の生産能力に起因する問題であった」と言い切る。同社が生産能力の増強を続けているのはこのためだ。先述の通り、蘇州工場の増産投資が完了すれば全社ベースで生産能力は約2倍に増える可能性がある。これによって生産能力による納期の遅延はほぼ解消される見通しだ。
ERPの運用によって、納期短縮だけでなく生産効率も向上した。売上高が世界第3位というスケールメリットや部品/部材の標準化と集中購買などにより、コスト競争力が高いことも強みの一つになっている。
グローバルな市場でビジネスを展開する応用機器メーカーにとって、主な安全規格への対応も重要な項目の一つだ。電源関連の安全規格としては、米国の「UL規格」、カナダの「CSA/C-UL規格」、EUの「CEマーキング」、日本の「電気用品安全法」などがある。
MEAN WELLは売上高の5%以上を新製品開発に投資している。この中で、台湾国家発展委員会などと共同で技術革新に取り組むとともに、市場や顧客のニーズに沿って世界各国/地域の安全規格に適合した製品を開発している。これによって、応用機器メーカーは安全規格の認証取得に必要な作業・業務を簡素化して市場投入までの期間を大幅に短縮できる。
品質管理についても万全の体制で取り組んでいる。MEAN WELLは部材の受け入れ検査や工程内での検査をはじめ、どれほど安価な製品でも出荷時に全品をBurn-In(バーンイン)試験するなど、総合的な品質管理を徹底的に実施している。
高品質の製品開発は日本企業のお家芸でもあった。品質の高い製品を提供することは供給先との信頼関係を強め、ブランド力の向上にもつながる。今では、世界市場で活躍するさまざまな企業が品質管理に注力している。台湾の電源メーカーも日本企業と同等あるいはそれ以上の高い品質を実現している。
それを裏付けるデータもある。MEAN WELLの場合、顧客の75%以上がMEAN WELL製の電源製品を10年以上継続して購入しており、顧客当たりの年間取引額は年率10%以上増加している。こうした顧客との信頼関係が、世界第3位のグローバル電源メーカーという実績に表れている。
売上高を地域別に見るとアジア市場が50.4%で過半数を占めるMEAN WELLだが、日本市場に限って言えば知名度はまだ低く、市場シェアも期待値ほどは高くない。日本には高度な技術力を持つ強力な競合メーカーが存在するからだ。しかも品質に対する「実績主義」というシステム設計者の考え方も反映されており、「日本製を使いたい」という要望も根強く残る。
だが、コロナ禍で深刻な部品不足に直面したことで、こうした考え方が少しずつ変化している。BCP(事業継続計画)施策として「電源の代替メーカーを探したい」という動きも出てきた。こうした中で、高い在庫力と迅速な出荷を実現するMEAN WELLは、新たな調達先として信頼に足る選択肢となるはずだ。サプライチェーンに大きく左右されない入手可能性は、機器メーカーにとって大きな魅力になるだろう。
なお、日本市場ではMEAN WELLの販売代理店の1社としてPALTEKが提案活動や技術サポートを行っている。
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提供:MEAN WELL Enterprises Co., Ltd.、株式会社PALTEK
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2024年2月14日