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COMSOL社の連成解析ソフトウエア、解析時間の短縮とSPICEとの連携が可能に

» 2008年02月01日 00時00分 公開
[EDN]

 米COMSOL社は2007年12月、連成解析ソフトウエア「COMSOL Multiphysics 3.4」の国内販売を開始した。連成解析とは、2つ以上の異なる領域の事象間の相互作用を解析するというもので、同製品では有限要素法(finite element method:FEM)を用いてこれを実現する。音響、対流拡散、流体力学、電磁気学、熱伝導、構造力学、変形などの解析モードが基本ソフトウエアに備わっており、これらの物理現象を統合的に解析することができる。また、物理法則を表す微分方程式を入力することで、任意の物理現象を解析することも可能だ。

 今回のバージョン3.4はバージョン3.2からの更新版である。主な変更点はマルチコアプロセッサと分離型(segregated)ソルバーに対応したことだ。これは多くのパソコンがマルチコアプロセッサを搭載していることを反映したものである。メッシュ作成、パーツの結合、解析などの処理は、複数のプロセッサコアに対して割り当てて共有メモリー型並列処理を行う。これにより、マルチコアプロセッサのコア数に比例して解析時間を短縮できる。また、分離型ソルバーは大規模で自由度の高い複雑な解析対象のモデルを複数の小さなモデルに分割し、計算量とメモリー量を削減するというものである。これらにより、同社従来製品と比較して解析時間を大幅に短縮することができるという。幅広い分野の研究者や設計者、学生などを顧客として見込む。価格は約150万円から。

SPICEモデルに対応

 COMSOL Multiphysics 3.4では、基本ソフトウエア以外にオプションとして特定の分野/用途に特化したモジュールも提供されている。ここではエレクトロニクス分野に関連するモジュールに対する更新内容を紹介する。

 AC/DCモジュールはコンデンサやインダクタ、モーター、マイクロセンサーなどの解析に適しており、主に電磁界シミュレーションに用いられる。今回の更新によって、SPICEモデルを直接入力することが可能になった。このことにより、表面要素によるモデル(SPICEモデル)とFEMによる3次元モデルを統合して解析することが可能になった。また、解析アルゴリズムを改良したことから、同社従来品では時間がかかりすぎて行えなかったレールガン(電磁投射砲)のようなモデルの解析も可能になった(図1)。

図1 レールガンにおける連成解析の結果 図1 レールガンにおける連成解析の結果  このレールガンは、1秒間に1km/s2の加速度を与えて月面に物体を発射することを想定したもの。レール間の大きな流線は磁束密度を表す。また、レール周囲の線は電位を表す。

 RFモジュールは、アンテナや導波管、光学結晶などの解析に適しており、主に高周波やマイクロ波のシミュレーションに用いられる。集中ポートによる境界条件を入力することが可能になり、プリント基板や送電線を3次元で容易に解析できるようになった。図2はマイクロ波のサーキュレータの例であり、静電磁界、構造、熱伝導、電磁波の4つに対して連成解析を行っている。赤や青は温度、緑は電磁界のz軸成分を表している。マイクロ波の伝送によって導波管が発熱し、形状が歪んでいることがわかる。

図2 マイクロ波のサーキュレータにおける連成解析の結果 図2 マイクロ波のサーキュレータにおける連成解析の結果 マイクロ波によって導波管が加熱されて変形する様子を表している。緑の波は、電界のz軸成分。

次世代は使いやすさに注力

 COMSOL社で社長兼CEO(最高経営責任者)を務めるSvante Littmarck氏は今後の更新について「製品のユーザーとしては、エレクトロニクス系の研究者や設計者が多い。現在、それらユーザーのために米Cadence Design Systems社や米Mentor Graphics社のCADツールから基板データを取り込む機能を開発中だ」と明かした。

 また、メカニカルCADとの連携に関しても「ここ数年、設計エンジニアのためにインターフェースを改善することを目的として多くの投資を行ってきた。現在、米SolidWorks社と共同で新たなインターフェースの開発を進めている。現状、COMSOL Multiphysicsで連成解析を行って形状の入力にSolidWorks社のCADを用いる場合、2つのソフトウエア間を行き来する必要がある。開発中のインターフェースを用いれば、SolidWorksのCADの中でCOMSOL Multiphysicsの機能を使用できるようになるだろう」と述べた。これらの機能はマイナーバージョンアップとして2008年度中に提供される予定である。

 さらに同氏は、次世代のCOMSOL Multiphysics 4.0について「データ構造や制御メカニズムのプログラムから見直しを行っているところだ」と語った。

(小野 明久/Design News Japan編集部 大村 泰憲)

連絡先:計測エンジニアリングシステム(代理店)、03-5282-7040

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