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加速するITSの進化プローブ情報とEVで“エコシフト”(2/4 ページ)

» 2010年07月01日 00時00分 公開
[本誌編集部 取材班,Automotive Electronics]

規格化で先行する米国

 米国は、路車間通信と車車間通信において共通の無線通信規格を使用する予定である。

 米国では、1990年に、5.9GHz帯をITSで用いることが決まっていた。これに合わせて標準化が進められてきた無線通信規格が「WAVE」である。WAVEは、物理層やMAC(Media Access Control)層など、下位層に当たるIEEE 802.11pと、それより上位の層に当たるIEEE 1609.xから構成される(図1)。IEEE 802.11pは、パソコンなどで広く利用されているWi-Fiをベースに、高速で移動する自動車でも利用できるよう、通信接続にかかる時間を短くすることを意図して策定された。


図1WAVEの構成と標準規格(提供:ルネサス エレクトロニクス) 図1 WAVEの構成と標準規格(提供:ルネサス エレクトロニクス) 緑色の線で囲んだ部分がIEEE802.11p、紫色の線で囲んだ部分がIEEE1609.3、オレンジ色の線で囲んだ部分がIEEE1609.4に対応している。

 2008年まで、米国におけるITSの実用化に関する活動は足踏み状態にあった。しかし、オバマ政権に移行した2009年に、新たに「IntelliDrive」というプロジェクトが立ち上げられた。IntelliDriveでは、2010年からの5年間に1億米ドル/年の投資を行い、ITSの実用化を目指す。2013年後半には、ITS搭載の義務化など、導入に向けた法整備の方向性について結論を出すことを予定している。

 米国内でのITSにかかわる活動の活発化に合わせるように、IEEE 802.11pと同1609.xの規格策定も進展している。NECの制御システム事業部 第四システム部のエキスパートを務める山本武志氏は、「IEEE 802.11pの規格は、2010年夏ごろには正式に発行される見込みだ。同1609.xについても、ITSの実用的なサービスに対応する第2版が2010年半ばを目標に策定されている」と語る。

欧州は米国との協調路線を選択

 欧州におけるITS関連の活動では、COMeSafetyという組織が要となっている。COMeSafetyは、EU(欧州連合)あるいはEUの加盟国がそれぞれ進めているITS関連のプロジェクトや、欧州の自動車メーカーが立ち上げたITSのコンソーシアムであるC2C-CC(Car 2 Car Communication Consortium)などとの間で調整役を果たしてきた。

 COMeSafetyは、ITS向けの無線通信規格についても、2007年末にETSI(欧州電気通信標準化協会)で標準化活動を開始するなどしている。この動きを受けて、欧州委員会は、欧州におけるITSの標準化を2012年4月までに完了させるように指令を出した。これにより、欧州のITSも実用化に向けて進展すると見られている。

 欧州のITS向け無線通信規格では、下位層として、IEEE 802.11pをベースにETSIが規格化したES 202 663を採用している。また、上位層についても、IEEE 1609.xを欧州向けに最適化する形で規格策定が始まっている。さらに、IntelliDriveを推進するDOT(米国運輸省)と欧州委員会は、2009年11月に、ITSの研究協力についての共同宣言を発表した。これらのことからわかるとおり、ITSについて、米国と欧州は緊密な関係を築いていると言えるだろう。

 なお、欧州のITSプロジェクトでは、日本メーカーが存在感を示している。C2C-CCは2008年10月、車車間通信の実証実験を行った。この実証実験に参加した自動車メーカー9社のうち、5社がNECの車車間通信ユニット「LinkBird-MX」を採用していた。NECの山本氏は、「当社は、日本では、VICSやETCの路側機のビジネスのみを展開しているが、ドイツの研究所では10年以上も車車間通信の研究を行っており、その成果が出た。今後は、この技術を日本のITSにおける車車間通信技術の開発にも適用していく」と述べている。

 また、ルネサス エレクトロニクスも、C2C-CCに参加するなどして、車車間通信システム向けの研究開発を進めている。「現在、横幅をヘッドユニットのサイズまで小型化した第2世代の試作機を開発した段階。第3世代では、FPGAなどを使ってさらに小型化を図る。その次に、専用ICとして製品化することになるだろう」(ルネサス)。

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