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ソレノイドを使いこなす(3/5 ページ)

» 2007年11月01日 00時00分 公開
[Timothy G Morrill(米Raytheon社),EDN]

より良い制御方式の選択

 インダクタの充電時定数は、インダクタンスを抵抗値で割った値になる。つまり、ソレノイドの場合、そのインダクタンスを直流抵抗の値で割ればよい。ソレノイドの電流が引き込み電流に達するまでの時間が長くなれば、線材の温度が高くなり、線材の温度が高くなれば直流抵抗が大きくなる。この状況はソレノイドに印加する電圧値をコントロールしても改善されない。

 直流抵抗が時間的に変化すると、ソレノイドの動作にかかわる時間にも変化が現われる。インダクタは電流依存素子(端子間電圧が電流の1次微分に比例する素子)なので、コイルの電流を制御する方式がより良い選択肢となる。その場合、開ループによって電流制御を行おうとするのは、安定動作のためにソレノイドの動作条件をどのように設定すればよいのかを見極める必要があるので困難な作業となる。閉ループ制御の必要性はこうした点にある。

 繰り返しになるが、電圧制御は有効ではない。電流に依存する素子であるインダクタを制御するには、やはり電流を制御することが必要である。それにより、信頼性を備えた制御系の実現が可能になる。この観点から、図2の制御系を改善し、ソレノイドの制御部に電流制御ループを加えたものが図4の構成である。


図4 電流制御ループを適用した制御系 図4 電流制御ループを適用した制御系 

 電流制御ループは、ソレノイドのコイル、PWM(pulse width modulation:パルス幅変調)コントローラ、フィードバックアンプによって構成される。その前段のコントローラには、図2と同様のオン/オフ型のものを使用できる。電流制御ループは燃料制御(プロセス制御)を行う主ループの内部に組み込んでいる。電流制御ループとして必要な性能は、プロセス制御からの要求によって決まる。換言すれば、電流制御ループを適切に設計する上では、プロセス制御の要求条件を十分に把握しておくことが欠かせないということだ。

クロックの設計

 本稿の例は、周波数50Hzを基本としたプロセスを扱う制御ループであるとしよう。すなわち、コントローラから電流制御ループへの指示信号(入力信号)は20msごとに更新される。プロセス制御に必要な条件を満足するには、電流制御ループが指示信号の更新期間よりも十分に短い時間内に応答するようにしなければならない。言い換えれば、電流制御ループの周波数応答は、プロセス制御ループと比較して十分に高速であることが必要になる。経験則からいえば、電流制御ループの周波数は、主ループを不安定にしない条件として、主ループの5〜10倍であることが必要である。本稿の例であれば、必要な帯域は1kHz程度となる。

 図5に示したのは、電流制御ループの回路構成と制御信号のタイミングである。PWM回路のクロック周波数(以下、PWM周波数)は駆動電流を十分な分解能で制御できる程度に高くする。ソレノイドは2.2Aの電流でオン、電流がゼロでオフのバイナリ動作(2状態動作)となるが、制御回路は、引き込み電流(2.2A)と保持電流(0.75A)の2レベルに電流を制御するように設計する。

図5 電流制御ループの回路構成と制御信号のタイミング 図5 電流制御ループの回路構成と制御信号のタイミング 

 ソレノイドの近傍にノイズに弱い電子回路がある場合には、PWM回路のクロック(以下、PWMクロック)をシステムクロックに同期させることが望ましい。PWM周波数の設定に当たっては、システムのノイズ耐性を考慮しておくことが肝要である(ノイズ対策に関しては後述する)。

 PWM周波数での負荷応答特性の調整には、コンデンサを使用する。その値はソレノイドのインピーダンスとの関係で決める。PWM周波数はMOS FETドライバの特性にも関係し、その周波数を高くするほどMOS FETでのスイッチングロスが大きくなる。本稿の例では、PWM周波数が125kHz、デューティサイクルが90%であるとする。

 ソレノイドをオフするには、電流を直接ゼロに制御するのではなく、イネーブル/ディセーブル入力から目標電流値を指示することとする。その指示によりソレノイドをターンオン/ターンオフに制御する。駆動回路をディセーブルにするにはPWMクロックを停止する。このようなイネーブル/ディセーブル入力を使うことにより、必要なときのみソレノイドのバルブをアクティブにできる。

 目標とする電流値は、ロジック的に制御することが可能である。この例では、ロジックレベルのハイ(5V)にすると引き込み電流(2.2A)が設定され、ロー(0V)にすると保持電流(0.75A)が設定される。

 ソレノイドのコイルを駆動する電力は、定格28Vの電池2個からの合計56Vにより供給されるとしよう。ただし、熱電池の端子電圧は最初は32Vだが、寿命が近づくと24Vまで低下する。従って、供給電圧は64Vから48Vの範囲で変化することになる。

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