【超入門記事です】今回は、電子機器をコンパクトにする“道具”と、その特性について説明します。
前回はノートPCやエアコンを引き合いに出し、電子機器は用途に応じてさまざまな電源を用意しなければならないこと、コンパクトに作るためには高い周波数で電気を加工する必要があること、そしてその道具はFETやIGBT、ダイオードなどがあるといいました。
さあ高周波の回路か! とお思いでしょうが、50/60Hzの低周波交流電源であるコンセントに最初に接続される半導体はダイオードですので、まずは手始めとしてダイオード整流回路を取り上げます。
ダイオードというのは電流を一方向にのみ流せる性質を持った半導体といわれており、そのシンボルを図1に示します。Aは(アノード)、Kは(カソード)と呼ばれ、電流はA→K(AからK)の向きにしか流れず、逆向きには流れない性質を持っています。
実際にはどのような特性であるのか、ダイオードに流れる電流と印加される電圧を図2a〜cで説明します。図2aは測定回路で電圧を変えられる電源+Ed、−Edを準備し、ダイオードに流れる電流と印加される電圧、すなわち極性が+のときと−のときの電流、電圧を計測します。
図2bはダイオードの電圧/電流特性を示しています。可変電圧電源Edを+方向に徐々に上げていくと電流は急激に上昇します。ダイオードの定格電流IFに対応するダイオードの電圧VFはほぼ1V以下の低い電圧となります。またEdを−の電圧とするとダイオードにはマイクロAのオーダの非常に小さな電流が流れます。従って電源電圧−Edはほとんどダイオードに逆向きに印加されることになります。
ここで少し脇道。ダイオードの損失についてお話しします。図2bにおいて、ダイオードの電圧VFと電流を掛けたものはVF×IF=W(ワット)となります。これがダイオードの損失、すなわち発熱のもとになります。
VF=0.8V、IF=10Aとしますと0.8×10=8Wとなり、よく冷やす必要が出てきます。この特性はPN接合型ダイオードをイメージしていますが、現在小容量のものではVFの値が半分以下のショットキーバリアダイオードが多用されており、さらにSiC(シリコンカーバイド)のようにVFのとても小さなダイオードが出始めています。
次に、逆方向の電流に注目します。図1では数100uA以下と非常に小さな電流はいわゆる漏れ電流として製造過程で管理されています。ここで、例えば漏れ電流が50mAと増加したとすると、回路電圧が100Vならば100×0.05=5Wと大きな損失となり、温度上昇が加速し、ダイオードの破壊につながります。
この逆方向の漏れ電流増加はダイオード素子の劣化指標の1つとなっています。
話を戻して、図2cを見てください。これは図2bの縦軸、横軸のスケールを統一して表したもので、電流が一方向にしか流れないと見えることを表しています。コンセントの100Vに比べ0.8Vは非常に小さく、また逆方向の漏れ電流は無視し得るということを表しています。
ダイオードは一方向にしか電流を流さないということは、この程度の近似です。
それではこの特性を使って、コンセントの50/60Hz、100Vの交流を直流に変換してみましょう。50/60Hzは十分に低周波ですので、このダイオードの整流特性だけで役に立ちます。図3a、bにダイオードによる半波整流回路を示します。図3aは先ほどのダイオード特性における測定回路と同じです。
図3bに波形を示します。この回路は整流の基本の勉強にはなりますが、使ってはいけません。コンセントに流れる電流は負荷に流れる電流と同じで、交流に半波分の電流を流すことになり、直流電流が重畳された形となります。発電機はもちろんのこと、配電系に悪い影響を与えることになります。
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