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ジッター測定時のオシロのセットアップSignal Integrity

» 2008年02月01日 00時00分 公開
[Gary Giust(米PhaseLink社),EDN]

 ジッターを計測するときの苦労の半分はオシロスコープのセットアップ作業に費やされると言われる。実際、ジッターの計測は、オシロスコープのセットアップをはじめとする計測環境の影響を受けやすい。従って、リアルタイムオシロスコープの使いこなし方を習得し、計測の対象とするデバイス/機器が実際に動作しているのと同じ状態で信号をとらえられるようにすることが重要である。では、ジッターを適切に計測できるように環境を最適化するにはどのような点に注意すればよいのだろうか。

 まず最初になすべきことは、適切な帯域幅を有すオシロスコープを選定することだ。帯域幅が狭すぎると、信号のエッジがなまって計測される。立ち上がりの遅いエッジでは、実際には電圧振幅であるノイズがタイミング誤差として表示されてしまう。一方、帯域幅が広すぎるのも、サーマルノイズやショットノイズなどによって計測結果に現われるノイズフロアが上昇してしまうので好ましくない。経験則で言えば、適正な帯域幅は、計測の対象とする信号がNRZ(non return to zero)形式の場合、ビットレートの1.8倍ほどになる。

 次に重要なのは、サンプリング周波数を十分に高くし、アンダーサンプリングに起因するエイリアシング(折り返し)を避けることだ。サンプリング理論から言えば、サンプリング周波数は信号に含まれる最高周波数の少なくとも2倍以上でなければならない。例えば、データアクイジション系を構成するアナログ前処理部とそれに続くデータ変換部では、サンプリング周波数は信号の基本周波数の2.5〜3倍程度とするのが一般的である。こうした観点から、オシロスコープの帯域幅とサンプリング周波数の比率は、おおむね1〜3の間に設定されている(実際にはワンショット計測が行われるのではなく、繰り返し信号に対して等価サンプリングが行われる)。

 また、オシロスコープ内部ではA-D変換が行われるので、それに伴う量子化ノイズを最小にするよう垂直軸(電圧軸)の分解能を極力大きくして使用することも肝要だ。つまり、信号波形がディスプレイ画面の上下幅いっぱいに表示されるよう垂直軸スケール(V/div)を調整する。波形の上下幅が画面からはみ出すほどになると、A-D変換時に飽和が生じてしまうが、あまりにも狭くすると量子化ノイズによってS/N比(信号対雑音比)が劣化する。

表1 ジッターの測定結果 表1 ジッターの測定結果 

 表1は垂直軸を0.5V/divとした場合と0.15V/divとした場合の測定結果の例である。このように、計測結果は電圧軸の条件によって大きく異なるものとなる。また、ジッター特性としてTIE(time interval error:時間間隔誤差)を計測する際には、水平軸(時間軸)の調整も必要となる。この調整は、ジッターの周波数に対してハイパスフィルタとして働く伝達特性を調整することに相当する。時間軸の設定条件により、計測可能な最小TIE周波数が決まるのである(計測可能な最高ジッター周波数はオシロスコープの帯域幅によって決まる)。

 加えて、計測データパターンには所要の周波数範囲が含まれていることを確認しておく。また、計測対象のデータパターンは実使用条件を近似できるものにしよう。PRBS(pseudorandom bit sequence:擬似ランダムビット列)によりデータパターンを生成する場合には、データパターンの長さは低周波数特性の計測に十分であるようにするとともに、全データを取り込んでも機器のメモリー容量内に納まるような長さにする。

 もう1つの注意点は、トリガーポイントから第1サンプリングポイントまでの遅延が最小になるようにすることである。計測時のタイミングの不確定性は、信号波形がトリガーされてからサンプリングされるまでの遅延に比例するからだ。つまり、この遅延を最小にするとタイミング精度が高まり、ジッターの計測値が小さくなって本来の値に近い値が得られる。

 さらに、以下の設定も忘れないようにしたい。

  • オシロスコープが備える波形平均化(アベレージング)処理モードは使用しない
  • データサンプリング点の補間処理にはsin(x)/x関数を使用する
  • トリガーは大振幅で高速なものを使用する
  • トリガーレベルは、対象システムの受け側の閾(しきい)値レベルがわかっていれば、その値に合致するよう設定する。不明の場合は、対象とする信号振幅の50%にする

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