今回はマルチタッチの仕組みを解説します。タッチパネルの代表的な方式に抵抗膜方式、静電容量方式があるのはよく知られていることですが、抵抗膜方式は、構造上マルチタッチには向きません。それはなぜなのでしょうか。
タッチパネルの種類は大きく分けて5つあります。主に携帯電話やPDAやカーナビなどの小・中型機器に搭載されている抵抗膜方式と静電容量方式。専用ペンを使用するタブレットPC向けの電磁誘導方式。そして、POSやATMなどの業務機器やFA機器など産業用途の大型機器に採用されている超音波表面弾性波方式と赤外線走査方式です。今回は抵抗膜方式と静電容量方式について解説します。
「iPhone」や競合製品により、その利便性に対するユーザーの認知度が高まったこともあって、タッチパネルを備えた機器がますます普及しつつある。タッチパネルにはさまざまな方式があるが、それぞれに長所と短所が存在する……記事全文はこちらから
タッチパネルにもいろいろな種類があるんだねぇ。
そうだね。あと、小型機器向けのタッチパネルっていうと、iPhoneのようにマルチタッチ(2点以上の多点検出)ができる静電容量方式(注)のものを思い浮かべるかもしれないけど、実はタッチパネルの方式別搭載シェア(2009年5月現在)を見ると、全体の約90%は抵抗膜方式が占めているんだよ。
(注)厳密にいうと、マルチタッチができるのは静電容量方式の中の投影型(Project Capacitive)のものになります。
へぇ〜。そういえばムサシくんのWindows mobileはペンを使った文字入力ができるけど、マルチタッチはできなかったよね。どうして?
抵抗膜方式だからね。構造上、マルチタッチは難しいんだ。この辺も含めて説明するよ。
抵抗膜方式のタッチパネルは、指やペンなどで押された場所の位置座標を電圧で読み取ることで文字入力やスイッチの機能を実現しています。構造は2枚のフィルム(素材はプラスチックまたはガラス)で透明導電膜(ITO)を挟むというシンプルなもので、“コストが低く製造しやすい”“位置検出がしやすい”といった利点があります。手袋をした状態でも認識され、漢字を含む文字入力もできるなど、幅広い用途に対応します。
位置検出の仕組み
上下に配置したフィルムとガラスには、それぞれ、横方向と上下方向に電極が印刷されています。フィルム側には、右側と左側に電極があり、その間に電圧をかけると横方向に、電圧勾配ができます。ガラス側の電極からその電圧を読み取ることで横方向の位置が分かります。ガラスには、上側と下側に電極があり、その間に電圧をかけると縦方向に電圧勾配ができ、フィルム側から電圧を読み取ります。これらを1秒間に200回程度繰り返すことにより、位置を特定します。ただしこの方式は、サイズが大きくなるほどフィルムとガラスのサイズ変化の差が増大する(注)ため、2〜8インチほどの小型機器向けを主流に製造されています(最近では、20インチ以上のものも登場してきている)。
(注)抵抗膜方式の素材はプラスチックとガラスの組み合わせだが、ガラスが湿度や温度の寸法変化が小さいのに対し、プラスチックは温度と湿度変化が大きいためサイズが大きくなればなるほど、差異が生じてしまい、たるみなどができてしまう。
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