サイプレス セミコンダクタ(Cypress Semiconductor)は、プログラマブルSoC「PSoC」に代表されるミックスドシグナルプログラマブル技術やメモリ技術をベースに、市場/顧客のニーズに合わせた商品をいち早く提供する方針だ。2015年もUSB Power Delivery対応のUSB Type-CコントローラやBluetooth Low Energy、不揮発RAM、タッチコントローラなど成長著しい自動車/IoT市場から生まれているさまざまなニーズに対応した製品を次々と投入していく。
市場、顧客のニーズに合わせた商品をいち早く提供する――。
サイプレス セミコンダクタ(Cypress Semiconductor)は1982年に創業した当初、SRAMなどのメモリ事業を主力に成長してきた。そして、1990年代からUSB関連デバイス事業、2000年代からプログラマブルシステムオンチップ「PSoC」/タッチコントローラ事業を立ち上げ、主力事業を次々に加えてきた珍しい半導体メーカーだ。「事業内容が大きく変わったのは、市場、顧客のニーズに対応した結果であり、競争の激しいこの業界で、サイプレスが存続、成長してきた理由だ」と日本サイプレス社長の吉澤仁氏は振り返る。
サイプレスが事業構造を大きく変化させ成長を続けてきた背景には、“市場、顧客のニーズに合わせた商品を提供する”という経営理念の下に培った“機敏にニーズを取り込む技術”がある。PSoCに代表されるミックスドシグナル プログラマブル技術もその1つだ。
PSoCは、ARM Cortex-Mシリーズなどの汎用CPUコアを搭載したマイコンながら、回路構成をプログラミングできるサイプレス独自のデバイスだ。デジタル回路だけでなく、A-D/D-Aコンバータやアンプなどアナログ回路もプログラミングできるミックスドシグナル プログラマブル技術を駆使している。
サイプレスでは、ミックスドシグナル プログラマブル技術を、PSoCとして提供するだけでなく、さまざまな製品の開発にも適用している。静電容量式ボタンなど向けのタッチセンシングコントローラ「CapSense」や静電容量式タッチパネルコントローラ「TrueTouch」もミックスドシグナル プログラマブル技術が生かされている。
タッチコントローラは、さまざまな種類、形状、特性のタッチパネルに対応することはもちろん、感度など顧客ごとに異なる要件を盛り込む必要がある。そうした細かな要件に対し、CapSenseやTrueTouchは、ミックスドシグナル プログラマブル技術によりソフトウェアの変更だけで対応できる。カスタムロジックを搭載したASICを起こすよりも、大幅に低コスト、短期間で好みのタッチインタフェースを実現できるソリューションとして多くの支持を集めた。
CapSenseは、白モノ家電を中心に、機械式ボタンからデザイン性に優れ、故障率の低い静電容量式ボタンへの置き換えに貢献し、TrueTouchは多くのスマートフォンやタブレット端末に搭載される。さらにTrueTouchは、画面から浮かせた指や手袋をはめた指でも操作可能な「ホバー/グローブ」や鋭いペン先などでも反応する「スタイラス」などの新機能をいち早く取り入れてきた他、安価な電源から生じるノイズなどでも誤作動をしない耐ノイズ性を高めるなど進化を続けている。
こうした顧客ニーズを素早く取り込む“技術”と“理念”は、今後も変えることなく貫いていく。その中で、2015年は「新たなニーズが次々と生まれている自動車/IoT市場に向けた製品提供を強化する」(吉澤氏)とする。
自動車市場向けには、車載グレードのTrueTouchのラインアップを強化し近年、カーナビゲーションシステムやグラフィック表示化の進むセンターコンソールディスプレイなどで採用を急速に拡大しているという。
「さまざまなノイズが存在する車載向けに、TrueTouchの特徴であるノイズ耐性をさらに高めて提供している。2015年以降はTrueTouch第4世代品の車載グレード品の展開を図り、採用数をさらに伸ばしていく」(吉澤氏)との方針だ。
さらに、車載向けでは、メモリの採用実績も伸びている。特にFRAMが好調だ。
日本サイプレス営業本部長の鈴木誠氏は、「自動運転、ADAS(先進運転支援システム)の流れの中で、走行に関する情報の取得、記録が必要になっている。例えば、タコグラフやブレーキの操作状況をリアルタイムで記録する用途などであり、こうした用途は高速な書き換え、無制限の書き換え回数が必須であり、不揮発性RAMであるFRAMへの需要が拡大している」と分析する。
