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RISC-Vマルチコアプロセッサで64ビットMPU市場に参入 Microchipの狙いと展望高まるエッジ性能の需要に対応

近年、スマート組み込みビジョンやAI/MLなどリアルタイムの高演算負荷アプリケーションの台頭によって、高電力効率コンピューティングの限界が試されている。Microchip Technologyはこうした市場における需要に対応するものとして、新たに64ビットMPUポートフォリオ製品および第1弾となるPIC64GX MPUを発表した。今回、同社FPGA部門マーケティング担当取締役であるVenki Narayanan氏に、製品の詳細や実現する機能および競合に対する優位性、さらに第1弾にRISC-Vアーキテクチャを選んだ理由や今後の製品展開などを聞いた。

» 2024年09月12日 10時00分 公開
[PR/EDN Japan]
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「ミクストクリティカリティシステム」への対応

――PIC64ポートフォリオ製品の詳細を教えてください。特に、AMP(非対称マルチプロセッシング)機能はどのようなメリットがあるのでしょうか。

Venki Narayanan氏 セキュリティを備えた組み込みビジョン、AI(人工知能)/ML(機械学習)等、高い演算能力を必要とするアプリケーションの台頭により、高電力効率コンピューティングの限界が試されています。その結果、同じプロセッササブシステム上で、Linuxオペレーティングシステムとリアルタイム機能といったミクストクリティカリティ(重大性が混在した)アプリケーションを実行する事が求められています。さらに、これらのアプリケーションではインテリジェントエッジで高い性能、ハードウェアレベルのセキュリティ、セキュアブート、信頼性を発揮する事も求められます。

 以上の要件を満たすには、インテリジェントエッジアプリケーションでは、Linux、RTOS(リアルタイムオペレーティングシステム)、ベアメタルを同一のホモジニアスなプロセッサクラスタで実行できる64ビットの演算ソリューションが活用できます。このコンセプトがAMPと呼ばれています。

 Microchip社は8ビット、16ビット、32ビットの組み込みソリューションのリーダーですが、新たに64ビットMPUであるPIC64ポートフォリオを追加した事で、こうした需要に対応し、ローレンジからミッドレンジ、ハイレンジまでのコンピューティング処理ソリューションを提供可能となりました。

 PIC64ファミリーは、リアルタイム処理とアプリケーションクラスの処理を必要とする幅広い市場に対応するように設計されています。その最初の製品としてリリースするのが、産業、車載、通信、IoT(モノのインターネット)、航空宇宙、防衛分野向けのPIC64GX MPUです。PIC64GXはAMPを備え、リアルタイムの決定論的処理機能を備えた64ビットRISC-Vクアッドコアプロセッサを搭載し、幅広いオペレーティングシステム、ビルドシステム、ドライバー、各種オープンソースおよび商用ツールを通して実現されています。

PIC64ポートフォリオ製品の第1弾であるPIC64GX MPU PIC64ポートフォリオ製品の第1弾であるPIC64GX MPU

 PIC64GXは、RISC-V Instruction Set Architecture(ISA)に基づくミッドレンジ組み込みコンピューティングプラットフォームとして機能する、電力効率が高いLinux対応のプロセッサです。RISC-V CPUマイクロアーキテクチャの実装は、シンプルな5段のシングルイシュー/インオーダーパイプラインで、MeltdownやSpectre脆弱性とは無縁です。5つのRISC-Vコアは柔軟なメモリサブシステムとコヒーレントに保たれるため、決定論的リアルタイムシステムとLinuxを1つのマルチコアプロセッサクラスタ上で用途に合わせて組み合わせる事ができます。

 また、内蔵セキュアブート、革新的なLinuxおよびリアルタイムモード、大容量のL2メモリサブシステム、豊富な内蔵周辺モジュールも搭載し、セキュアで電力効率の高い組み込みコンピューティングプラットフォームの新しい選択肢を提供します。

第1弾製品にRISC-Vアーキテクチャを採用した理由

――PIC64製品の立ち上げに際し、なぜ64ビットRISC-Vアーキテクチャを選択したのですか。

Narayanan氏 主に2つの理由があります。(a)市場投入にかかる期間を短くするため、(b)最小限の開発コストと最小数のトランジスタでホモジニアスなアプリケーションクラスプロセッサクラスタを使い、ミクストクリティカリティシステム向けのソリューションを提供できるようにするため、です。

 詳しく説明すると、PIC64GXはPIC64プラットフォームで計画する複数ファミリーのうちの最初のものであり、解決しようとする問題に合わせて他のISAもサポートしていく予定です。素早く市場に参入するため、2022年から市販されているSoC(System on Chip)FPGAの「PolarFire SoC」と同じマイクロプロセッササブシステムアーキテクチャを活用しました。

――PIC64GXはクアッドコアプロセッサですが、設計に4コアを採用した理由を教えてください。アプリケーションでは、各コアにコンピューティングリソースをどう割り当てているのでしょうか。

Narayanan氏 ミクストクリティカリティシステムでは、Linux OS、RTOS、ベアメタルをそれぞれ独立して実行する複数のコアが必要になるため、複数ワークロードをサポート可能なマルチコアクラスタは必須です。1つのクアッドコアプロセッサと監視機能用の5つ目のコアを使う事で、4コア全てでSMP LinuxまたはZephyr等のSMP RTOSを実行できます。RTOSを実行するには、キャッシュラインをTCM(密結合メモリ)として構成した上で分岐予測をOFFにする事で、決定論的レイテンシを実現できます。

