パワーエレクトロニクスを用いるさまざまな製品では、大電力化による大電流対応の設計が求められています。例えば、EVではバッテリーの大容量化が進んだことで、従来よりも高出力なモーターを搭載できるようになりました。高出力モーターには多くの電力が求められ、その電力を供給する回路には大電流対応が必要になっています。
プリント基板の設計では、一般的に銅箔厚35μmの場合、1Aの電流を流すために1mmの配線パターン幅が必要とされます。これを超える電流が流れると、発熱や焼き付きなどの問題が生じてしまいます。本章では、大電流を安全に流すための3種類の対応手法についてお話しします。
1. パターン幅を広げる
パターン幅を広げることで、大電流を流せます。上述の電流1Aに対して配線パターン幅1mmの目安から単純に考えると、50Aを流すためには50mmのパターン幅が必要になります。(プリント基板設計規格IPC-2221に準じた設計の場合は、更に広げる必要があります)
その副作用として、電流量に比例して基板面積がどんどん大きくなってしまいます。許容スペースに収められなかったり、製品の小型化の要望には応えられないため、適用できるケースは限られています。
2. パターンの厚みを増やす
基板面積を大きくしないために、パターンの幅ではなく厚みを増やすアプローチもあります。パターンが厚く作られた基板を「厚銅基板」と呼んでいます。
標準的な製造方法で対応できる銅箔の厚みは35〜70μm位ですが、厚銅基板は数百μmの銅厚のパターンを備えています。パターンの幅を広げることなく立体的にパターン体積を稼ぐことで、大電流を流せます。
基板の面積が増えないため一見魅力的な対策に見えますが、厚銅基板では基板の製造工程上、狭ピッチ対応が難しく小電力系のマイコンなどを搭載できません。結果として小電力系と大電力系(厚銅基板)の2枚の基板に分けて設計することになり、写真のような複数基板の構造になります。基板のコストアップにつながり、設計作業も複雑化してしまいます。
3. 基板の多層化
電流を流す配線層の数を増やすアプローチもあります。多層基板の内層銅箔に210〜500μmなどの厚みを持たせることで、大電流を複数の内層に分けて流す方法です。表面層は標準的な銅箔厚に抑えることで、厚銅基板では搭載できなかった狭ピッチ部品も問題なく搭載できます。
一方で、基板の多層化は製造工程が増えるため、パターンの幅や厚みを増やす対策よりもコストがかかることが問題になります。
大電流に対応するための3種類の基板対策をご紹介しました。どの方法も基板の大型化やコストアップなど新たな課題を生じるため、対応手法の即決は難しいでしょう。手法の選択に悩んだとき、これらの課題も解決できる打開策はないのでしょうか?
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