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Gbps時代を迎える車載情報系ネットワーク(4/7 ページ)

» 2011年07月01日 00時04分 公開
[本誌編集部 取材班,Automotive Electronics]

複数社競合のSERDES、BMW主導のイーサーネット

 ここからは、SERDES技術やイーサーネットを用いた車載情報系ネットワーク向け製品の開発状況を紹介する。

 まず、SERDES技術については、米National Semiconductor社、ソニー、米Maxim Integrated Products社、ロームなどが車載情報機器向けのSERDES ICを市場投入する方針を明らかにしている。さらには、米Xilinx社と富士通セミコンダクターが、ドイツInova Semiconductor社が開発したSERDESのIP(Intellectual Property)を搭載したFPGAやSoC(System on Chip)を車載情報機器向けに製品化するなど、し烈な競争が始まっている。

 欧州市場では、これらの製品を車載情報系ネットワークに用いた量産車が2011年末にも登場する見込みだ。そして、2013年〜2014年ごろには、同市場においてBlu-rayディスクの再生が可能な車載情報機器の搭載が本格化する。このことにより、車載情報機器向けSERDES ICの市場が急速に拡大すると予想されている。

車載機器への最適化が鍵

 車載情報機器向けのSERDES IC市場で、高い採用実績を持つのがNational Semiconductor社とソニーである。

 National Semiconductor社は、欧州メーカーの自動車に搭載されている純正カーナビを中心に、同社が開発したSERDES規格であるFPD-Link?に準拠したICを出荷している。2006年の発売開始から2011年5月までの間に、累計で1200万個(シリアライザICとデシリアライザICを1組とすると600万セット)以上を出荷している。

 同社は、「国内のカーナビ市場では、液晶ディスプレイと本体装置がほぼ直結した状態になっている市販タイプの製品が主流だ。こういった製品の場合、液晶ディスプレイと本体装置の間の接続をパラレル配線で行うことが多い。一方、欧州メーカーの自動車の純正カーナビは、外形デザインを重視していることもあって、液晶ディスプレイとカーナビの本体装置は数10cm離れている。これだけの距離をパラレル配線で接続すると、液晶ディスプレイに出力する映像の品質が低下してしまう。そこで、採用されたのが、当社が開発したFPD-Link?に準拠したSERDES ICだ。累計出荷の1200万個のうち、2010年以降の出荷が900万個となっており、需要は急速に拡大している」と見ている。

 National Semiconductor社は、FPD-Link?よりも高い伝送速度を持つ次世代規格として、2010年6月にFPD-Link ?を発表した。前世代のFPD-Link?は、最大伝送速度が1.6Gbpsで、映像信号をシリアル化して伝送するツイストペアケーブルと、制御用信号を伝送するケーブルのそれぞれを必要としていた。それに対し、FPD-Link?では、最大伝送速度を2.975Gbpsまで高めるとともに、映像信号と制御信号を含めて1対のツイストペアケーブルで伝送できるようになった。また、FPD-Link?と同様に、10m以上のケーブル長でも良好な通信が可能なノイズ耐性を備えている。同社は、「競合他社もこれらと同程度の仕様を持つSERDES規格を発表している。しかし、FPD-Link?には、高い採用実績を持つFPD-Link?を基に、ESD(静電気放電)やノイズへの対策をはじめ、自動車メーカーと共同で策定した車載機器で必要となる細かな仕様も盛り込まれている。この車載機器への最適化という点で、FPD-Link?は競合他社の規格よりも先んじている」と強調する。

 FPD-Link?は、2.975Gbpsという伝送速度を備えることから、720pのフルHD映像データを伝送することができる。ただし、こういったHDコンテンツの伝送を行う機器には、不正利用を防ぐためのコンテンツ保護機能の搭載も求められる。そこで、National Semiconductor社は、FPD-Link?に準拠するとともに、コンテンツ保護機能であるHDCP(High-Bandwidth Digital Content Protection)を内蔵したICを市場投入している。「コンテンツ保護機能用のICを外付けにしているMOSTや1394 Automotiveと比べて、実装面積やコストの面で有利になる」(同社)という。

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