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第11回 チップセットとコアロジックデジタルIC 基礎の基礎

» 2012年08月24日 00時00分 公開
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 「チップセット(chip-set)」とは、複数の半導体チップを組み合わせて製品として販売したり、サブシステムを構成したりすることを意味します。現状のチップセットは、ほとんどが2個または3個の半導体チップで構成されています。

 システムあるいはサブシステムを半導体チップに切り出すときに、最も望ましいのはワンチップ(1枚のシリコンダイ)に全体を集積することです。しかし実際には、シリコンダイの面積が大きくなりすぎる、数種類のプロセス技術を混載しなければならない、といった問題によってワンチップではコストが高すぎてしまいます。複数のシリコンダイに分割した方がコストが下がることが少なくありません。このような場合には、複数のシリコンダイ(複数の半導体チップ)で構成された製品を販売します。これがチップセットです。

 チップセットという販売形態は、半導体産業の黎明期にはごく普通のものでした。1970年代〜1980年代は半導体の集積度がきわめて低く、サブシステムを実用的なコストでワンチップに収容できるケースはごくまれだったからです。例えば1970年代のマイクロコンピュータはCPUチップ、ROMチップ、RAMチップ、I/Oチップの4つのチップによるチップセットでした。

 しかし1990年代〜2000年代に半導体の集積度が急速に高まると、ワンチップに収容できるサブシステムがかなりの割合で増えてきました。標準的なCMOSプロセスで製造できるデジタル回路はワンチップ化が進みました。残ったのが、プロセスの違いによるシリコンダイの分割です。メモリやアナログRF半導体、パワー半導体には、標準的なCMOSプロセスと違った独自のプロセス技術を必要とするものが少なくありません。こういったプロセスの違いを単純にワンチップに取り込んでしまうと製造マスクの枚数が増え、製造コストの大幅な上昇を招きます。そこで独自のプロセス技術を使う回路は別チップとし、チップセットとして販売します。

photo 図1 ワンチップ化とチップセット

コアロジックの役割

 高性能プロセッサの応用システムの説明でしばしばみられるのが、「チップセット」と「コアロジック(Core-Logic)」の混在です。本来、両者はまったく違う意味の用語です。

 高性能プロセッサは回路構成が複雑であるため、1枚のシリコンダイに演算処理回路やレジスタ、キャッシュなどを載せるのが精一杯で、周辺回路とのやりとりは別の半導体チップが負担するという役割分担が多くみられます。この周辺回路とのやりとりを担う半導体チップが「コアロジック」です。コアロジックにはメモリ・コントローラ回路やグラフィックス・インタフェース回路、ストレージ・インタフェース回路、汎用I/O回路などを搭載しています。

 コアロジックはシステム・メーカーやサブシステム・メーカーなどがASICという形で独自に設計することが少なくありません。もちろん半導体メーカーがコアロジックを標準品として販売することもあるのですが「コアロジック」とはあまり呼びません。このため、「コアロジック」と呼ぶときにはASICすなわちセミカスタムICであると暗黙に認識している場合があります。

photo 図2 メインプロセッサとコアロジック

パソコンのチップセット

 チップセットとコアロジックという二つの用語が独特の形式で使われているのがパソコンの世界です。パソコンの世界でチップセットとは、特定のマイクロプロセッサと組み合わせて使うコアロジックを意味します。ただしASIC(セミカスタムIC)ではなく、マイクロプロセッサ・メーカーやサードパーティーの半導体メーカーなどが標準品として市販しているのが普通です。

 つい最近までは、パソコン用マイクロプロセッサと組み合わせて使うコアロジックは、2個の半導体チップで構成されているのが常態でした。ここでマイクロプロセッサと接続するコアロジックを「ノースブリッジ(Northbridge)」、ノースブリッジと接続するコアロジックを「サウスブリッジ(Southbridge)」と呼んでいます。そしてノースブリッジとサウスブリッジの両方をチップセットと総称しています。

 そもそものチップセットの定義からすると、マイクロプロセッサとノースブリッジ、サウスブリッジの組み合わせ全体をチップセットと呼んでもおかしくないのですが、パソコンの世界では、チップセットにはマイクロプロセッサを含めません。マイクロプロセッサと組み合わせて使うノースブリッジとサウスブリッジだけをチップセットと呼んでいます。

 ちなみにノースブリッジにはグラフィックスやメモリといった超高速のインタフェース回路とコントローラ回路が載ります。サウスブリッジにはUSBポートやSPIポートなどのやや速度の低いインタフェース回路や、PCI拡張スロットなどの機能拡張用のインタフェース回路が集積されています。

photo 図3 パソコンのチップセット

 なお最新のパソコン用マイクロプロセッサではノースブリッジの機能を内蔵する傾向があります。このため、ノースブリッジが存在せず、マイクロプロセッサとサウスブリッジだけでシステムを構成する製品が増えています。

(次回に続く)




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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日

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