【超入門記事です】電子機器を利用するには、当然ながらコンセントからの電気が機器に伝わらなくてはいけません。今回は、その道筋について詳しく解説します。
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前回、コンセントから出てくる電気はその電圧が時間とともに+、−交互に規則的に変化する交流であるといいましたが、実はこれが直流であっても技術的には困らない時代になっています。何をいいたいのかというと、電圧が+でも−でも本質的な問題ではなく、負荷装置が目的とする機能を実現するために、電気を必要な電圧、電流に加工することができるようになってきているからです。
電気を利用するシーンとして2つの例を挙げてみましょう。
まず、筆者の目の前にあるノートPCです。コンセントにぶら下がっているACアダプタ。入力は世界中で使える仕様の100-240V(50/60Hz)、出力は65W DC20Vです。
このACアダプタで電気が交流から直流に変換され、出力がPCに接続されています。PCの中身はリチウム電池、ディスクドライブ、各種I/O、メモリー(MEM)、各種機能LSI、プロセッサなど、さまざまな電圧仕様のデバイスで構成されており、20Vの電気をそれぞれのデバイスに適合した電圧にDC/DC変換加工することが求められています。
例えば近年のプロセッサなどは、1V程度で動作するといいます。動作スピードはどこまで速くなるのでしょうか。電源の作り方も細心の注意が必要となるでしょう。図1を見ていただくとデバイスごとにさまざまな電源を必要としており、電源の固まりのようにも見えます。これらが小さな筐体(きょうたい)にコンパクトに収められています。
次に、執筆中の部屋を暖めているヒートポンプ動作中のエアコンです。近年、冷暖房性能の向上と運転効率の改善が著しく進んでいます。
現代のエアコンは、ヒートポンプを使うことで外気の熱エネルギーをくみ上げ、部屋の温度を好みの値に調整するようにできています。このためガス媒体の圧縮、膨張の過程を利用しています。ガスを圧縮すると熱を発生し、膨張させると冷えて熱を吸収する原理を応用することで、冷暖房兼用を実現しています。
では電気は何の役目をしているかというと、もっぱらガス媒体を圧縮機で圧縮することに使われています。圧縮機を回すためにはモータが必要で、その回転制御を適切に行うことが肝心です。そのため、コンセントからの電気を上手に加工しなければなりません。
入力された交流の電気はまず、AC/DC変換器により交流から直流に変換します。PCのACアダプタみたいなものですが、少し違うのは作られる直流電圧が数100Vまで昇圧できることです。この直流電圧を、周波数を変更できるDC/AC変換器に加えてモータをドライブします。
モータは周波数を変えることで回転スピードを変えることが可能になり、同時にその電圧を周波数に略比例させると出力パワーも比例して増大することができます。つまり、寒いときには圧縮機を高速回転(ハイパワー:電圧、周波数ともに高)し、そこまで寒くないときには低速回転(ローパワー:電圧、周波数低)で回転させることで必要最小限のパワーで運転できるようになり、省エネ運転につながります。
なお蛇足ですが、このAC/DC変換器は交流入力電流を略力率1の正弦波に加工することができ、電源高調波の低減にも寄与しています。
上記2つの例を見ると、おのおのの電源はあたかも直流の変圧器みたいに見えてきませんか? PCは電圧を低くしたいようであるし、エアコンは電圧を高くしたいようです。これを見たらおそらくテスラ、エジソンも目の玉を真ん丸にすることでしょう。
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