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「6G」研究で知っておきたいテストパラメータテラヘルツへの心構え(2/3 ページ)

» 2020年07月10日 12時00分 公開

さらに高い周波数における6Gの設計とテストの課題

 サブテラヘルツ/テラヘルツ周波数は、膨大な情報を含む帯域だ。広帯域または超広帯域を使用するサブテラヘルツ/テラヘルツ周波数システムの性能を最適化するには、主に以下のパラメータを検討しなければならない。

  • S/N比
  • 位相雑音
  • 線形/非線形の信号劣化
  • 波形の選択

 S/N比の最適化は、最善のエラーベクトル振幅(EVM)性能を実現する上で考慮すべき重要なポイントだ。信号パワーを最大化することで最高のS/N比を実現できるが、統計的なピーク対アベレージ特性に起因する信号成分の圧縮を回避するには、信号パワーを減少させる必要がある。広帯域アプリケーションでは広い帯域幅全体にわたってノイズが積算されるので、S/N比へのノイズの寄与も問題となる。

 中間周波数(IF)とサブテラヘルツ周波数間のアップコンバートとダウンコンバートには、局部発振器(LO)、信号源、周波数コンバーターによる周波数変換が関連する。周波数逓倍器は、信号の変調特性に影響を与えないために信号パスでなくLOパスで使用されることが多いが、これは位相雑音を増加させる。周波数逓倍器は、逓倍したLO位相雑音をさらに劣化させる相加性位相雑音の原因にもなる。サブテラヘルツ周波数域における低残留EVMの性能をテストするには、高品質で低位相雑音のLO信号源が必要になる。

 以下で、中心周波数6GHzのIF変調信号源を備えたシンプルなコンバーターデザインを例にとり、これらのパラメータの重要性を説明する。

図2:サブテラヘルツのアップコンバーターデザインの例 出典:Keysight Technologies(クリックで拡大)

 この例で、変調は直交位相シフトキーイング(QPSK)、16QAMまたは64QAMに設定できる。シンボルレートが8.8GHzに設定され、アルファが0.22のルート・レイズド・コサイン・フィルターを通ったIF変調信号は、ミキサーで144GHzにアップコンバートされる。LO信号源の周波数は23GHzで、後段の周波数逓倍器で6倍されるので、ミキサーのLO周波数は138GHzになっている。

 6GHz IFでこれがアップコンバートされると、周波数が144GHzになる。LO位相雑音は、100kHzより大きい周波数オフセットに対してモデル化されており、オフセット周波数ごとにdBc/Hzで指定されている。この例では、アップコンバーターの出力部でシミュレーション結果を解析するために、ベクトル信号解析(VSA)機能を使用している。

図3:位相雑音のシミュレーション結果 出典:Keysight Technologies(クリックで拡大)

 占有帯域幅が約10GHzで、中心帯域幅が144GHzの信号を確認できる。16QAMのコンスタレーションが左上に表示されている。コンスタレーションのステートの一つを拡大すると(白丸部分)、LO位相雑音の結果としていくらかの分散が確認できる。このコンスタレーションステートの分散は、右側のリスト表示中にある1.56% EVMに対応している。

 より高い周波数オフセットで位相雑音を10dBc/Hz上昇させると、コンスタレーションステートの回転と分散は増加し、EVMが4.07%に増加する。

図4:位相雑音が増加した状態での位相雑音の測定結果 出典:Keysight Technologies(クリックで拡大)

 不要な成分(例えばイメージ、LOフィードスルー、バンド外スプリアス、エミッション、その他非線形ミキシングによる周波数成分など)を削除するには、しばしばフィルターが使われる。フィルターはミキサーやアンプなどのテストシステム内の他のコンポーネントと同じく、超広帯域信号帯域幅における線形な振幅と位相エラーの要因となる。アダプティブイコライザーは、レシーバーに実装されているものと同様に、線形振幅と位相のエラーを軽減する。

 通常、レシーバーシステムには、信号源から受信する信号は理想的ではなく、伝搬による劣化を含むため、ある程度のベースバンドイコライゼーションが必要だ。広帯域幅または超広帯域幅のテストシステムにおいて、測定器レシーバー(IFデジタイザなど)はアダプティブイコライゼーションを使用して、超広帯域幅における線形振幅と位相劣化を取り除くことが可能である。

 だが、アダプティブイコライザーが機能するのは、線形振幅と位相エラーのみなので、雑音と非線形劣化はそのまま残り、イコライザーが有効になっているかどうかにかかわらず、EVMに影響を与える。アダプティブイコライザーは、テストシステムの信号パスまたはLO位相雑音において圧縮された増幅器から、非線形劣化を除去できない。これは、ミリ波(mmWave)テストシステムの残留EVMに影響を及ぼす可能性がある。

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