実際の製造工程で使用する部品には偏差がつきものです。偏差0の部品はあり得ません。そして、この部品の偏差は製品の特性にバラツキとなって表れます。今回と次回はこの様子を模擬し、製造工程の不良率を予測するモンテカルロ解析を主体に説明していきます。
部品には製造上どうしても避けられないバラツキが含まれています。いわゆる偏差、誤差といわれるものです。しかし、このようなバラツキを含む部品を使用して製品を組み立てた場合に目的とする特性が得られるか、否かはシミュレータといえどもN=1の特性からでは分かりません。実際に部品に偏差を与えて量産に相当する回数、計算してみるしかないのです。
詳細は後述しますが、モンテカルロ解析とはこのような状態を模擬するために各部品にランダムな偏差を与えながら、設定された解析を複数回実行し、工程のバラツキ具合を推定するものです。
このバラツキの範囲と仕様書の許容値から工程能力指数(Cp)を算出することができます。
それでは、連載第12回で挙げた設計仕様の中で残っている
(5)0.1V600Ω入力で1Wを得る
を中心に電圧増幅段の設計・検討を進めていきます。
この仕様と前回の検討結果から電圧増幅段への要求特性としては、
・入力電圧±0.1Vrms時に±4.4Vpの振幅が必要(±3.12Vrms=31.2倍)
であることが分かります。
また、その他の暗黙的な要求事項として、
も達成できるように進めていきます。
*)本記事末参照
本来なら実際の電圧増幅段の回路図を掲示して検討をしていくべきなのですが、本連載は解析技術の活用が主目的ですので今回は図1のように2入力型演算素子を使って検討を進めていきます。したがって、周辺定数が定まった後には実際の回路に置き換え、特性に影響する部品に偏差を設定してスルーレートや周波数特性を再確認する必要があることを忘れないでください。(図1の増幅器の内部はSPICEのBデバイス、あるいはEデバイスです)
なお、実際の回路構成を知りたい方は検索サイトで“オーディオアンプ”、“電圧増幅”、“DCアンプ”をキーワードに検索すればいくつかの回路例を見つけることができます。
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