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ありがちな故障と思ったら…… ステッピングモータードライバーの修理【前編】Wired, Weird(1/2 ページ)

20年以上前に製造されたステッピングモータードライバー2台の修理依頼があった。不具合内容は1台が「電源(5V)の表示灯が点灯するがモーターが回らない」、もう1台が「表示灯が点灯しない」ということだった。現品を手に入れて内部の基板を確認すると、1台目はDC5VのDC-DCコンバーターのコンデンサーが劣化していた。2台目には修理された痕跡が多くあった。その後、いろいろ調べていくと、かなり危ない回路のステッピングモータードライバーだと分かった。今回はモータードライバーの修理の経過を報告する。

» 2019年11月13日 11時00分 公開

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 20年以上前に製造されたステッピングモータードライバー2台の修理依頼があった。不具合内容は1台が「電源(5V)の表示灯が点灯するがモーターが回らない」、もう1台が「表示灯が点灯しない」ということだった。現品を手に入れて内部の基板を確認すると、1台目はDC5VのDC-DCコンバーターのコンデンサーが劣化していた。2台目には修理された痕跡が多くあった。その後、いろいろ調べていくと、かなり危ない回路のステッピングモータードライバーだと分かった。今回はモータードライバーの修理の経過を報告する。

電源は入るがモーターが回らない1台目から修理

 図1にモータードライバーの部品面の写真を示す。なおメーカー名が分からないように加工している。

図1:モーター駆動基板の部品面 ※一部加工を施している (クリックで拡大)

 図1の基板の電源部を簡単に説明する。AC100Vの入力は右上の端子台に接続されヒューズ2個を通して上側中央のダイオードブリッジ(赤四角)で整流され、4個の電解コンデンサーに充電されて、モーター電源のDC140Vが生成されていた。

 制御電源にはハンダ面に実装された6.8Ωの表面実装タイプの抵抗(以下、SMT抵抗)を通してこのDC140Vが供給されており、黄色のトランスとその左下のFETを使ったRCC回路で、DC20Vの電源が生成されていた。DC20Vからレギュレーター(赤楕円)で12Vが生成され、その下側にはハンダ面に実装されたICの「MAX730」で、降圧DC-DCコンバーター回路でDC5Vが生成されていた。DCDCコンバーターの制御ICはハンダ面にあり、チョークコイル、ダイオード、コンデンサーが部品面にあった。ハンダ面の写真を図2に示す。

図2:モーター駆動基板のハンダ面 ※一部加工を施している (クリックで拡大)

 図2にハンダ面の写真を示すが、ここで最も重要な部品が下側の中央にあるSMT抵抗(赤四角)のR21(6.8Ω)と右側の中央にあるDC-DCコンバーター用ICのMAX730(赤丸)だ。R21はなぜか、一次電源を整流したDC140V程度の電源を制御電源に供給していた。電力値が小さく、ヒューズ抵抗のような使い方だった。

5V電源を測ると4.36V

 電源部の構成が確認できたので、1台目の修理に取り掛かった。AC100Vを通電したら通電表示の赤LEDは点灯した。しかし5Vの電圧をマルチメーターで測定すると4.36Vしかなかった。これではCPUなどのICは正常に動作しないだろう。5V電源の波形をオシロスコープで確認した。図3に示す。

図3:5V電源の波形 (クリックで拡大)

 図3で5Vの電圧は4.36Vしかなく、0.2V程度のリップル波形が観測された。発振周期は4マイクロ秒程度であり、発振周波数は250kHz程度になる。5V電圧が低い原因はDC-DCコンバーターの出力側のコンデンサーの等価直列抵抗(ESR)が高いためだと推定された。降圧コンバーターのチョークコイルやコンデンサーの拡大写真を次ページの図4に示す。

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