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» 2013年03月29日 00時00分 公開

【UPS第2弾】オンラインUPS編:劣悪な電源環境でも止まらない高信頼性を持つオンラインUPSの動作システムと回路技術を解説ソリューションコラム第5回(2/2 ページ)

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パワエレ技術研究所 所長 工学博士 田本 貞治

※株式会社ユタカ電機製作所に在籍後、パワエレ技術研究所を設立。専門分野:UPS、高精度交流電源の設計開発、デジタル電源の研究開発


正弦波交流電圧を出力できるハーフブリッジ・インバータ

 プラスとマイナス2電源を入力して正弦波交流電圧を出力するDC-ACインバータとしては、図8に示すハーフブリッジ・インバータが使用されます。この回路は、トランジスタQ1とQ2を交互にONとOFFを繰り返す相補モードで動作します。その時にトランジスタの動作は図9に示すように、出力電圧が正弦波になるようにPWM変調がかけられます。トランジスタの出力にはチョークコイルとコンデンサで構成するLCフィルタが実装されます。このフィルタにより、Q1とQ2によるスイッチング波形は平滑されて滑らかな交流電圧に変換されます。

 このような商用周波数の交流電圧を出力するインバータのトランジスタにはMOSFETやIGBTが使用されます。近年IGBTの性能が向上してきましたので、IGBTの方が多く使われるようになってきました。しかし、MOSFETのスイッチング時間は数10nsecが多いのですが、IGBTの場合は数100nsecかかります。そのため、MOSFETでは数100kHzのスイッチング周波数まで使用できますが、IGBTの場合はスイッチング損失を抑えると、せいぜい数10kHzのスイッチング周波数にとどまります。またチョークコイルもスイッチング周波数を高くすると損失が増えます。オンラインUPSは変換効率も重要な要素になるため、スイッチング周波数を低く抑え、変換効率が下がらないようにしています。一般的に20kH程度のスイッチング周波数が適用されます。

 ここで、図10(a)のようにトランジスタQ1がONした場合を考えます。トランジスタQ1がONすると、プラス電源→トランジスタQ1→チョークコイルL→フィルタコンデンサCと負荷の順に電流が流れ、ニュートラルラインからニュートラル端子に戻ります。この状態でトランジスタがOFFするとチョークコイルLは電流を流し続けようとする性質があるので、図10(b)のように、入力コンデンサC2→トランジスタQ2の内蔵ダイオード→チョークコイルL→出力コンデンサと負荷→ニュートラルライン→入力コンデンサC2の順に電流が流れます。そこで、再びトランジスタQ1をONすると、まだQ2の内蔵ダイオードは導通状態にあるため、ダイオードの通電を遮断するために、一瞬プラス電源ライン→トランジスタQ1→トランジスタQ2の内蔵ダイオード→マイナス電源ラインの順に、プラス電源ラインとマイナス電源ライン間を短絡する電流が流れます。この電流のことをダイオードの逆回復電流(リバースリカバリ電流)といいます。この電流は、出力回路には流れず出力電力には寄与しない電流なので損失になってしまいます。

 この電流を減らすためには、逆回復電流を小さくすることと流れている時間を短くすることで対応します。特に流れている時間を短くすると逆回復電流そのものの大きさも小さくなるので、逆回復時間が小さいダイオードが内蔵されたトランジスタを使用することが効果的です。一般的に逆回復時間はtrrという記号で表します。スイッチング周波数が20kHz程度のインバータではこの逆回復時間は150nsec以下が望まれます。

 逆回復電流はトランジスタのゲート駆動電流によっても変わってきます。図11はこのようなインバータによく使用されるフォトカプラを使用したゲート駆動回路です。このゲート駆動回路では、ダイオードの逆回復電流を減らすために、トランジスタON時の電流変化が小さくなるようにゲート抵抗を大きくします。しかし、トランジスタOFF時はゲート抵抗が大きいとOFF時間が長くなって損失が増えてしまいます。そこで、トランジスタON時はゲート抵抗を大きくして電流変化を抑え、OFF時は損失を減らすためにゲート抵抗を小さくします。

図8 ハーフブリッジ・インバータ回路 図8 ハーフブリッジ・インバータ回路
図9 ハーフブリッジ・インバータのPWM出力方法 図9 ハーフブリッジ・インバータのPWM出力方法
図10(a) トランジスタON時の電流の流れ 図10(a) トランジスタON時の電流の流れ
図10(b) トランジスタOFF時の電流の流れ 図10(b) トランジスタOFF時の電流の流れ
図11 インバータに使用されるゲート回路の例 図11 インバータに使用されるゲート回路の例

インバータが故障したときの直送回路

 オンラインUPSでは、常に商用電源からPFCとDC-ACインバータを介して交流を出力しています。そのため、PFCまたはインバータが故障すると出力は停止してしまい、負荷に電力が供給できなくなり、本来の目的が達成できなくなってしまいます。

 そこで、PFCまたはインバータが故障して出力できないときは、商用入力を直接出力して負荷の装置が停止しないようにします。この回路のことを直送(バイパス)回路といいます。直送回路は、図12のように、常にインバータの出力電圧を監視して、出力電圧の異常な低下または上昇が発生したときは、ただちにインバータを停止して商用入力に切り換えます。

 この切り換え回路は、小容量のUPSでは多くの場合図12のようにリレーを使います。UPSの容量が大きくなるとリレーの動作が遅くなるため、図13に示すサイリスタやトライアックのような半導体を使用したスイッチが使用されます。出力電圧が正常範囲か否かを判断するためには若干の時間が必要です。したがって、故障時はわずかですが瞬断が発生します。その時間は一般的に5msecから10msec程度であり、一般的なスイッチング電源を内蔵した負荷であれば問題ない範囲といえます。

 次に、大きな突入電流が流れる負荷が接続された場合を考えます。大きな突入電流が流れたときは、出力電圧を垂下させて回路を保護します。この際、出力電圧が垂下すると他の正常動作している負荷が安定に動作できなくなる恐れが生じます。このような場合、不具合動作を避けるため、やはり出力を一旦直送回路に切り換えます。直送回路はリレーまたは半導体のスイッチで構成しますが、過負荷時の電流にも耐える容量設計を行うことで直送に切り換えが可能になります。切り替え素子を半導体スイッチにすることにより、無瞬断で直送切り換えが実現できます。突入電流が流れ終わった後、直送運転からインバータ運転に戻すことで、何事もなかったかのようにUPSは運転を続けることができます。

図12 リレーを使用した直送切り換え回路 図12 リレーを使用した直送切り換え回路
図13 サイリスタを使用した直送切り換え回路 図13 サイリスタを使用した直送切り換え回路
小型UPSのまとめ

 小型UPSにはオフラインUPSとオンラインUPSがあることを説明しました。オフラインUPSは安価ですが、機能は限定されています。オンラインUPSは高価ですが、機能が充実しており劣悪な電源環境でも安定してサーバーなどの負荷機器を動作できます。このように、用途によりオフラインUPSとオンラインUPS使い分ける必要があります。



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