台頭しつつあるプライベート5Gネットワーク。本稿では、プライベート5G向けの産業用デバイスを設計検証する際に考慮すべきポイントを紹介する。
5G(第5世代移動通信)とマルチアクセス・エッジ・コンピューティング(MEC)は、将来のスマートファクトリーにとって不可欠なテクノロジーです。また、3GPP(3rd Generation Partnership Project)による5G「リリース16」のリアルタイム性が、インダストリアルIoT(IIoT)の発展に拍車を掛けています。5Gを補完してIIoTの制御アプリケーションをサポートするMECは、5Gシステムにリアルタイムの認識を提供すると同時に、ユーザーの近くにコンピューティングリソースを置くことで低レイテンシの実現に貢献します。
今後リリースされる標準仕様では、産業用アプリケーションに新たな機能が追加される予定です。2022年前半に商用化される「リリース17」では、5GとTSN(Time Sensitive Network)の統合を強化します。また、このリリースでは、5G測位を改善し、FA(ファクトリーオートメーション)やリモート制御のアプリケーションに不可欠なレイテンシを低減する機能も導入される予定になっています。
5G規格の進化において調整ステップともいわれる「リリース18」は、3GPPが公式に「5G Advanced」の傘下に置く最初のリリースとなります。このリリースでは、ネットワーク内のさまざまなレベルでの機械学習(ML)技術の実装など、ネットワークインテリジェンスが大幅に強化されます。人工知能(AI)の強化は、より要求の厳しい産業用ユースケースに欠かせないものとなるでしょう。
ワイヤレス接続、エッジコンピューティング機能、AIは、インダストリー4.0を実現する重要な要素であり、製造業における5Gの導入を後押しします。
Capgemin Research Instituteが1000の業界団体の上級幹部を対象に実施した最近の調査によると、30%が試験段階かそれ以上と答え、40%が今後2年以内に単一サイトで5Gを大規模に展開する予定と回答しています。また、早期導入企業の60%が、「5Gによって業務効率が向上した」と回答し、43%が「業務の柔軟性が高まった」と回答しています*1)。
同調査によると、多くの企業(64%)が今後3年以内に5Gベースのエッジコンピューティングサービスの導入を計画しており、調査対象企業の3分の1以上、特にハイテクや航空宇宙/防衛分野で事業を展開する企業が、5Gプライベートネットワークの導入を希望していると回答しています。
商用ネットワークと同様に、5Gプライベートネットワークは、ユーザー機器、無線アクセスネットワーク(RAN)、コアネットワークの3つの主要要素で構成され、一般的にMECを活用します。産業用デバイスは商業用デバイスとは大きく異なるため、設計エンジニアに新たな課題をもたらすことになります。
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