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「ソフトウエア無線でITSのグローバル対応を実現」――NXP社の車車間/路車間通信プラットフォーム

» 2011年06月20日 00時00分 公開
[EDN Japan]

 NXPセミコンダクターズジャパンは2011年6月、東京都内で記者会見を開き、車載情報機器向けの製品戦略について説明した。

 同社親会社のオランダNXP Semiconductors社は、車載機器向けの製品として、イモビライザ/キーレスエントリ向けIC、カーエンターテインメントシステム向けのDSPやチューナIC、CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)などの車載LANに対応するトランシーバIC、ABS(アンチロックブレーキシステム)などに用いられる磁気抵抗センサーなどを展開している。2010年の車載半導体市場における世界シェアは6.9%で、第5位につけている。NXPセミコンダクターズジャパンでオートモーティブ事業部の事業部長を務める濱田裕之氏(写真1)は、「日本市場における事業展開は、イモビライザ/パッシブキーレスエントリ向けICやトランシーバICを中心として好調に推移している。日本市場のシェアの順位で見ると、2009年の9位に対して、2010年は5位に躍進することができた」と語る。


写真1 NXPセミコンダクターズジャパンの濱田裕之氏 写真1 NXPセミコンダクターズジャパンの濱田裕之氏 

 会見では、ITS(高度道路交通システム)において、車車間や路車間の通信に用いる「C2X(Car to X)プラットフォーム」の開発状況に関する説明があった。このC2Xプラットフォームの最大の特徴は、使用する周波数帯や変調方式が異なる各国/地域のITSの通信方式に対して、1つのプラットフォームで対応できる点にある。現在、欧米のITSは、使用周波数帯は5.9GHzで、IEEE 802.11pをベースとした変調方式としてOFDM(直交周波数分割多重方式)の通信規格を用いることが決まっている。一方、日本のITSは、使用周波数帯として720MHzと5.8GHzの2種類があり、通信規格もIEEE 802.11pをベースとしたものや変調方式がQPSK(四位相偏移変調)のDSRC(専用狭域通信)が混在している状況だ。

 C2Xプラットフォームは、異なる使用周波数帯への対応をフロントエンドIC「WISPA」で、異なる通信規格への対応をベースバンド処理IC「MARS」で行う。MARSの開発は、NXP社が独自に開発したソフトウエア無線(SDR)技術を活用することにより実現した。また、NXP社は、MARSや「ARM11」コアを採用したマイコンなどを搭載する「MK3」という評価ボードを、オランダのITS研究プロジェクトであるSPITSの走行試験向けに提供している。ただし、MK3は、フロントエンドICとして他社製のRFトランシーバを用いている。2012年1月〜3月期には、WISPAとMARSを搭載した評価ボード「MK4」の開発を完了する予定だ。

 また、イモビライザ/キーレスエントリ向けの新製品として、NFC(近距離無線通信)技術を組み込んだIC「NCF2970」が紹介された。

 NCF2970は、LF帯(125kHz)を用いるイモビライザの機能や、UHF帯(315MHz〜868MHz)を用いるキーレスエントリの機能に加えて、NFCを用いてICカードや携帯電話機と通信を行う機能も備えている。これらの機能を活用すれば、自動車の鍵にNCF2970を組み込むことで、「カーファインダ」と呼ばれるシステムを構築することができる。

 カーファインダとは、北米などで見られる広大な駐車場において、どの場所に自車を駐車したかが即座にわかるようになるシステムのことである。同システムでは、自車のエンジンを停止させて駐車する際に、イモビライザの機能を用いて、自車の位置情報をカーナビゲーションシステムから自動車の鍵に送信する。次に、駐車した自車を再度利用するために自車がどこにあるかを知りたいときには、NFCに対応する携帯電話機やスマートホンなどの携帯機器に自動車の鍵をかざす。このことにより、自動車の鍵に格納された自車の位置情報が携帯機器の画面上に表示されるので、苦労せずに自車を探し当てることが可能になるわけだ。

 NXPセミコンダクターズジャパンは、「カーファインダ以外にも、燃料の残量やメンテナンスサービスの履歴の確認など、従来のイモビライザ/キーレスエントリでは実現できなかった機能を実現できるようになる」としている。

(朴 尚洙)

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