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ESDとEOSの違いと対策法Q&Aで学ぶマイコン講座(38)(1/3 ページ)

マイコンユーザーのさまざまな疑問に対し、マイコンメーカーのエンジニアがお答えしていく本連載。今回は、初級者の方からよく質問される「ESDとEOSの違いと対策法」です。

» 2017年08月31日 11時00分 公開

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 素朴な疑問から技術トラブルなどマイコンユーザーのあらゆる悩みに対し、マイコンメーカーのエンジニアが回答していく連載「Q&Aで学ぶマイコン講座」。

 今回は、初級者から多く寄せられる質問です。

 マイコンの破壊モードで「ESD」と「EOS」というよく似た言葉を見かけますが、この2つはどのような違いがあるのでしょうか? 破壊のメカニズムの違いやそれぞれの対策方法を教えてください。

 ESDはElectro Static Dischargeの略で、「静電気放電」のことです。EOSはElectrical Over Stressの略で、「過電圧・過電流ストレス」のことです。

 人体や製造装置に帯電した静電気が、マイコンに放電する現象をESDと呼び、それが原因でマイコンが破壊されたり、劣化したりすることをESD(静電)破壊・劣化と呼んでいます。一方、ラッチアップ*1)や、電源電圧の印加手順間違いなどで、マイコン内部にスペック以上の高電圧が印加されたり、大電流が流れたりすることをEOSと呼んでいます。もちろんEOSでもマイコンは破損、劣化します。

*1)ラッチアップについては、「Q&Aで学ぶマイコン講座(4):ラッチアップって何?」を参照してください。

 マイコンにはESDやEOSの耐性を強くするいろいろな仕組みが内蔵されていますが、それでも限界があります。マイコンを取り扱う人や製造装置、さらにはプリント基板上で、ESDやEOSの対策を行う必要があります。具体的には、人体アース(リストバンドアース、静電靴など)や製造装置が帯電しない工夫(導電性のゴムや塗料の使用など)、プリント基板上の対策としては、正常な電源立ち上げ手順の回路設計、チョークコイルやコンデンサーなどを使ったサージ除去回路の使用などがあります。図1にESDとEOSの発生モデル例を、表1にESDとEOSの破壊モードを示します。

図1:ESDとEOSの発生モデル例 (クリックで拡大)
表1:ESDとEOSの破壊モード
要因 破損モード 説明
ESD MOS構造の破壊・劣化 保護ダイオードのPN接合破壊・劣化 高電圧により保護ダイオードのPN接合部が破壊・劣化される
絶縁破壊・劣化 酸化膜部の破壊・劣化 絶縁部が破壊・劣化され、配線層などの導電部分がGND部と短絡する
EOS 配線部の溶断 ボンディングワイヤ ボンディングワイヤは物理的に大きな配線だが、大電流や高電圧で破損・劣化される
メタル層 大電流で溶断、高電圧で断線される
ビア層 大電流で溶断される
MOS構造の破損・劣化 PN接合の破損・劣化 PN接合部に流れる大電流や、印加される高電圧で接合部が破損・劣化される
ホットキャリアによる、しきい値の変化 高電界部に大電流が流れると、ホットキャリアが酸化膜に入り込み、MOSの閾値が変わり、MOSとしての動作ができなくなる
電流の熱による酸化膜部の破損・劣化 直接電流で破損・劣化するのではなく、電流によって発生した熱で破損・劣化が発生する
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