メディア

採用が本格化する車載タッチOLEDディスプレイ、その特長と求められる技術とは薄型化による課題を解決するコントローラーIC

新車を購入する際の指標としてディスプレイの重要性が高まる中、OLEDディスプレイ技術の採用拡大が見込まれている。本稿では、車載ディスプレイにおけるOLED技術の利点や技術発展の状況、OLEDディスプレイ用のタッチコントローラーに求められる技術などを解説する。

» 2024年08月19日 10時00分 公開
[PR/EDN Japan]
PR

 新車を購入しようとする人がその車の技術的水準と革新性の指標として真っ先に目を向ける部分の1つはディスプレイの大きさと数です。新車購入の際の決め手は馬力からディスプレイサイズに変わりつつあります。エンジンの種類が内燃であろうと、ハイブリッドであろうと、電動であろうと、ディスプレイサイズはその車の能力について人々が抱く印象に影響を与えます。

Microchip Technologyの車載タッチスクリーンコントローラー担当シニア製品マーケティングマネージャを務める、Thomas Souche氏 Microchip Technologyの車載タッチスクリーンコントローラー担当シニア製品マーケティングマネージャを務める、Thomas Souche氏

 自動車メーカーにとって、第一印象は良くも悪くも記憶に残りやすいため、HMI(ヒューマンマシンインタフェース)ディスプレイに関しては可能な限り良い印象を与える事がますます重要になっています。OLED(有機発光ダイオード)ディスプレイ技術は最高の第一印象を与える手段となるだけでなく、ユーザーとコックピット設計者の双方に実際的なメリットをもたらします。

 KDIA(韓国ディスプレイ産業協会)の最近の報告書によれば、世界の車載ディスプレイ市場の年平均成長率は7.8%と予測され、2022年の88億6000万米ドルから2027年には約126億3000万米ドルに達する見込みです※1。この成長を促進する要因の1つとして挙げられているのが自動車へのOLEDディスプレイの採用です。2022年のOLEDの市場シェアはわずか2.8%でしたが、2027年には17.2%に拡大すると見込まれています。

 では、OLEDディスプレイ技術の自動車への採用拡大を後押しする要因について見ていきましょう。

※1)参考資料(英文):Display Daily:Automotive Display Market Set for Robust Growth with OLEDs Taking Center Stage

車載ディスプレイにおけるOLED技術

 最近まで、車載ディスプレイの主力はLCD(液晶ディスプレイ)技術でした。もともとコンシューマー向け市場で生まれたこの技術は、車載アプリケーションに合わせて調整され適合性を認められてきました。

 OLEDディスプレイが持つ高品質なビジュアルと薄型のフォームファクターによって、スマートフォンからPCモニター、テレビに至るまで、現代のコンシューマー向け市場は既にOLEDディスプレイ技術への移行を始めています。自動車業界もまた、同様の理由と自動車ならではの理由によりOLED技術を採用し始めています。実際、OLED技術に本来備わっている特性の多くは車載ディスプレイアプリケーションにとって非常に魅力的です。

トゥルーブラックと高コントラスト

 OLEDは自発光型のディスプレイ技術であるため、ピクセルがOFFの時は発光せず、黒が「トゥルーブラック(本物の黒)」になります。一方、LCDの原理はバックライトユニットからの光を遮って画像/映像を表現するため、濃いグレーにはなるものの「トゥルーブラック」にはなりません。LCDメーカーは、ミニLEDのアレイを使ってローカル調光を実装し、黒いピクセルのあるゾーンのバックライトをOFFにしてこの欠点を克服しようとしています。ただ、この手法によってコントラストは向上しても、ピクセルの粒度が粗いため、ブルーミングやハロー現象等の好ましくない効果が発生する可能性があります。また、ミニLEDアレイとその電子制御のための層が加わる事で、システムの厚みと重さ、コストが増加します。これらの点は画面サイズが大きくなるほど深刻化します。

 では、OLEDディスプレイ技術は自動車メーカーにどのようなメリットをもたらすのでしょうか。

  • ほとんどの車載GUI(グラフィカルユーザーインタフェース)は、夜間運転中に運転者と同乗者の気が散る事がないよう黒い背景を採用しています。OLEDのトゥルーブラックの特性によってユーザーの快適性は大幅に向上します。
  • コントラストが高いため、ディスプレイの視認性が良くなり、車全体の安全性が向上します。
  • 視野角が広いため、車内のさまざまな位置からディスプレイをはっきりと見る事ができます。
  • 他のディスプレイ技術と異なり、OLEDディスプレイは低温でも高速な反応時間を維持します。寒い冬の朝に始動した直後でも重要なリアルタイム情報が遅延なくはっきりと表示されます。
  • OLEDはバックライトのスイッチングが必要ないため、目に優しく長時間見た時の疲労が軽減されます。

コックピット設計の統合と低消費電力化

 OLED技術は自動車メーカーが複数の課題を解決するのに役立ちます。ディスプレイが大型化するにつれてOLED技術のLCD設計に対する優位性はますます高まります。OLEDは層数が少なく薄型のため、自動車メーカーは以下の点でコックピット設計を強化できます。

