図1は、PWM、ZCS/ZVSコンバータのスイッチング素子を流れる電流波形を表している。ZCS/ZVSコンバータでは、パルス幅、つまりはオン時間T1が固定されており、繰り返し速度、すなわち周期T2が変動する。一方、PWMコンバータはその逆であり、繰り返し周波数が固定で、パルス幅が変動する。立ち上がり/降下時間T3は両方ともに固定である。図1のように、ZCS/ZVSコンバータでは電流波形が実質的に半波整流正弦波であるため、立ち上がり/降下エッジによる高周波成分が発生しない。
PWMコンバータの信号波形の周波数分布は図2(a)のようになる。一方、ZCS/ZVSコンバータのそれは図2(b)のようになる。PWMコンバータのほうは、高調波の振幅が大きく、高次まで広く分布している。一方、ZCS/ZVSコンバータでは、高調波の振幅は小さく狭い周波数範囲にスペクトルが集中することになる。
PWMコンバータでは、電流変化速度(di/dt)が大きいことから寄生素子が強く励起される。そのため、EMIノイズへの対応が難しくなる。寄生素子の励起により、10MHz〜30MHzくらいの範囲でノイズが発生する。そのノイズがトランスを経由してコモンモードで2次側に結合するので、低減するのが困難なのだ。一方、ZCS/ZVSコンバータの電流波形は立ち上がり/降下のエッジがなく滑らかに遷移する。そのため、寄生素子に起因するノイズが少ない。
低ノイズが求められる用途で用いるためにDC-DCコンバータのノイズを最小化したいなら、まず第一に、本質的にコモンモードノイズの少ない ZCS/ ZVSのような方式の製品を選択すべきである。逆に、そのような用途には使用すべきでない製品もある。例えば、制御素子が銅板の上に組み立てられているような製品では、1次側電位を基準とする制御素子と2次側電位を基準とする制御素子との間に銅板を挟んで寄生容量が形成され、コモンモードノイズが増大する。
補足事項だが、EMI規格に制約されない用途であっても、コモンモードノイズを効果的に低減するために、DC-DCコンバータの入力端子と出力端子にはバイパスコンデンサを使用するのが普通である。図3に、バイパスコンデンサのみをフィルタとして使用して、ZCS/ZVSコンバータのノイズを計測した結果を示しておく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.