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課題は山積み、カーエレクトロニクス設計に挑む(1/4 ページ)

自動車業界では洗練された機械設計ツールが使用されているが、それに加えカーエレクトロニクスの設計を自動化することで大きな成功を得られる可能性がある。

» 2006年04月01日 00時00分 公開
[Michael Santarini,EDN]

 最近の新車に乗ると、5年前と比べてずっと多くのエレクトロニクス機器が使われていることに気付く。しかし、車に搭載されているエレクトロニクス機器は、GPSや衛星ラジオ、DVD/ビデオスクリーン、自動エアコン、燃費監視機能、AM/FMラジオ、CDプレーヤ、パワードア、パワーウィンドウ、パワーミラーだけではない。

 10年前にはアクチュエータが機械システムや油圧システムを駆動していたが、今ではボンネットやボディの中などほぼすべてのシステムに機械システムや油圧システムを増強する、あるいはこれらに置き換わる電子センサーや電子システムが搭載されている。これらのシステムの多くは、ブレーキやエアバッグ、ステアリングを制御する重要な役割を担うECU(電子制御装置)である。これらのシステムには100%の信頼性が求められ、価格はコンスーマ製品レベルが要求されるものの、軍事用途や航空用途に近い高い耐環境性が必要とされる。

 今日の自動車設計にかかるコストの約40%が電気システムとソフトウエアに関わるものである。車におけるエレクトロニクス設計の自動化はまだまだ課題がたくさんある。

 米The Mathworks社で自動車産業マーケティンググループのディレクタを務め、以前にある自動車メーカーのエレクトロニクス設計部門で働いていたJon Friedman氏は、「“CAD”という革新技術のおかげで、ボディ専門の設計者であっても自動車のすべての機械部品を設計できるようになったが、エレクトロニクス部門では、いまだに“ペンと紙”が使われている、と冗談交じりによく言ったものだ」と語る。

 しかし、エレクトロニクス技術をふんだんに取り入れた最新の自動車を求める消費者が増えており、またより信頼性の高い自動車をつくる必要性に迫られている現状を受け、最近まで機械系の技術者と設計ソフトウエアに重点を置いていた自動車メーカーでは、業界を再編成するのにおおわらわとなっている。この新しい時代を迎え、自動車メーカーはエレクトロニクスの知識が豊富な人員を増やし、自動車分野に特有のエレクトロニクス設計ができるサプライヤ支援体制を整える必要がでてきた。

 2005年度のエレクトロニクス業界予測を取り上げたReed Business Information社の「Movers and Shakers」では、米General Motors(GM)社研究開発グループのマネジャーであるAlan Taub氏が、業界で進められつつある「車両のエレクトロニクス化」に伴い、GM社が直面している課題について詳述している*1)。この記事の中で、Taub氏は快適で安全な運転を可能にするエレクトロニクスとして、車間距離制御、車と乗員の安全を監視するテレマティクス「Onstar」、さらには事故を予測して車を自動運転する事故回避システムにまで言及している。

 業界の専門家は、時間が経過するにつれて磨耗する機械システムよりも安くて安全な代替手段としてエレクトロニクスを捉えている。油圧システムや機械システムから、より信頼性の高いECUに焦点を移すことで、より安全で故障が少なく、リコールも少ない車をつくることができる。そして、それが結果的に会社と設計チェーンにより大きな利益をもたらすことを自動車メーカーは期待している。

 自動車メーカーがハイブリッドカーの開発に取り組み、水素や炭素といった代替燃料の発掘に力を入れるようになれば、エレクトロニクスが今まで以上に大きな役割を果たすことは間違いない。しかし、こうした先端システムを取り入れて互いにつなぎ合わせるとなると、自動車エレクトロニクスの設計チェーン全体に様々な問題が起こることが予想される。


脚注

※1…www.reed-electronics.com/moversandshakers/article/CA6277508.


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