メディア

第13回 デジタル・アシスト・アナログ技術(その1)アナログICの基礎の基礎

» 2009年03月13日 00時00分 公開
[PR/EDN Japan]
PR

 前回(第12回)は、アナログ回路のほとんどはデジタル回路と混載されており、アナログ回路とデジタル回路の混載チップ、いわゆる「ミクスドシグナル」と呼ばれるIC製品がごく普通になっていることを説明しました。

 ミクスドシグナルICの設計では、デジタル回路の規模が少々増えても構わないから、アナログ回路を減らすとともに、外付け部品を減らすことが求められます。こういった動きとは別に、アナログ回路の性能そのものをデジタル回路によって高める技術の開発が進められています。この技術は「デジタル・アシスト・アナログ(DAA:Digitally Assisted Analog)技術」と呼ばれています。

photo 図1:CMOSの微細化と低電圧化による影響

 DAA技術の考え方は、CMOSアナログの微細化と低電圧化によって浮上してきました。アナログ回路では、信号の歪みをオペアンプと呼ばれる増幅回路によって抑制しています。歪みをどの程度にまで抑えられるかは、オペアンプの利得(増幅度)によって決まります。ところがCMOSアナログでは微細化と低電圧化によってオペアンプの利得が低下しており、信号歪みを抑えられなくなってきています。

 またミクスドシグナルICとアナログICでは、数多くのトランジスタの特性が均一にそろっていることを前提として動作しているものが少なくありません。トランジスタの特性がばらつくと、アナログICの性能を劣化させてしまいます。このばらつきが、微細化によって増大するのです。だからといって、微細化しないトランジスタを内蔵したり、電源電圧を上げたりすると、シリコン面積の拡大(製造コストの上昇)や消費電力の増大を招きかねません。

 こういった問題から、将来の最先端ミクスドシグナルICではDAA技術の導入が必須になると見られています。

photo 図2:デジタル・アシスト・アナログ(DAA)技術の効果

 例えばデジタル・アナログ変換器(D/A変換器)とよばれる、デジタル入力をアナログ出力に変換するICでは数多くの比較器(コンパレータ)を内蔵していますが、比較器の性能ばらつきが大きいと所望の性能を出すことができません。そこでDAA技術では比較器の性能ばらつきをデジタル回路で補償し、歪みを抑制するのです。このようにして、CMOSの微細化と低消費電力化を維持しながら、要求されたアナログ性能を実現しようとしています。

 デジタル回路による補償とは、具体的にはデジタル演算によって補正値を算出し、リアルタイムで補正値をアナログ回路に付加することです。トランジスタの特性ばらつきを補償する、増幅回路の利得のばらつきを補正する、歪みを減らす、といった効果が期待されています。




Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日

設計に役立つヒント集

宮崎 仁のQ&Aでよく分かるマイコン基礎の基礎:
第24回 割り込みっていろいろあるのですか?どんな種類があるか教えてください。

今回は、外部割り込み、内部割り込み、ソフトウェア割り込みについて詳しく解説しています
全文を読む


電源IC選択のヒント集
電源IC 使用時の注意点をわかりやすく説明しているほか、使用時に発生する可能性のあるさまざまなトラブルとその対処法についても紹介しています。ぜひご利用ください。ダウンロードには myTI アカウントが必要です。
Part 1をダウンロード
Part 2をダウンロード


アナログ回路設計式一覧ポケット・ガイド
日本語版 PDF

英語版で高い評価を受けてきたポケット・ガイドの日本語版が完成しました。基板レベルやシステム・レベルの回路設計でよく使われるアナログ設計式を紹介しています。ダウンロードには myTI アカウントが必要です。
ダウンロード



facebook & twitter

製品情報、セミナーや展示会などのイベント情報をお知らせしています。

RSSフィード

公式SNS

EDN 海外ネットワーク

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.