マイコンユーザーのさまざまな疑問に対し、マイコンメーカーのエンジニアがお答えしていく本連載。今回は、初級者の方からよく質問される「ESDとEOSの違いと対策法」です。
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素朴な疑問から技術トラブルなどマイコンユーザーのあらゆる悩みに対し、マイコンメーカーのエンジニアが回答していく連載「Q&Aで学ぶマイコン講座」。
今回は、初級者から多く寄せられる質問です。
マイコンの破壊モードで「ESD」と「EOS」というよく似た言葉を見かけますが、この2つはどのような違いがあるのでしょうか? 破壊のメカニズムの違いやそれぞれの対策方法を教えてください。
ESDはElectro Static Dischargeの略で、「静電気放電」のことです。EOSはElectrical Over Stressの略で、「過電圧・過電流ストレス」のことです。
人体や製造装置に帯電した静電気が、マイコンに放電する現象をESDと呼び、それが原因でマイコンが破壊されたり、劣化したりすることをESD(静電)破壊・劣化と呼んでいます。一方、ラッチアップ*1)や、電源電圧の印加手順間違いなどで、マイコン内部にスペック以上の高電圧が印加されたり、大電流が流れたりすることをEOSと呼んでいます。もちろんEOSでもマイコンは破損、劣化します。
*1)ラッチアップについては、「Q&Aで学ぶマイコン講座(4):ラッチアップって何?」を参照してください。
マイコンにはESDやEOSの耐性を強くするいろいろな仕組みが内蔵されていますが、それでも限界があります。マイコンを取り扱う人や製造装置、さらにはプリント基板上で、ESDやEOSの対策を行う必要があります。具体的には、人体アース(リストバンドアース、静電靴など)や製造装置が帯電しない工夫(導電性のゴムや塗料の使用など)、プリント基板上の対策としては、正常な電源立ち上げ手順の回路設計、チョークコイルやコンデンサーなどを使ったサージ除去回路の使用などがあります。図1にESDとEOSの発生モデル例を、表1にESDとEOSの破壊モードを示します。
要因 | 破損モード | 説明 | |
---|---|---|---|
ESD | MOS構造の破壊・劣化 | 保護ダイオードのPN接合破壊・劣化 | 高電圧により保護ダイオードのPN接合部が破壊・劣化される |
絶縁破壊・劣化 | 酸化膜部の破壊・劣化 | 絶縁部が破壊・劣化され、配線層などの導電部分がGND部と短絡する | |
EOS | 配線部の溶断 | ボンディングワイヤ | ボンディングワイヤは物理的に大きな配線だが、大電流や高電圧で破損・劣化される |
メタル層 | 大電流で溶断、高電圧で断線される | ||
ビア層 | 大電流で溶断される | ||
MOS構造の破損・劣化 | PN接合の破損・劣化 | PN接合部に流れる大電流や、印加される高電圧で接合部が破損・劣化される | |
ホットキャリアによる、しきい値の変化 | 高電界部に大電流が流れると、ホットキャリアが酸化膜に入り込み、MOSの閾値が変わり、MOSとしての動作ができなくなる | ||
電流の熱による酸化膜部の破損・劣化 | 直接電流で破損・劣化するのではなく、電流によって発生した熱で破損・劣化が発生する | ||
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