続いて、EMIノイズへの対策について説明する。
通常、電力モジュールは入力用と出力用のフィルタを内蔵している。しかし、多くの場合、システムの要件や公的な規制を満足するために、外部にフィルタリング機能を追加する必要がある。例えば、FCC(Federal Communications Commission:連邦通信委員会)および欧州当局の規格では、ACラインに帰還するノイズレベルの許容値を定めている。このような課題に取り組んでいるシステム設計者にとって、ほとんどのDC-DCコンバータメーカーから提供される詳細なアプリケーションノートや、理論的/経験的な面で熟達した技術スタッフの支援を活用するのは有効な策だ。さらに、一部のDC-DCコンバータメーカーは、EMIフィルタなどのモジュールをアクセサリとして提供している。そうしたフィルタを使用することによって、時間を節約できるとともにリスク対策も行える。DC-DCコンバータメーカーから供給されるEMIフィルタを組み込み、適切に実装するという方策は、製品をEMC(electromagnetic compatibility:電磁的整合性)規格に適合させるための方針として効果的だ。
米国/欧州では、FCCとVDE(Verband der Elektrotechnik)のクラスA/クラスB規格により、伝導ノイズエミッション(放出)が規制されている。米国では、工場設備にはFCCのクラスA規格、家庭用にはより厳格なクラスC規格に対応することが要求されている。一方、欧州の各国では、工場用/家庭用ともにVDEのクラスBの基準を満たすことが要求される。
今日のスイッチング電源の大半は、100kHz〜1MHzの周波数で動作する。通常、この基本スイッチング周波数とその高調波に伝導ノイズの周波数分布のピークがあり、これが電力ラインに帰還するノイズとなる。EN55011やEN55022などの伝導ノイズエミッションに関する規格では、DC- DCコンバータあるいは電力システムの入力から入力ACラインに帰還する伝導ノイズの準尖頭値/平均値の許容レベルが150kHz〜30MHzの周波数範囲で規定されている。
EMIフィルタとしては、図4のような回路が1個のパッケージに組み込まれているものが多い。スルーホール実装型のEMIフィルタの場合、コモンモードチョーク、ライン‐グラウンド間のYキャパシタ、2個のインダクタ、ライン間のX キャパシタから構成される。図中のZ1は過渡的な入力変化に対する保護素子として働く。この構成のフィルタであれば、伝導ノイズをEN55022のクラス B規格に適合するレベルまで十分に減衰できる。
図5は、EMIフィルタを使用した場合のPWMコンバータとZCS/ZVSコンバータのノイズを比較したものである。図3に示したZCS/ZVSコンバータのフィルタ非使用時ノイズが、フィルタ使用時のPWMコンバータのノイズ特性よりも優れていることにも注目されたい。
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