最近になり、価格がぐっと下がってきたSSD。PC購入時の選択肢に、内蔵ストレージをHDDとSSDのどちらかから選べるケースも増えてきました。“HDDの高性能版”のような印象を受けるSSDですが、その実態はどうなのでしょうか。今回は、SSDの基本的な仕組みやHDDとの比較、PC以外でのSSDの適応分野を紹介します。
SSDはフラッシュメモリを使用した記憶媒体(メモリ/ストレージ)です。フラッシュメモリはRAMのようにデータの読み書きが自由に行え、しかも電源を切ってもデータを保持できる不揮発性の半導体メモリで、記憶セルの構造によってNAND型フラッシュメモリとNOR型フラッシュメモリなどに分けられます(注)。現在市場で販売されているSSDはNAND型フラッシュメモリが採用されています。
注:NAND型はNOR型に比べて大容量化がしやすく、一度に大量のデータを取り出したりすることが得意なことから、ストレージとして適しています。一方、NOR型はデータのランダムアクセスができることから、保存しておいたプログラムを読み出し、そこから直接アクセスして実行するというような動作に向いています。
図1はSSD(東芝 セミコンダクター社のHigh Performance SSD)の構造を示したものです。大きく分けて、他機器との接続口となるコネクタ、キャッシュ機能を果たすDRAM、SSDコントローラ、主記憶部分のNANDフラッシュメモリ、の4つで構成されています。
フラッシュメモリはHDDなどの磁気ディスクと違い、アドレスで示された格納庫にデータを保存します。よって、ディスクを回転させたりなどの物理的な動作なしに、データの保存・取り出しができます(機構部品による可動部を持たないので衝撃に強いほか、モーターなどの駆動音もないため静音化にも有利)。また周波数を高めることで、処理の高速化を図ります(HDDよりも高速化がしやすい)。またSSDは軽量で小型化が可能なことから、比較的自由な形状でモジュール化ができます。
ただし、HDDに比べると記憶容量当たりの単価が高く、テラバイトクラス以上の大容量を必要とする際には、SSDよりもHDDの方が低コストで済みます。
SSDはHDDみたいに磁気ディスクを回転させているわけじゃないから、 少しくらい荒っぽい扱いをしても大丈夫。よく物を壊す乙女ちゃんはSSD搭載のPCが良いかもね。
た、確かに……。
じゃあ次は、実際にNAND型フラッシュでどういった処理をしているかについて説明するよ。
NAND型フラッシュメモリは、セルと呼ばれる微細な記憶素子の集まりで構成されています(図2を参照してください)。1つのセルは、図2の青色で示してある制御ゲートと黄色で示してある浮遊ゲート、p型とn型半導体から成り、浮遊ゲートに蓄積された電荷量によって“1(電荷を蓄えていない状態)”と“0(電荷を蓄えている状態)”という2つの異なる状態を作ることで、データを記憶しています。
2つの状態の切り替えは、電荷(電子)に高い電圧を与えるとプラス(+)とマイナス(−)か近づくという現象を利用しています。例えば、セルにプラスの強い電圧を与えると電子が集まり、逆にマイナスの電圧を与えると電子は離れてなくなります。
たった2つの状態の切り替えだけでデータの記憶ができるなんてすごいねぇ。
そうだね。まぁ厳密に言うと2つ以上でもできるんだけどね。NAND型フラッシュメモリには2種類あって、いま説明したように2つの状態を制御しているSLC(Single Level Cell)型と、2つ以上の状態を制御できるMLC(Multi Level Cell)型があるんだ。
1つのセルで2つ(1ビット/セル)の状態を作るSLC型に対し、4つ(2ビット/セル)以上の状態を扱うことのできるMLC型は、同じ数のセルでより多くのデータの記録が可能です(2009年現在で実用化されている最大値は3ビット/セル。研究レベルでは4ビット/セルも登場)。
ただしMLC型は、フローティングゲートへの書き込み電圧を細かく制御するなど技術的にも難しく、セル劣化やノイズの問題なども懸念されていました。ですが現在ではSSDコントローラによる書き込み平準化などさまざまな改良が施されてこのような問題も改善され、より大容量なフラッシュメモリを実現する手法としてSSDだけでなくSDメモリーカードやUSBメモリなどにも幅広く使用されています。
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