電磁気学入門講座。今回は、表皮効果の別の結果である近接効果について説明します。
近接効果は、表皮効果の別の結果です。もう少し細かく言うと、近接した導体の外表に流れる電流は、それぞれに非常に近寄っているので磁界が重なり合っています。
これは電流の流れをひずませ、導体の反対側の電流の大半を1カ所に集中させます。さらに局所のピーク電流密度は増加し、そのため銅損が増加します。表皮電流は非対称になります(図1)
近接した導体の電流が逆方向に流れている場合、近接効果によって、電流の大半は互いに最も近い表面を流れ、導体の反対側の電流を減少させます(上図の左右が逆)
これは、近接効果が、2つの導体に流れる電流の方向に関係なく、2つの近接したワイヤ間に発生することを意味しています。また、近接効果は、近接する電流が流れていない導体に誘導電流を生じさせ、コアを合わせて保持している金属クリップは電気的接続がないにもかかわらず、電流の流れに干渉します。
多層巻き線に関しては、近接効果は電流の流れを乱す2つの要素として働きます。近接したワイヤの電流密度バランスに影響を与えるだけではなく、近接した層にも互いに影響が及びます。
1層構造で近接した導体が2、3、5本(電流の方向は皆同じ)の効果を図2に示します。「+」は電流密度が流れる等価DC電流(点線)より高いことを表し、「-」は低いことを表しています。効果は累積的で、「+」「++」「+++」のように示されています。近接効果は結果的に電流を外側表面に集中させ、中央の導体の電流を抑制します。
近接効果は、層間でも同じように発生し、最も外側の層に電流が集中します。
以下の式から、n層目巻き線のピーク電流密度の関係を見いだすことができます。
3層巻き線では、公称電流の5倍の電流が最も外側の層に流れ、4層巻き線では7倍の電流が流れます。両方ともに、最も内側の巻き線のコアに最も近い表面に流れる電流はほぼゼロです。
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