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プライベート5G向けの産業用デバイス、設計検証時に考慮すべきポイントとはテストニーズにも言及(2/3 ページ)

» 2022年04月15日 10時00分 公開

産業用デバイスの設計検証時に考慮すべき点

 産業用デバイスは多種多様で、プロセス制御やモニタリングアプリケーションで使用されるセンサー、アダプター、リモートI/O、AR(拡張現実)や資産管理ユースケース用のスマートグラスの他、リモートアクセスやメンテナンス用のドローン、モーションコントロールやモバイルロボット、さらには、その他のアプリケーション向けネットワークブリッジ、ルーター、ネットワークゲートウェイなど多岐にわたります。

 これらのデバイスには独自の特徴があります。例えば、クローズドループのプロセス制御やモニタリング、あるいは特定のイベント発生時に警告を発するなど、過酷な産業環境で使用されるIP67準拠のセンサーは、堅ろうな筐体を備えています。これらのセンサーの中には、内部の電子部品を保護するためにエポキシ樹脂や他の絶縁性液体化合物が充填されているものもあり、外部インタフェースは限られているか、全くないものもあります。

 5Gスマートグラスは、技術者がスマートフィールドデバイスの試運転や、メンテナンス作業、プロセスデータの可視化などをサポートするもので、高いアップリンク/ダウンリンクトラフィックと、低レイテンシの要件を備えています。また、バッテリーで駆動し、爆発する可能性のある環境など特殊条件下で動作する必要があります。

 ドローンは可用性が高く低レイテンシ要件があるのに加え、リアルタイムの測位と高UL帯域幅のニーズがあります。5G対応のドローンは、広範囲かつ遠方のエリアを効率的にモニターすることができますが、高性能な通信が必要となります。ドローンに搭載されたセンサーは、継続的にユーザーにデータを送信します。ドローンの制御には、高可用性、セキュリティ、低レイテンシ、リアルタイムの位置情報、時間同期サービスなどが重要な要素となります。

 無人搬送車(AGV)やその他モバイルマシン用無線ルーター、接続デバイス用LAN(Local Area Network)スイッチとなる5G無線ルーターも、エンジニアにとっては厄介な課題でしょう。交通管理システムやその他のIT機能を搭載したモバイルマシンでは、IP(Internet Protocol)ベースのトラフィックだけでなく、PROFINETなどの産業用イーサネットプロトコルも使われる可能性があります。

 ユニークな機能と統合要件により、産業用デバイスのテストニーズが高まっています。また、こうしたデバイスはますます複雑になってきています。例えば、将来のロボットアームには、位置精度や汎用性を高めるために、複数のデバイスを搭載することになります。図2に示すように、5G基地局に直接接続するか、ゲートウェイを経由して接続して使われることが想定されます。

図2:セルラ―デバイスを内蔵したロボットアームは、5G基地局に直接、あるいはゲートウェイを経由して接続される[クリックで拡大] 出所:5G-ACIA

 ロボットアームのような産業用デバイスへのセルラーモジュールの組み込みは、特に困難です。また、製造業務におけるダウンタイムやエラーはコストに直結するため、機能およびパフォーマンスの検証だけでなく、デバイスの接続性、信頼性、安定性を検証することが非常に重要です。

 消費者向けのセルラーデバイスに通常必要な検証や、コンフォーマンステストを全て考慮する必要があることに加え、ほぼ全ての産業用デバイスは堅ろうな環境で動作させる必要があるので、新たな検討事項も出てきます。

 チップセットやコンポーネントがシステムに組みこまれると、規格との整合性やデバイスの導入後の相互運用性を保証するために、コンフォーマンステストを実施する必要があります。まだ一般的ではありませんが、マネージドサービスを提供する一部のプライベートネットワーク事業者は、補足的なテストで産業用デバイスの品質を保証したいと考えています。

 コンフォーマンステストは、キーサイト・テクノロジー(以下、キーサイト)の「UXM 5G」などのネットワークエミュレーターを使用して実施することができます。認証を取得するためには、プロトコルおよびRF/無線リソース管理(RRM)ドメイン全体にわたって厳密なテストを行うことが不可欠です。

図3:キーサイトのネットワーク・エミュレーション・プラットフォームは、プロトコル、RF、機能、パフォーマンステストをカバーし、ベンチトップの研究開発からフルラックの受け入れテストまで拡張が可能[クリックで拡大] 出所:キーサイト

 エンドツーエンドのライフサイクル戦略を必要とするスマートファクトリーにとって、データのセキュリティは最重要事項です。この戦略は、デバイスに始まりデバイスで完結します。それらはサイバー攻撃に対する最初で最後の防衛線となります。新しい脆弱性が絶えず出現し、新たなあるいは未知の問題を引き起こすビルドがあるため、産業用デバイスのセキュリティを徹底的に評価することは、設計検証プロセスで見落としてはならないステップとなります。

 また、5Gは超信頼性低遅延通信(URLLC)機能を活用し、TSNのサービス品質(QoS)要件を満たします。5Gプライベートネットワークでは、デバイス間の時刻同期、レイテンシ保証、輻輳(ふくそう)損失のないことが必要であり、TSNとURLLCのデバイスをテストする必要性を高めています。

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