今回と次回で、Analog Devices(ADI)のDSP+CPUである「Blackfin」を取り上げる。まずはその“前哨戦”として、ADIのDSP「SHARC」が開発された経緯をたどりたい。
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DSP+CPUというテーマは、1990年代末〜2000年代初頭にかけて、あちこちでチャレンジされた構成である。2026年8月に取り上げた「シーメンス時代に開発された「TriCore」 今は車載MCUで息づく」のTriCoreもそうだが、Imagination TechnologiesのMETAプロセッサなんかもそうだ。そういうDSP+CPUの代表例とも言うべき存在がAnalog Devices(ADI)の「Blackfin」である。ただそのBlackfinに話を持っていく前に、ADIのDSP製品について説明する必要があるだろう。
もともとADI「も」DSP製品を1980年代から手掛けていた。「も」というのは1970年代後半のTRW MPY016HやTexas Instruments(TI) TMS5100、NEC μPD7720、AT&T DSP1、Altemira DX-1と続き、1983年にTI TMS32010などが相次いで発表され、これが第1世代DSP世代製品として認識されているからだ。ADIはちょっと出遅れており、この時期だとAC97のCodecであるAD1980(図1)とかは、確かに一部Digitalでの処理はあるが、これをDSPと呼ぶのはさすがに無理がある。
図1:AD1980。音声処理をDigitalで処理しているという意味では広義のDigital Signal Processingと言っても良いかもしれないが、Programmableではない[クリックで拡大]まっとうな意味でのDSPは、1986年に発表され、1987年に出荷開始されたADSP-2100ファミリー(図2)が最初のものとなる。これは第2世代DSP世代製品として分類されており、競合はMotorola DSP56000やTIのTMS31010の後継製品になる。ちなみに1987年にPhilipsはLIFE-1というVILWベースのプロセッサの開発をスタートしており、これは1997年にTriMedia TM1000として製品化を果たすが、開発開始時期はともかく、競合とは言えないだろう。
話を戻すと、ADSP-2100シリーズの基本構成はこんな感じ(図3)である。演算性能は40ns Cycle(つまり25MHz駆動)で25MIPSとされており、要するにArithmetic Unitは1cycleでのOperationが可能である。そのArithmetic Unitは16bit幅である。残念ながらALUとMAC、Shifterは同時動作は出来ない。とはいえZero Overhead loopとかLow power Idleなどを持つ。Cyclic Addressingモードは持たないが、Autobuffering with Single-cycle overheadの機能が搭載されるなど、ほぼDSPを名乗るのに必要な機能は搭載されたとみて良いと思う。
このADSP-2100シリーズは固定小数点動作の構成であり、それで十分な用途(Industrial Automationや通信、モーター制御など)に活用されることになったが、逆にMotorolaのDSP56000が採用されている用途(24bit MACを搭載し、例えばハイエンドオーディオ向けなどに活用された)向けには力不足が感じられるものになった。この辺もあってか、1994年にSHARCことADSP-21060シリーズ(図4)がリリースされる。
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