MolexとDigiKeyが、自動車の電動化について語った。具体的には、エンジンルーム内のコンポーネントの電動化や、48Vシステムで求められるコンポーネントの要件などについて議論した。
自動車業界では従来型の機械駆動システムから電気部品や電気システムに移行する電動化が進行しており、今日の自動車設計が大きく変わりつつある。その範囲は内燃機関からマイルドハイブリッド、完全な電気自動車まで多岐にわたる。
これまで、キャブレターや単純な排気システムが精密な燃料噴射装置、排気システム、トラクション/ブレーキ制御システムへと進化してきたように、電動化においても、新しいアーキテクチャ、電動モーター用コンポーネント、バッテリーパック、先進的なパワーエレクトロニクスなどで同様の進化が見られる。こうした進化が積み重なった今、エンジニアたちは自動車の設計と運転について根本から見直し、効率性、信頼性、安全性を最大限に高める必要に迫られている。
本稿では、Molex事業開発マネジャーのMatt McWhinney氏とKirk Ulery氏、DigiKeyテクニカルマーケティングエンジニアのShawn Lukeが、電動化の現状と、自動車業界の将来に向けた主な考察項目を語る。
注目度の高い電気自動車(EV)やハイブリッド車の需要は増加の一途をたどっているが、EVの新車の売り上げは市場や公共政策などさまざまな要因から、この数カ月間は鈍化している。業界の専門家は価格の高さと米国内の充電インフラ不足の2つを主な理由として挙げている。
「北米における電動化は断続的に進んできた」とUlery氏は説明する。「一度に100マイル(約160km)以上の距離を走りたいのであれば、充電インフラの改善が必要になる」
一方、ハイブリッド車はEVの販売台数を上回っている。Edmundsのデータによると、米国におけるハイブリッド車の販売台数は2022年の75万台から2023年には100万台を突破し、大きな伸びを見せている。
EVやハイブリッド車の他に、最近新しいカテゴリーとして登場したマイルドハイブリッド車は、ガソリン車やディーゼル車における補助的な役割としてバッテリー駆動の電動モーターを使う方式の自動車である。大半のマイルドハイブリッド車における電気系統は、48Vという従来の内燃エンジン車の電気系統よりも高い電圧を使用する。この48Vシステムを一部のコンポーネントの電源に使用することでエンジンへの負担を減らし、走行効率を高めている。
このように自動車の設計分野では急ピッチで技術革新が進んでいるが、実際に道路を走行している車の大半はガソリン車だ。Edmundsが実施した調査によると、現在米国で購入されている新車の82%はガソリン車である。とはいえ、従来型の自動車から最先端のハイテク電動自動車まで、電動化の動きは着実に進んでいる。
Ulery氏は「電動化の動きは定着している。どの自動車でもさまざまな理由で機械システムが電動化されているが、特に走行効率を高める意図が強い」と述べている。
その一例がストップ&スタートテクノロジーである。これは車両が停止するとエンジンが停止し、運転手がブレーキペダルを離すかアクセルペダルを踏むと自動的にエンジンを再始動させる技術である。この機能は一部のコンポーネントへの負荷が増える側面があるものの、燃費の向上と温室効果ガスの排出削減を目的として導入されている。
エンジンルーム内のコンポーネントで電動化が進んでいる例としては、ラジエーターファン、パワーステアリング、冷暖房空調装置(HVAC)システム、冷却ポンプなどが挙げられる。いずれも、これまで内燃機関(ICE)の回転を利用してベルトで駆動させていたシステムだ。機械式ラジエーターポンプは電動ウオーターポンプに変わりつつある。効率が高く、電気による細かい制御が可能で、部品の長寿命化が期待できるからだ。先進的なバッテリー管理システムを実装している場合は車両全体に冷却水を循環させ、バッテリーパック、電気モーター、パワーエレクトロニクスを適切な温度に維持することも可能だ。
パワーステアリングポンプなどのモジュールを電動式に切り替えると、システムがエンジンに依存しなくなるため、寄生負荷が減り、エンジンの実効馬力が増える。そこで、自動車メーカー各社はエンジンを小型化しながらも、効率面でのメリットを生かして同じ走行性能を確保した低排出モデルを販売している。
「電動化によって革新的で斬新な車両設計ができるようになった」とLukeは指摘し、さらに「電気自動車は従来型の内燃機関に接続したベルト駆動のアーキテクチャを搭載する必要がないため、自動車メーカーにとってバッテリーや充電ポートの配置の自由度が増し、乗客や荷物のためのスペースを増やせるようになった」と述べている。
全体としては、電動化の流れを受けて従来の機械式システムから、効率的な精密電気制御システムに移行しつつある。ソフトウェア制御の進歩と相まって、最新の自動車はクリーンでエネルギー効率が高く、乗用車、商用車ともに環境に優しく、優れた性能を持つようになった。
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