サイプレスでは、2012年にFRAM大手のラムトロン(Ramtron)を買収して以来、FRAM製品の強化を続けてきた。1ミリ秒間隔での書き換えを行っても3000年以上の寿命を実現する1014回というほぼ無制限の書き換え回数を実現するFRAMで、2Mビット、4Mビットといった大容量品を投入するなどし、走行情報取得メモリとしてE2PROMやNOR型フラッシュを代替している。
「消費電力も、サイプレスのFRAMは書き換え/読み出し時3mAと、他のメモリに比べ格段に低く、大きな優位性を持つ。書き換え頻度が多い走行記録用メモリを実現する唯一ともいえるソリューションとして、積極的に提案する」(鈴木氏)。
自動車同様、2015年以降の重点アプリケーションとして挙げるIoT向けでは、「IoTのあらゆるインタフェースの部分に特に注力する」(吉澤氏)という。
1つは、IoTと人とのインタフェース部分に対し、CapSenseやTrueTouchを展開。さらに、「自然界とのインタフェースといえる、センサーからの信号を処理するアナログフロントエンド(AFE)には、アナログリッチなPSoCを最適なソリューションとして提案する。AFEとマイコンを1チップで実現でき、IoT機器の小型化、低コスト化、低消費電力化に貢献する」とする。
さらに、サイプレスでは、主にIoTに向けて、PSoCに、IoTの標準無線インタフェースとなりつつあるBluetooth Low Energy(BLE)無線機能を集積した「PSoC 4 BLE」を発売した。
PSoC 4 BLEは、ARM Cortex-M0コアやプログラマブルなデジタル/アナログブロック、「CapSense」などの機能ブロックを集積。さらに、PSoC 4 BLE向けに無償でBLEプロトコルスタック/プロファイル(BLE Component)が提供され、1チップで自然界、人、そしてBLEと、IoTに求められるインタフェースをカバーするデバイス。さらにサイプレスでは、アナログブロック部で、BLEのRF回路を構成し、外付けRFチップなしにBLE対応を実現するプログラマブルラジオオンチップ「PRoC BLE」も製品化している。
PSoC 4 BLE、PRoC BLEともにプログラマブルなバランを内部に搭載し、外付け部品2個だけでアンテナを構成可能。統合設計環境(IDE)「PSoC Creator」を利用して設計すれば、「BLE Componentをドラッグアンドドロップするだけで、BLE無線通信に対応するシステム設計を容易に行える。無線に関する専門知識がなくても、従来の“マイコン+BLEモジュール”という構成を、1チップ化できる。スペース面で制約の多いウェアラブル機器などに適したソリューションだ」(鈴木氏)とする。
さらにサイプレスは2015年、USBで100Wまでの大電力給電を可能にする「USB Power Delivery(USB PD)」対応製品を順次投入していく。「USB PDは、これまで以上の急速充電が行えるようになるだけでなく、多くの機器で専用の給電コネクタを廃しUSBコネクタ1つに置き換えられるようになる。USB PDの登場でUSBは、IoT機器の有線インタフェースとして、欠かせない存在になる」(鈴木氏)と期待を寄せる。
既にサイプレスでは、USB PD対応のUSB Type-C PortコントローラICのサンプル出荷を開始し、2015年3月には量産出荷を行う予定だ。
「USB PD対応のUSB Type-C PortコントローラICも、サイプレス独自のミックスドシグナル プログラマブル技術を駆使することで、業界に先駆け製品化を実現できた事例の1つだ。IoT市場は、携帯電話機/スマートフォン市場の10倍以上の市場規模が期待される巨大な市場であり、多様なニーズが生まれてくるだろう。今後も独自のミックスドシグナル プログラマブル技術などを生かし、新たなニーズにいち早く対応した革新的な製品を提供し続けていく」(吉澤氏)としている。
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提供:日本サイプレス株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2015年3月9日
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