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第5回 抵抗とコンデンサを直列接続した回路の過渡現象を理解するアナログICの基礎の基礎

» 2009年03月05日 00時00分 公開
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 抵抗やコイル(インダクタンス)、コンデンサなどが存在する電気回路で、電圧信号と電流信号が時間とともに、どのように変化するのか。その様子を分かりやすく解説します。

 前回(第4回)は、抵抗とインダクタンス(コイル)を直列接続した回路で過渡現象をご説明しました。今回は抵抗とコンデンサ(キャパシタ)を直列接続した回路を取り上げます。

抵抗とコンデンサの表記と呼び方

 始めは、抵抗とコンデンサの表記と呼び方をおさらいしましょう。抵抗については前回も説明しましたが、復習を兼ねて今回も説明しておきます。

 抵抗はレジスタンス、またはレジスタと呼ぶこともあります。ただしレジスタは論理回路の「レジスタ」と紛らわしいのでお薦めしません。「抵抗」あるいは「抵抗器」、「抵抗素子」と表記しましょう。

 コンデンサはキャパシタ、またはキャパシタンスと呼ぶこともあります。コンデンサとキャパシタの違いは明確ではありません。いずれも静電容量を主成分とする素子です。受動部品ではコンデンサと呼ぶことが多く、半導体チップ(ダイ)内部の回路素子ではキャパシタと呼ぶのが普通です。ボード設計ではコンデンサを扱い、半導体回路設計ではキャパシタを扱うとも言えます。

 記号で表記するときは、「抵抗」はR(アール)、「コンデンサ(キャパシタ)」はC(シー)と略記します。電気回路に関する会話ではそれぞれ、「アール」および「シー」と略して呼ぶことが珍しくありません。

値の高低と大小

 抵抗の定性的な値は、「高い」、「低い」と表記するのが普通です。高抵抗、低抵抗などと記述します。「大抵抗」とは書きません。ところが電気回路の会話では「抵抗値が大きいので」などと「大小」を使うことが少なくありません。もちろん「抵抗値が高いので」と発言しても何の問題もないし、実際、聞くことがあります。

 一方、コンデンサの定性的な値は、「大小」で表記することが多いのです。「大容量のコンデンサ」、「小容量のキャパシタ」などと記述します。会話でも「大容量コンデンサを外付けして」といった、「大小」での表現が普通に聞かれます。「高容量」、「低容量」といった言葉は、会話では聞かれることが少ないです。

 ところで、英文では抵抗とコンデンサはいずれも「高低」で表記します。高はhigh、低はlowです。low resistance、high capacitanceといった具合です。「大小」では表記しません。

乾電池にRとCを直列接続したときの電流の変化

図1 図1:抵抗RとコンデンサCを直列に接続した閉回路

 それではRとCを直列に接続した簡単な電気回路で、電圧信号と電流信号のふるまいを考えてみましょう。

 乾電池や二次電池などの直流電圧源Vと、スイッチSW、抵抗R、コンデンサCが直列に接続された閉回路を想定します(図1)。始めはスイッチSWが開放(オフ)状態です。コンデンサCには電荷が蓄えられていないものとします。

 ここでスイッチSWを短絡(オン)状態にします。直流電圧源Vの電圧Vが抵抗RとコンデンサCに加わります。抵抗Rの両端に加わる電圧をvR、コンデンサCの両端に加わる電圧をvCと定義しますと、VはvRとvCの合計値で、常に一定です。

図2 図2:図1の閉回路を流れる電流iの時間的変化(このグラフは定量的には正しくありませんのでご注意ください)

V=vR+vC

 コンデンサCの両端に加わる電圧vCは、閉回路を流れる電流iの時間積分に1/Cを掛けた値となります。抵抗Rの両端に加わる電圧vRは、電流iにRを掛けた値です。スイッチSWをオンにすると、電流iの時間積分がゼロから始まります。したがってスイッチSWをオンにした直後は、VとvRはほとんど等しくなります。vCはほぼゼロです。

 電流iはどうなっているでしょうか。スイッチSWをオンすると、電流iは一気に流れ出し、コンデンサCを充電し始めます。ここで電流iの初期値はV/Rです。

 電流i(時間はゼロ)=V/R

 コンデンサCが充電され始めると電流iは減少します。vCが増加し、vRが減少します。電流iは時間の経過とともに減少しますが、電流の時間積分は増加していきます。そして時間が無限大に達すると、電流iはゼロになります。このときVはvCに等しくなります。

 電流i(時間は無限大)=0

 電圧V(時間は無限大)=vC

 vR(時間は無限大)=0

 ここでCとRの大きさが、電流iがゼロに近付く早さ(定常状態に近付く早さ)を決めます。CとR、V、iに関する微分方程式を解くと、電流iは「マイナス(1/(C×R))」を係数とする指数関数で時間tとともに減少していくことが分かります。このとき、「C×R」を時定数τ(タウ)と呼びます。時間tが時定数τのときに、電流iは初期値のおおよそ0.37倍の値となります。

 時定数τが小さいと、電流iは時間経過とともに急速に減少します。時定数τが大きいと、電流iは時間経過とともにゆっくりと減少します。




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アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日

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