さて不具合現象の『温度表示が時々、大幅に外れることがあり、電源を切ると元に戻る』の原因を推定していこう。PT100センサー端子周辺の拡大図を図2に示す。
図2の右上の白い配線にPT100が接続されている。上側の3つの可変抵抗でPT100の温度補正を行い、図2中央の2個の8ピン オペアンプIC(LM308)で温度信号を増幅し、増幅した電圧をTC7107のアナログ入力に入れ、温度表示している。
PT100にドライヤーで熱風を吹き付けると温度表示が80℃を超えたので、基板は正常に動作している。温度表示が急に変わるのはPT100の信号にノイズが乗るためと思われた。外部からのノイズが不具合の原因である可能性が高そうなので、PT100からオペアンプへの接続途中にあるノイズ除去用コンデンサー(赤四角)を交換してみた。
ノイズ除去用コンデンサーの交換という仮修理を施した基板を依頼主に納品し、動作確認を依頼したところ『誤動作しなくなった』という回答があった。この対策だけでは不十分かもと少し不安があったが、一応は動作が安定したようだ。
納品して10日後に連絡があった。依頼主がこの温調器のメンテナンスを終えてエンドユーザーに出荷するための検査として2時間ほど連続運転させると、温度表示がマイナス表示になってしまったということだった。温調器の出荷日は数日後ということだったので急いで現場へ出向き、動作状況を確認すると、運転中、頻繁に不具合現象が出てしまっていた。
温調器に温度表示基板が設置された状況を確認すると、基板の直下にトランスがあった。温度表示基板のハンダ面に実装されたリレーの接点でこのトランスに供給するAC200VをオンオフしACポンプを駆動していることが分かった。どうやら、ノイズ源はリレー接点でAC200V電圧をオフさせる時に発生するサージ電圧のようだ。ハンダ面の写真を図3に示す(この写真もノイズ対策を行った後の写真だ)
図3の右側にある黒色のリレーの接点でAC200Vの電圧をオンオフしていた。
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