回路中のある部分に流れる電流値を測定したい場合は、配線をいったん切断し、シャント抵抗を挿入する。その上で、再び回路を動作させ、シャント抵抗の両端の電圧を測定するだろう。問題はこの手法が使えないときだ。オシロスコープを使って電圧を測定する場合、プローブの一端はグラウンドに接続するので、測定の対象となる回路からオシロスコープを電気的に絶縁しなければならない。
回路の設計や故障解析を行っている際に、回路中のある部分に流れる電流値を測定したいケースがよくある。そのような場合、通常は次のような手順で電流の測定を行うことになる。まず、配線をいったん切断し、その部分にシャント抵抗を挿入(追加)する。その上で、再び回路を動作させる。その状態でシャント抵抗の両端の電圧を測定し、その電圧を基に電流を算出するという手順である。しかし、オシロスコープを使用して電圧を測定する場合のように、この方法が使えないケースもある。オシロスコープのプローブの一端はグラウンドに接続して使用するので、測定の対象とする回路(この場合はシャント抵抗)からオシロスコープを電気的に絶縁しなければならないのだ。
図1に示した回路は、電流に比例した電圧を発生し、なおかつオシロスコープを電圧の測定ポイントと電気的に絶縁できるようにするものである。この回路では、IC1の入力側と出力側の間を最大890VPEAKまで絶縁することができる。この回路の中心となるIC1は、入力電圧を8倍に増幅するアイソレーションアンプ「HCPL7800」である。
表1は、スイッチS1〜S4と測定レンジの関係を表している。併せて、最大入力電流の値も示した。図1の回路では、測定する電流の範囲に応じてスイッチS1〜S4を切り替える。それにより、R1/R2、R3/R4、R5/R6、R7/R8の各直列抵抗列のうちどれを回路に挿入するかが決まるということだ。
例えば、スイッチS4を閉じた場合、100μAの電流測定レンジを選択することができる。測定の対象となる未知の電流IINは、R7とR8(それぞれ値は1kΩと250Ω)の直列抵抗を流れる。従って、IC1への入力電圧はIIN×1.25kΩとなる。例えば、入力電流IINが100μAであったとすると、IC1の入力電圧は125mVになる。IC1は、電圧利得が8なので125mV×8=1Vを出力する。IC2を使用して構成している回路は利得が1の差動アンプであり、これを介して、オシロスコープを接続するためのBNCコネクタに1Vが出力される。なお、良好な測定結果を得るためには、IC1の入力電圧を±200mV以下に抑える必要がある。
誤差を最小限に抑えるために、R1〜R8の抵抗としては、許容誤差が1%以下のものを選ぶべきだ。なお、IC1の利得誤差は3%である。従って、許容誤差が1%の抵抗を使用した場合、IC1の3%の誤差が、回路の総合的な誤差において支配的な要素となる。
この回路では、2つの独立した電源を使用する。IC1の入力部分に必要な5Vは、9Vの電池を基にIC3を用いて生成する(図の中段)。IC1の出力側の電源であるV+、IC2の電源であるV+とV−は、9V〜11Vの安定化電源から得ている(図のいちばん下)。IC5は、IC2の電源電圧V+/V−の中間に当たるグラウンド電位を供給している。このように正負2電源でIC2を動作させることによって、正方向と負方向の両方の電流を測定できるようにしている。
なお、スイッチS5を閉じたときに、電池の電圧が5V生成用の回路IC3の動作に必要な7V以上であれば、LED1が約3秒間点灯する。一方、V+/V−用の回路では、9V〜11Vの電源が正しく印加されていたら、LED2が点灯するようにしてある。
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