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第8回 FPGAとカスタムLSIデジタルIC 基礎の基礎

» 2012年05月25日 00時00分 公開
[PR/EDN Japan]
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 デジタル機器の設計で特定の機能を実現する手法は、一つではありません。何通りもの手法が存在します。複数の実現手段の中から、最適な手段をエンジニアは選択しなければなりません。

標準ICとカスタムIC

 実現手段には大きく分けると、ハードウェアとソフトウェアがあります。ハードウェアとは、極端に言ってしまえば、半導体チップだけで特定の機能を実現する方法です。ソフトウェアとは、マイクロプロセッサあるいはマイクロコントローラ(マイコン)でプログラムを動作させて特定の機能を実現する方法です。

 ハードウェアは半導体回路、すなわちシリコンであり、基本的にはソフトウェアに比べると高速で消費電力が低くなります。ソフトウェアにはプログラムのコードを変更するだけで、実現する機能を簡単に変更したり、調整したりできるという特徴があります。

 ハードウェアの半導体回路とは、普通はロジックICを意味します。ロジックICには大別するとカスタムICと標準ICがあります。カスタムICは、目的の機能を実現する回路(デジタル機器の開発者が設計した回路)を内蔵したICで、高速・低消費電力・低コスト(製造コストのみ)という優れた特徴があります。標準ICはあらかじめ特定の機能を内蔵してあるICです。いくつかの標準ICを組み合わせることで、目的の機能を実現します。

 デジタル機器の設計者が使いたいのは、カスタムICです。カスタムICでは自分が設計した回路がそのままシリコンダイになります。市販の標準ICですと、どの製品をどのように組み合わせれば所望の機能を実現できるのかを検討するための手間が非常に多くかかります。設計者にとっては面倒な手段だとも言えます。

 ただし、カスタムICには「開発コスト」が存在します。カスタムICの開発コストは非常に高額で、デジタル機器の総売り上げ台数や総売り上げ金額などを考慮すると、標準ICを組み合わせた方がデジタル機器の開発コストとしては低くなる場合が珍しくありません。

 デジタル機器の設計者が回路を完全に自由に設計できるカスタムICは、「フルカスタムIC」と呼ばれています。ただし「フルカスタムIC」は「開発コスト」が高額です。また現在のロジックICは論理回路の規模が膨大で、設計者がゼロから回路を設計可能な範囲を超えてしまっています。このためフルカスタムICは、現在では概念だけのものとなっています。

プログラマブル・ロジックの特徴

 実際のカスタム大規模ロジックは、「セミカスタムIC(ASIC)」に分類されてるシリコンを使っています。シリコンダイに内蔵する機能は一つではなく、複数の機能を搭載していることが珍しくありません。IPと呼ばれる機能モジュールごとの出来合いの回路ブロックを組み合わせるとともに、デジタル機器の開発者が設計したオリジナルの回路ブロックを付け加えるという方法です。オリジナルの回路ブロックはゲートアレイやスタンダード・セルなどで実現します。

 しかしこういった設計手法(「プラットフォーム設計」と呼ばれています)でも最先端の製造技術を使うシリコンダイでは開発コストが膨大になり、ごく限られたデジタル機器の開発でしか、利用できなくなりつつあります。

 そこで急速に普及したのが「プログラマブル・ロジック」です。プログラマブル・ロジックは、設計者が開発したオリジナルの回路を電気的に書き込めるICで、回路を書き込む前の状態で販売されています。すなわち標準ICと同様に、一般の設計者が1個から購入できるのです。回路の設計ツールはプログラマブル・ロジックのベンダーが提供しています。設計ツールは無償のバージョンと有償のバージョンがあります。サードパーティーが設計ツールを市販していることも珍しくありません。

 プログラマブル・ロジックを利用すると、オリジナルの回路を内蔵したシリコンダイの開発費用はきわめて低くなります。1個のプログラマブル・ロジックICの単価はそれほど低くありませんが、ASICを開発する費用に比べれば、はるかに安く済みます。

図1 ロジックICの設計方法別分類 図1 ロジックICの設計方法別分類

 そのプログラマブル・ロジックの代表が「FPGA(Field Programmable Gate Array)」です。「エフピージーエー」と呼ばれています。FPGAは基本素子の違いによって大きくは3通りに分かれています。SRAMを基本素子とするFPGAとフラッシュメモリを基本素子とするFPGA、アンチヒューズを基本素子とするFPGAです。FPGAおよびプログラマブル・ロジックの市場で主流を占めているのは、SRAMを基本素子とするタイプです。きわめて大規模な論理回路を搭載していることと、論理ゲート当たりの単価が低いこと、高速に動作すること、回路の変更回数に制限がないことなどが、主流となっている主な理由です。

図2 FPGAの基本素子と主な特徴 図2 FPGAの基本素子と主な特徴

カスタム・ロジックの主流となったFPGA

 SRAMベースFPGAはプログラマブル・ロジックの主流を占めていますが、カスタム・ロジックの主流を占めるようになったのは、ごく最近のことです。かつてのSRAMベースFPGAは半導体チップの単価(論理ゲート当たりの単価)が非常に高価で、一定数量を超える販売規模が見込めるデジタル機器には、採用しづらいものでした。このため、デジタル機器を量産する段階ではゲートアレイやスタンダード・セルなどのASICを載せるものの、試作の段階でのみ、SRAMベースFPGAを載せておくといった利用方法が主流でした。ゲートアレイやスタンダード・セルなどのASICは回路設計が完了してから最初のシリコンダイが完成するまでに、4週間〜8週間といった待機期間を必要とします。これに対してFPGAは設計が完了していればすぐにシリコンダイが動作しますので、待機期間がきわめて短くて済みます。そこで試作段階ではFPGAを載せてデジタル機器としての動作確認を実施するということが行われていました。

 ところがその後、SRAMベースFPGAは最先端のCMOS製造技術を積極的に採用していくことで、論理ゲート当たりの単価を急速に下げていきました。その結果、FPGAは試作だけなく、量産にも使われ始めました。論理ゲート当たりの単価が急速に下がった結果、FPGAは多品種少量生産のデジタル機器だけでなく、中品種中量生産のデジタル機器にも採用が広がりました。現在では、デジタル機器の多くでFPGAが使われています。

 SRAMベースFPGAはデジタル機器における使われ方も変化しました。かつては、FPGAはメインチップではなく、周辺機能を実現するペリフェラルチップとして使われていました。一つの理由は、メインチップのASICに比べると論理回路の規模が少なかったことです。もう一つの理由は、機能が不足していたことです。例えばFPGAでもマイクロプロセッサやDSPなどの回路は組めます。しかしその性能はASICの回路コアに比べると、かなり劣っていました。

 そこでSRAMベースFPGAは大規模化とともに、特定のマイクロプロセッサ・コアやDSPコア、PLL、メモリユニット、高速入出力インタフェース回路などをシリコンダイ中に固定して組み込むようになりました。こうなるともはや、SoC(System on a Chip)と変わりません。従来のASICに替わり、メインチップとしてFPGAが採用されていきました。

 最新のハイエンドFPGAは、SoCを超えてSiP(System in Package)へと進んでいます。複数のシリコンダイを並べることで、1個のシリコンダイでは実現不可能な大規模ロジックをデジタル機器設計者に提供するようになりました。高速性を犠牲にしないために、FPGAのシリコンダイはシリコン基板を介して接続されています。シリコン基板はパッケージ技術としては大変高価な技術なのですが、高い性能を実現するために、使われているようです。




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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日

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