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» 2012年12月20日 00時00分 公開

【UPS第1弾】オフラインUPS編:小型UPSの動作システムと回路技術を解説ソリューションコラム第4回(2/2 ページ)

[PR/EDN Japan]
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パワエレ技術研究所 所長 工学博士 田本 貞治

※株式会社ユタカ電機製作所に在籍後、パワエレ技術研究所を設立。専門分野:UPS、高精度交流電源の設計開発、デジタル電源の研究開発


方形波出力UPSの問題点を探る

 本来商用電源で動作するコンピュータなどに内蔵されている電源は、正弦波電圧で動作するように設計されています。そのため、この電源に方形波電圧を入力すると不具合を生じることもあり、UPSの選定においては注意が必要です。ところが、安価なUPSはほとんどがこの方形波出力になっています。このことがオフラインUPSの大きな問題になります。ここからはこの問題について考えていきます。

方形波出力のUPSはどのような問題を含んでいるか

 商用電源で動作するスイッチング電源では、まず交流電圧を整流して直流電圧に変換します。図8(a)のようなダイオードで整流した回路を使用すると、スイッチング電源の入力電流には図8(b)のように高調波電流が多く含まれ、歪が大きい電流が流れます。歪が大きい電流が電力系統に流れると高調波電流により、送配電機器に悪い影響を与えるため、歪を少なくする必要があります。この電流歪を少なくする回路をPFC(力率改善回路)といいます。電流の高調波電流が増えると電源の力率が悪くなるため、この補正回路は力率改善回路と言われています。

 PFCは図9(a)に示すような回路を使用し、図9(b)に示すような制御方式を用いて高調波電流を少なくします。このPFC回路では、入力の商用電源の電圧波形を利用して入力電流を正弦波に近づけています。ところが、入力に方形波電圧が入力されると、PFCは入力電流をこの方形波に合わせるように制御しようとします。しかしPFC回路は正弦波電流であることを前提に設計されているため、方形波電流にうまく制御できない恐れがあります。その結果、動作が不安定になり最悪の場合は異常電流が流れPFC回路を壊してしまうことも考えられます。事実このような不具合が報告されており、PFC回路を内蔵した電源用のUPSは正弦波出力にすることが求められています。

ダイオード整流回路 図8(a) ダイオード整流回路
ダイオード整流回路の電流波形 図8(b) ダイオード整流回路の電流波形
PFC回路の例 図9(a) PFC回路の例
PFCの制御方式 図9(b) PFCの制御方式

どのような場合に方形波UPSが使用できるか

 PFC回路が内蔵されている電源機器に方形波出力のUPSを接続すると問題があることを説明しましたが、では、どのような装置であれば方形波出力のUPSでも使用できるでしょうか。これは、PFC回路があるから問題になるので、PFC回路がなければ問題になりません。したがって、方形波出力のUPSが使用できるのはPFC回路を内蔵していない電源装置ということになります。消費電力が少ない小容量の電源を内蔵した装置がこれにあたります。事務機のような装置では75W以下の電源を内蔵した装置です。実例を挙げると、家庭で使用している光通信電話のモデムや携帯電話の充電器などが該当するものとみなせます。それ以外では、ノートパソコンの電源アダプタは、PFCが内蔵されているものと内蔵されていないものもあり判断が難しくなります。デスクトップ型のパソコンは消費電流が大きいので、一般的にPFCは内蔵されていると考えた方がよいでしょう。このように消費電力が少ない機器には方形波出力のオフラインUPSを使用することができますが、消費電力が大きい機器には正弦波出力のUPSを使用するようにします。

瞬断が発生するオフラインUPSは問題ないか

 多くのオフラインUPSの瞬断時間は、5msecから10msecと考えられます。一般的なスイッチング電源は、商用周波数の1/2サイクル以上瞬断が発生しても内部のコンデンサに蓄えられた電気を使用して動作できるようにできています。したがって、10msec程度以下の切り換え時間のUPSであれば使用可能です。

問題点を解決した正弦波出力のオフラインUPS

正弦波出力のUPSの回路方式

 近年、PFC内蔵のスイッチング電源が使用されるようになり、これに方形波UPSを接続したことによる不具合事例が増えてきています。この対策として、正弦波出力のオフラインUPSが生産されるようになりました。しかし、オフラインUPSは安価であることが求められるため、従来のような高価な正弦波出力のDC-ACインバータを実装することができません。そこで、バッテリ電圧から直接交流電圧を作る方法が開発され実用化されています。その回路を図10(a)に示します。この回路では、正弦波プッシュプル・コンバータを使用します。しかし、この正弦波用プッシュプル・コンバータは、方形波用のプッシュプル・コンバータと異なり、コンバータ出力側にチョークコイルとコンデンサを使用したLCフィルタが実装されています。このフィルタにより正弦波を作り出すことが可能になります。ところが図10(a)の回路では出力は整流した直流回路になっており交流電圧を発生できません。そこで、図1のブロック図のように、バッテリ電圧昇圧回路の後にインバータを接続して、出力が交流になるようにします。このままでは、今まで説明してきた方形波のUPSと変わりありません。そこで、図10(b)のように、プッシュプル・コンバータは一定パルス幅ではなく、出力電圧が正弦波になるようにパルス幅を変えます。この回路を見ると、方形波UPSのバッテリ昇圧回路部分を正弦波が扱えるように変更したものであることが分かります。その結果、コストを余り上昇させることなく正弦波出力のオフラインUPSができるようになります。

正弦波出力用プッシュプル・コンバータ回路例 図10(a) 正弦波出力用プッシュプル・コンバータ回路例
正弦波出力用プッシュプルコンバータの動作波形 図10(b) 正弦波出力用プッシュプルコンバータの動作波形

正弦波にすると変換効率は悪くならないか

 UPSの変換効率が悪くなると無駄なエネルギー消費が増えることになります。しかし、オフラインUPSの場合は、通常動作時には商用電源を直接出力するので変換効率は悪くありません。このことがオフラインUPSを使用する大きなメリットといえます。オフラインUPSで変換効率に最も影響を与える回路は、バッテリ電圧昇圧回路です。特に、正弦波出力にした場合は変換効率の悪化が予想されます。しかし、近年低電圧のMOSFETは性能が向上し、低ON抵抗で大電流が流せるものが使用できるようになりましたので、この部分での変換効率の低下は少なくなりました。また、日本国内においては、停電発生は余り多くありません。そのため、停電してバッテリ昇圧回路が動作する時間は全体の動作時間と比較するとほんのわずかであり、問題にならなくなります。ただし、バッテリ昇圧回路とDC-ACインバータ回路の変換効率が悪いと、バッテリが放電できる時間が短くなります。

オフラインUPSの制御回路はどのようになっているか

 ここまで、オフラインUPSの回路を見てきましたが、制御回路はどのような部品で構成されているのでしょうか。オフラインUPSでは、停電が発生したときバッテリ電圧昇圧回路を動作させインバータから交流電圧を出力します。商用電源が復帰するとインバータから商用運転に戻しバッテリ充電回路を動作させます。このように、オフラインUPSといえども動作は複雑であり、回路を簡素にするためマイコンを使用します。ただしオフラインUPSでは高機能なマイコンを使用する必要はありません。安価な8ビットや16ビットマイコンが使用されます。

次回はオンラインUPSについて解説】

 次回はサーバーなどの装置を止めることができず、高い信頼性を要求されるオンラインUPSについて解説します。




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