Maxim Integrated Productsは、2012年に注力する製品分野の中でも、車載向けをトップクラスに位置付けている。車載情報機器、ボディ電子システム、電池監視という3つの分野で製品展開を加速し、将来的には全売上高に占める車載分野の比率を現在の2倍となる10%まで高める方針だ。
大手アナログICベンダーのMaxim Integrated Productsは2012年3月1日、東京都内で記者会見を開き、車載用途向けICの事業戦略を説明した。
会見に合わせて来日した同社社長兼CEO(最高経営責任者)のTunc Doluca氏は、「電子機器の小型化と高速化のトレンドが進む中で、高集積のアナログICが求められるようになっている。こういったトレンドは、モバイル機器のみならず他の機器分野でも見られる。車載機器もその1つだ。当社は、今年注力する製品分野の中でも、車載機器をトップクラスに位置付けている。高集積アナログICのリーダーとして、日本国内の顧客に、競合他社との差異化に役立ててもらえるような製品を提供したい」と語った。
Maximが展開している車載機器向けICは、用途によって大まかに3つに分けることができる。まず1つ目は、カーナビゲーションシステムやカーオーディオなどの車載情報機器向けICである。例えば、HD(高品位)映像の信号を遅延なく伝送するのに用いるSERDES(シリアライザ/デシリアライザ)ICや、デジタルテレビ/ラジオ放送に対応するチューナICなどがある。2つ目はボディ電子システム向けのICだ。ヘッドランプや車室内照明システム、車載液晶ディスプレイのバックライトで採用が拡大しているLEDのドライバICやヘッドアップディスプレイに用いるピコプロジェクタ向けのドライバIC、キーレスエントリ向けの通信ICが含まれる。最後の3つ目は、電気自動車やハイブリッド車などに搭載されている二次電池パックの各電池セルの電圧を測定する電池監視ICである。
同社のオートモーティブ事業部でマネージング・ダイレクターを務めるKent Robinett氏は、「当社の2011年度の売上高は約25億米ドル。このうち5%を車載機器向けICが占めている。これら3つの分野の製品展開を加速して、車載機器向けICの全売上高に占める比率を2倍の10%まで高めたい」と述べる。
会見では、最新製品を紹介するとともに、それらを使ったデモンストレーションも披露した。まず、車載情報機器向けで紹介したのが、スマートフォンやタブレット端末との接続に用いるUSBインタフェースの保護ICである。信号ラインの短絡保護機能で、車載機器の電源電圧として利用される18Vに対応するなど車載機器向けに最適化していることが特徴。また、Apple製品を含めた全てのスマートフォンやタブレット端末に対する急速充電が可能だという。
他のアナログICベンダーと激しく競合している電池監視ICについては、2010年8月に発表した第1世代品「MAX11068」(関連記事)の後継となる、第2世代品の「MAX17830」と第3世代品「MAX17823」を発表した。2012年1〜3月期から量産を始めるMAX17830は、既に複数の電気自動車やハイブリッド車のデザインウィンを獲得しているという。一方、2013年1〜3月期から量産を始めるMAX17823は、複数の電池監視ICをディジーチェーン接続する際に用いるインタフェースを、従来のSMBusからノイズ耐性の高い差動インタフェースに変更している。
最後に、会見で行われたデモンストレーションの中から、興味深かった2つを紹介しよう。
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