今回は、温度表示がズレてしまうという温度調節器に使われている温度表示基板を修理する。どうも温度表示基板自体には不具合はなく、ノイズの影響で誤表示を起こしているようなので、ノイズ対策を施していこう。
温度調節器(温調器)の修理を行う企業から、温調器に使用されている温度表示基板部分の修理を助けてほしいとの依頼がきた。不具合内容は、『温度表示が時々、大幅にズレることがあり、電源を切ると元に戻る』ということだった。不具合の現象からするとノイズ源が表示基板の近くにあり、基板の部品がラッチアップしているようだ。面白い不具合内容だったので修理を引き受けることにした。今回は温度表示基板の不具合調査結果を報告する。
基板を預かって実装部品を確認すると、回路としては、難しくはないように思えた。基板の写真を図1に示す(なお、この写真は修理が終わった後に撮影したものだ)
図1の右上にある白い配線は4線式のPT100(測温抵抗体)を2線にして端子にハンダ付けしてある。中央上の7セグメントLEDディスプレイには測定された温度が表示される。基板の中央上に実装されたメインのコントローラーICは表示制御機能付きのA-Dコンバーターとしておなじみの「TC7107」だ。
修理支援を頼まれた依頼主に、この基板に接続される電源電圧を問い合わせた。その結果、下側に実装されたヒューズの電圧は左から+24V、+15V、−15Vの順だった。±15V電源がアナログ電源で、+24V電源がデジタルの主電源だ。左上の放熱板の下にレギュレーターがあり、+24V電源からロジックIC用の+5V電源が生成されていた。
この3つの電源を通電させると、表示温度が徐々に上がって199℃を超えて7セグメントの表示がオーバーフローになって消えた。PT100のコモン側に未結線の信号があるようだ。PT100の下側の端子のパターンを追いかけたら、図1下側の中央にあるコネクターに接続されていた。外部コネクターを通してアナログのグランドに接続されているようだ。図1左側のPT100の下側の端子を直接ワニ口クリップの配線でグランド(放熱板)へ接続すると、室温が表示された。基板単体では正常に動作しているようだ。
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