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ステップアップ形DC/DCコンバーターの設計(1)基本回路と動作原理たった2つの式で始めるDC/DCコンバーターの設計(8)(1/3 ページ)

今回からステップアップ形DC/DCコンバーターについて説明していきます。まずは、ステップアップコンバーターの基本回路と動作原理について解説します。

» 2024年04月23日 10時00分 公開

 本稿はステップアップ形DC/DCコンバーターについて説明していきますが理解に必要な最低限度の知識については先のステップダウン形DC/DCコンバーターの内容を読み返す必要がないように本稿でも改めて触れています。文中では回路記号に合わせてFETスイッチをFET-SW、ダイオードスイッチをDi-SWと表記します。

 特に注釈がなければ本稿では次の用語をコンバーターの状態を表す用語として共通的に使用します。

f:DC/DCコンバーターの動作周波数
ts:1周期の時間(=fの逆数)ts=ton+toffです。
ton:FET-SW(S1)が導通している時間
toff:FET-SW(S1)が遮断している時間
δ:tonがtsに占める割合(オン時比率)したがってton=ts×δ、あるいはδ=ton/tsです。

※インダクターは電流変化を緩やかにする目的で使われる時や蓄積されたエネルギーを積極的に使用する時および、他の回路部品と組み合わせて使用する時にチョークとも呼ばれますが本シリーズでは厳密には区別しません。

ステップアップコンバーターとは

 ステップアップコンバーターとはチョークの磁気エネルギーを利用して電源電圧以上の電圧を生成するコンバーターです。主としてUSB駆動機器や1次電池、2次電池など入力電圧の種別が限られている機器で使用されます。近年ではAC入力機器の力率補正(PFC)回路などにも用いられています。

基本回路と動作原理

 図1(a)にステップアップ形DC/DCコンバーターの基本回路を示します。動作解析のため、この回路をFET-SW(S1)とDi-SW(S2)を用いて図1(b)のようにモデル化します。
 さらに回路図をFET-SW(S1)のオン時とオフ時に分け、図2図3のように回路を分けて考えます。

図1:ステップアップ形DC/DCコンバーターの回路構成[クリックで拡大]

FET-SW(S1) オン時の動作(図2)

 FET-SW(S1)のオン期間中は図2に示すような電流経路で電源VccからチョークL1、FET-SW(S1)を介して電流を流し、チョークL1に磁気エネルギーを蓄積します。
 同時にDi-SW(S2)は両端には逆方向電圧が印加されるので遮断(カットオフ)状態になります。したがって負荷R1にはキャパシターC1からエネルギーが供給されます。

図2:FET-SW(S1)オン時の電流経路

 この動作原理に基づいて動作を表す式を考えます。ここでVは電源Vccの電圧です。
 Vccから供給されるチョーク電流は時間とともに増加しますがその増分ΔI(ON)はLの式(ΔI=(E/L)×Δt)を適用すると1式になります。

1式

 1式でVLはチョークL1の両端電圧です。
 この電流増加によってチョークL1の蓄積エネルギーは増加していきます。

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