 ミクストクリティカリティアプリケーションの場合、システム設計者はホスト機能をLinux OSで実行するのと同時に、同じプロセッササブシステムで低レイテンシと決定論的レイテンシのワークロードを実行する必要があります。

 PIC64GXでは、コンピューティングリソースを開発者が必要に応じて分配可能になりました。マルチコアプロセッサ内において、開発者は決定論的演算タスクと非決定論的演算タスクをシングルチップで実行できる他、リソースをアプリケーションごとに割り当てられます。

 PIC64GXでは設計者は、リアルタイムワークロードのスループットがどの程度必要か、またどの程度のメモリが必要かなどのシステムの設計を柔軟に行うことができます。

――PIC64製品のソフトウェア設計のリソース(互換性、使いやすさ、安定性等)について、詳細を教えてください。

Narayanan氏 Microchip社はPIC64GXを使った設計に必要な包括的な組み込みソフトウェア エコシステムを提供しています。具体的には(1)Yocto、Microchip社のBuildroot External等のLinuxビルドシステム、(2)当社デバイスを対象とするブートローダ、カーネル更新、ビルドシステムを含むLinux4Microchip、(3)当社がCanonical Ubuntuと共同で提供するプログラミング済みのPIC64GX1000 Curiosityキット、(4)最も一般的な開発環境に基づいてコンパイル、プログラム、基本的なデバッグを実行できるMPLAB Extensions for VS Codeなどを含みます。

後発となる64ビットMPU市場における優位性は

――64ビットMPU市場ではMicrochip社は比較的後発ですが、競合他社と比較してMicrochip社にはどんな優位性がありますか。

Narayanan氏 これは2つのカテゴリーに分けられます。

 まずは製品の差別化です。先述の通り、PIC64GXは1つのホモジニアスなプロセッサクラスタで複数のイメージングパイプラインをサポートし、非対称コンピューティング機能と防衛グレードのセキュリティを提供しています。そのためトランジスタのフットプリントを最小限に抑えられ、コスト増や複雑化の要因となる大規模なヘテロジニアスかつ多様なプロセッサクラスタを使う必要がなくなります。

 もう一つは、既に8〜32ビットのセグメントで組み込みシステムコミュニティーに提供しているMicrochip社のリーダーシップが継続される事です。これを裏付けるのが、汎用性の高い開発プラットフォーム「MPLAB」です。MPLABは1日平均5万回以上起動されています。

 今回のPIC64ポートフォリオの導入によって、Microchip社は8ビット、16ビット、32ビット、64ビットの全領域にわたってMCUとMPUを積極的に開発する唯一の組み込みソリューションプロバイダーとなりました。2024年6月に当社が発表したMPLAB Extensions for VS Codeは、64ビットプロセッサを含め、Microchip社のデバイスに基づく設計を包括的にサポートするシームレスかつ柔軟で効率的な開発環境を提供します。これにより、開発者はアプリケーションの要件に応じてより高性能なコンピュートエレメントに移行可能になります。

「トータルシステムソリューション」が大きな差別化要素に

ーーMicrochip社は8ビットから64ビットにわたるMPUおよびMCU組み込みソリューションに積極的に投資していますが、このレンジの幅広さは業界にどのような影響を与えるでしょうか。

Narayanan氏 当社のインテリジェントエッジシステムにおける消耗品から、IoT、オートメーション、イメージング、車載、航空宇宙、防衛までにわたる実績を踏まえると、新しい64ビット製品は演算性能と製品の多様化という面において非常に大きなアップグレードが期待されます。当社が対応しようしている重要なニーズは、エッジベースのミクストクリティカリティシステムにリアルタイムのインテリジェンスをもたらす事です。

 また、当社は、顧客におけるハードウェア開発がますます画一化され、ソフトウェアで差別化を実現する開発環境になってきていると認識しています。処理プラットフォームを中心にトータルシステムソリューションを提供するMicrochip社は、その役に立てる絶好のポジションにあります。顧客は、コネクティビティ、アナログ、電源管理、セキュリティ、アクセラレーション等、エッジシステムのポストセンサー処理ハードウェアに必要なほぼ全てを網羅するエンドツーエンドのハードウェア製品を入手できます。さらに、これを支える強固なソフトウェア開発ツールとアプリケーション層ツールも用意しています。Microchip社が「トータルシステムソリューション」と呼ぶこのコンセプトは、システムレベルでの差別化要因となるでしょう。

――組み込みMPUは、エッジAI、生成AI、AIoTの急速な成長による市場利益をどのように取り込む事ができるでしょうか。MPU分野におけるMicrochip社の今後の計画をお聞かせください。

Narayanan氏 当社が取り組む主要なトレンドは産業用オートメーション、IIoT(産業IoT)、ML推論等のアプリケーション分野におけるミクストクリティカリティシステムにリアルタイム性、低レイテンシ、AMPをもたらす事です。当社はこの課題に、ローレベルの組み込みシステム制御からポストセンサーペイロード処理までの革新的な8〜64ビット製品を通して取り組んでいます。今後数四半期にわたり、新しいMPUソリューションおよびデバイスを続々と追加していく予定です。

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提供:マイクロチップ・テクノロジー・ジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2024年10月11日

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