コンデンサは、2枚の電極板が向かい合った構造になっています。絶縁体(空気や誘電体)によって隔てられているので、コンデンサは直流を遮断するのは理解できますが、それではなぜ交流を通すことができるのでしょうか?
電荷を蓄えるという機能とともに、コンデンサには「直流電流を遮断し、交流電流を通す」という重要な機能があります。コンデンサは、2枚の電極板が向かい合った構造になっています。絶縁体(空気や誘電体)によって隔てられているので、コンデンサは直流を遮断するのは理解できますが、それではなぜ交流を通すことができるのでしょうか?
交流とは、電流の向きが交互に切り替わる電流です。コンデンサは交流を通すといっても、絶縁体を貫いて電子の流れができるわけではありません。これをイメージするために、図1のような水流モデルで考えてみます。
弾力性ある膜によって仕切られたパイプがあり、ポンプによって左右交互に水圧が送られたとします。水圧によって膜は左右交互に伸縮しますが、左右の水は混じり合いません。しかし、膜の伸縮によって左右交互に水流が生まれているのと同等になります。この膜の部分がコンデンサ、膜で仕切られた左右の水流は交流が流れる導線部に相当します。
同じことをもう少し詳しく説明します。2枚の電極板に挟まれた誘電体は、直流電圧によって電気分極(誘電分極)して電荷を蓄えます。交流は電流の向きが切り替わるので、誘電分極の向きもそれに応じて交互に切り替わります。
先のモデルで説明したように、これは誘電体の中を交流電流が流れるのと同等と見なすことができます。この電流のことを、変位電流といいます。
ついでにいえば、この変位電流という考え方からマクスウェルの電磁理論が構築され、電磁波の存在が予言されることになりました。コンデンサの電極板の間で起きる電流変化は磁界を生み、その磁界の変化は電界を生み……と、磁界と電界は鎖のように連なりながら広がっていきます。これが電磁波です。
コンデンサの2枚の電極を開いても、同じように電磁波が放出されます。これがテレビ電波などの受信に使われるダイポールアンテナの原理です。コンデンサは電波の送信するアンテナにもなり、受信するアンテナにもなるわけです。
直流を通さず交流を通すというコンデンサの機能が、電子機器で最も端的に利用されているのはカップリングコンデンサです。電子回路に送られる信号というのは微弱な交流電流なので、一般に電子機器では直流電圧に交流信号を重ね合わせて処理します。これをバイアス電圧といいます。いわば微弱な交流信号に“下駄を履かせる”ことで処理しやすくしているわけです。
しかし、トランジスタやICなどの動作条件はそれぞれ異なるので、いったん履かせた下駄を脱がせて、また別の下駄に履かせる必要があります。この役割を担うのがカップリングコンデンサです。
例えば、図3のような多段の増幅回路では、おのおのの回路の入力側にカップリングコンデンサを取り付けます。これによって直流は遮断され、信号である交流電流だけを通過させることができます。カップリングとは回路間を結合するという意味です。
紛らわしい用語として、前回もご紹介したデカップリングコンデンサというのがあります。こちらは電圧変動などが電源ラインを伝播しないように、回路間の干渉を抑えるために使われます。
こうしたノイズは交流成分なので、コンデンサによってアース側に流して電源電圧の安定を保ちます。つまりカップリングコンデンサは交流(信号)を受け入れるために使われ、デカップリングコンデンサは交流(ノイズ)を除去する目的で使われます。
不要な交流をアース側にパイパスして逃がすという意味から、デカップリングコンデンサはパスコン(バイパスコンデンサ)とも呼ばれます。
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