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第4回 論理回路の基礎(順序論理回路)デジタルIC 基礎の基礎

» 2012年01月01日 00時00分 公開
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 前回は論理演算と組み合わせ論理回路(Combinational Logic)を説明しました。今回は「順序論理回路(Sequential Logic)」または「順序回路」と呼ぶ論理回路を解説します。

 初めに、前回の内容を簡単におさらいしましょう。組み合わせ回路とは、入力の論理値によって出力の論理値が決まる回路であると説明しました。ここで重要なのは、出力は入力のみによって決まることです。入力が複数ある場合、入力の論理値はどのような組み合わせでもかまいません。その代表例が、NOTゲートやNANDゲートなどの論理ゲートでした。

 これに対し、順序回路では出力は入力だけでは決定しません。入力の時点で回路がどのような状態であったかによって、出力が変わります。言い換えると、過去の入力を現在の状態として記憶しており、その状態と、新たな入力との組み合わせによって出力が決定します。

 ここでは代表的な順序回路である「フリップフロップ」と「ラッチ」について主に説明します。

フリップフロップとその動作

 順序回路の代表は「フリップフロップ」です。フリップフロップは出力が2本あり、1本の出力ともう1本の出力は相補関係にあります。具体的に説明すると、1本の出力が「1」(あるいは「真」、「高」)であるとき、もう1本の出力は必ず「0」(あるいは「偽」、「低」)となっています。フリップフロップは2本の出力の状態を常に保持しており、入力が特定の条件で変化したときにのみ、2本の出力の論理値が入れ替わります。なお「フリップフロップ(Flip-Flop)」は表記としては長いので、回路図では通常「FF」と略記します。

 2本の出力は、1本を「Q」(キュー)、もう1本を「/Q」(キューバー)と表記します。Qを「1」にする動作を「セット(Set)」、Qを「0」にする動作を「リセット(Reset)」と呼びます。

photo 図1 フリップフロップ(FF)の基本動作

 セット動作またはリセット動作を実行する入力信号には、レベル入力とエッジ入力の2種類があります。レベル入力とは、入力信号の論理値(レベル)によって動作を実行するものです。例えば入力レベル「1」をセット動作とすると、入力レベル「0」はリセット動作となります。エッジ入力とは、入力信号の論理値が変化するタイミング(エッジ)によって動作を実行するものです。例えば「0」から「1」への変化(アップエッジ)をセット動作とすると、「1」から「0」への変化(ダウンエッジ)はリセット動作となります。なおフリップフロップの入力は論理値だけではありません。制御信号やクロック信号などを入力とすることがあります。

 フリップフロップは動作の違いにより、いくつかの種類があります。代表的なフリップフロップは「RS-FF(リセットセット・フリップフロップ)」、「T-FF(トグル・フリップフロップ)」、「D-FF(ディレイ・フリップフロップ)」、「JK-FF(JKフリップフロップ)」などです。

ラッチとその動作

 フリップフロップと並んで順序回路を代表するのが「ラッチ」です。ラッチは、特定のタイミングで入力信号の論理値を取り込み、その状態を出力として保持します。したがって入力には信号入力とタイミング入力の2種類の入力が存在します。

 タイミング入力は「ストローブ信号」あるいは「ラッチ信号」と呼ばれています。例えばストローブ信号の論理値が「1」になっている期間の信号入力の値を取り込み、保持します。ストローブ信号の論理値が「0」になっても、出力は変化しません。あるいは、ストローブ信号の論理値が「1」になった瞬間の信号入力を取り込み、ストローブ信号が「1」の期間はその論理値を保持します。ラッチには動作の違いにより、「RS-ラッチ」、「D-ラッチ」などがあります。

photo 図2 ラッチとその動作

 ラッチとフリップフロップは回路が大変よく似ているので、用語としては混同して呼称されることがあります。ラッチは入力の値を特定のタイミングで保持する回路であるのに対し、フリップフロップはシーソーのように入力によって出力の値を反転させる回路です。打ち合わせの会話などでは、両者の違いに留意して用語を選ぶことをお勧めします。

そのほかの順序回路

 そのほか良く使われている順序回路には、「カウンタ」や「レジスタ」、「シフトレジスタ」などがあります。これらの順序回路はいずれも、フリップフロップやラッチ、論理ゲートなどで構成できます。

「カウンタ」とは、入力の変化する回数を数える回路です。入力の変化する回数が増えるとともに出力が増える「アップカウンタ」、入力の変化する回数が増えるとともに出力が減る「ダウンカウンタ」などがあります。またカウンタを大別すると、複数の出力の変化が順番に起こる「非同期型カウンタ」と、複数の出力が変化するタイミングを一致させた「同期型カウンタ」に分かれます。

「レジスタ」とは、入力の値を一時的に記憶する回路です。通常は1ビットの記憶に1個のフリップフロップが対応します。例えば8ビットのデータを記憶するレジスタ(8ビット・レジスタ)は、8個のフリップフロップで構成します。

「シフトレジスタ」とは、レジスタを構成しているフリップフロップの列で、隣接するフリップフロップへデータが移動する回路です。フリップフロップの列で両端のフリップフロップだけが入力あるいは出力を備えるシフトレジスタを、「直列入力・直列出力型」のシフトレジスタと呼びます。各フリップフロップが入力を備え、どちらかの端にあるフリップフロップだけが出力を備えているシフトレジスタを、「並列入力・直列出力型」のシフトレジスタと呼びます。逆にどちらかの端にあるフリップフロップだけが入力を備え、各フリップフロップが出力を備えたタイプを「直列入力・並列出力型」のシフトレジスタと呼びます。(次回に続く)

photo 図3 直列入力・直列出力型のシフトレジスタ



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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日

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