  • 軽量かつ薄型の積層構造により、大型スクリーンを軽量化できます。
  • 曲面ディスプレイ設計の半径を小さくできるため、ブランドの独自性が際立つ革新的なコックピット設計を実現できます。
  • トゥルーブラック技術によってディスプレイの淵が周囲の黒い本体に溶け込み、HMIモジュールに独自の質感が出せます。
  • 消費電力が小さくなります(特に背景画像が暗い場合)
  • 同等のLCDと比べてプラスチック使用量を低減できるため、環境に優しくなります。

 低消費電力で軽量な大型ディスプレイは、同じバッテリー容量でより長い航続距離を実現できるため、バッテリー電気自動車メーカーにとって特に有益です。

かつての課題は解決済み、車載要件に適合するOLED技術

 古い世代のOLEDディスプレイの短所を覚えている自動車メーカーおよびサプライヤーには、ぜひ注目して頂きたいポイントがあります。車載GUIに静止した(頻繁に使われない)アイコンが多くある事による焼き付き効果や、太陽光の下で読みづらいという輝度の問題は、OLED技術の進化によって既に解決されています。

 ディスプレイメーカーは2段スタック型OLED(タンデムOLED構造)によってディスプレイの輝度を大幅に向上させました。画面の輝度が改善されただけでなく、構造に有機層が加わった事でOLED全体にエネルギーが分散されて安定性が増し、寿命も長くなりました。Tier 1はこのような改善を認めて、ハイエンド車へのOLEDディスプレイの実装を増やしています。

タッチインタフェースの利点

 ディスプレイ技術とは別に、タッチインタフェースは優れたユーザーエクスペリエンスを提供する鍵です。車載タッチスクリーンの要件は、コンシューマー向けデバイスよりもはるかに厳しくなります。以下に例を挙げます。

  • 環境の幅広い変化に対応して高い信頼性で操作できる事
  • 手袋をはめたままの操作に対応する事
  • ノイズ耐性とRFエミッションについて電磁適合性を満たしている事
  • 機能安全ISO 26262 ASIL-Bに準拠している事(セーフティクリティカルな機械式ボタンがタッチスクリーン上のバーチャルボタンに移行しつつあるため)

 近年、ほとんどのLCDディスプレイメーカーはオンセル技術またはインセル技術を使って、ディスプレイにマルチタッチ機能を搭載しています。OLED技術ではピクセル上全体に低インピーダンスのカソード層が採用されているため、オンセル構造のみが使われます。結果としてより薄型、軽量かつ柔軟なタッチOLEDディスプレイを実現できるため、全ての主要な車載OLEDメーカーはこのタイプの設計を採用しているか、もしくは開発を進めています。

<strong>図1:車載オンセルタッチOLEDの積層構造</strong>[クリックで拡大] 図1:車載オンセルタッチOLEDの積層構造[クリックで拡大]

 オンセル技術を使う事でOLEDディスプレイの薄型化が可能になる一方、タッチスクリーンコントローラーには新たな課題が浮上します。これは、タッチ電極がカソード層とディスプレイピクセルに近づく事によって発生します(図1参照)。オンセル設計では、タッチ電極のグランドとの容量性負荷が高くなります。指の接触で生じる静電容量の大きさは変わりませんが、指の接触に対する感度は低下します。

 この課題をイメージしやすいように以下の例を考えてみてください。従来のディスプレイ技術で指の接触の容量を検出するのは、小さなバケツにコップ1杯の水を加えた時の水位の変化を計測するようなものでした。一方、薄型オンセルOLED構造では、浴槽1杯分の水に対して同じ分量の変化を検出するようなものです。

タッチコントローラーに求められる技術

 ピクセルのスイッチングによって発生する電磁ノイズは、タッチ電極との結合が強まるのと合わさって、タッチの誤検出や検出漏れのリスクを高めます。

 この課題に対応するため、S/N比(信号/ノイズ比)の高い検出機能を持つタッチスクリーンコントローラー技術を選択する事が不可欠です。タッチスクリーンコントローラーには以下を実装する必要があります。

  • オンセルOLEDタッチセンサーの高負荷特性に適合した駆動および検出方式
  • 強力なディスプレイノイズキャンセル技術
  • 高いタッチレポートレートと低い初期タッチレイテンシを実現する高速かつ効率的な信号処理

ハイテクな外観と操作性

 高品質なビジュアル、トゥルーブラックの背景、エネルギー効率の向上、軽量な曲面パネルを実現するOLEDの能力は、現代の購買者の心をつかみ購買決定にプラスの影響を与えるエンド製品を生み出します。

 また、薄型の車載オンセルOLED技術が引き起こす技術的課題があったとしても、ユーザーに提供されるタッチ体験は完璧なものでなければなりません。Microchip社のmaXTouch®タッチスクリーンコントローラーは(手袋をはめたままでも)高速性、正確性、耐水性に優れた実証済みのマルチタッチ検出技術を提供するだけでなく、幅広い柔軟性によって車載設計で使われるアスペクト比に適合します。最新のM1世代のmaXTouchタッチスクリーンコントローラーは新しい駆動および検出方式と先進の信号処理により、新しい車載OLEDディスプレイで高速性、信頼性、安全性に優れたタッチ操作を可能にします。

【著:Thomas Souche/Microchip Technology車載タッチスクリーンコントローラー担当シニア製品マーケティングマネージャ】

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


提供:マイクロチップ・テクノロジー・ジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2024年9月18日

関連リンク

RSSフィード

公式SNS

EDN 海外ネットワーク

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.