所定のオン時間(ton)経過後にFET-SW(S1)がオフしてチョークL1への電圧印加が遮断されてもチョークL1は疑似定電流性によって直前の電流を流そうとします。その結果チョークL1の両端電圧VLは図2の状態から反転して図3に示すような出力電圧Voutを上昇させる極性の電圧になります。
この電圧上昇がキャパシターC1の充電電圧Voutを超えるとDi-SW(S2)は導通し、チョークL1に蓄積されたエネルギーは図3の電流ループでキャパシターC1に放出されます。この電流ループには図3から分かるように電源Vが含まれるためキャパシターC1は電源電圧以上の電圧に充電されます。
この電流によってチョークL1のエネルギーはキャパシターC1へ移りますので時間と共にチョークL1のエネルギーは減少し、このエネルギーの減少に従ってチョーク電流は減少します。
また発生する電圧VLの大きさはキャパシターの疑似定電圧性によって[出力電圧(Vout)−V]*に等しくなります。
このようにオン時とオフ時では電流の流れの一部が切り替わり、FET-SW(S1)やDi-SW(S2)に流れる電流は断続的になります。この電流の切り替わりや前述したチョークL1の両端電圧の反転は後で述べるDC/DCコンバーターのノイズ発生の源になります。
電流の変化率はLの式(ΔI=(E/L)×Δt)を適用すると
です※。
*チョークは疑似定電流性ですからL1の発生電圧は疑似定電圧性を持つキャパシターの電圧に左右されます。VLの極性は図2を基準にしていますので2式の負記号はVLの極性が反転していることを示しています(図3)。
図4の電流波形を基に平衡状態にあるDC/DCコンバーターの動作条件を考えます。この平衡状態とはある程度の周期で見た場合に状態が安定していることを意味します。
DC/DCコンバーターが一定の電圧を維持でき、状態が安定しているので1式の電流変化と2式の電流変化が等しくなります。この値をΔIとすれば両式の関係は3式になります。
この3式をVoutについて解くと電圧変換の様子を表す4式が得られます。
逆に必要なδを求める場合には4式を変形した5式で求めます。
δはオン時間の時比率であり、0〜1ですからステップアップコンバーターはδ=0でも電源Vccの電圧Vを下回ることはできませんがδが1に近づくにつれて急激に出力電圧は上昇します。
例えば
δ=60%→70%に+10%分変動すると電圧の変換比は2.50→3.33へ0.83変わりますが
δ=70%→80%に+10%分変動すると電圧の変換比は3.33→5.00へ1.67変わります。同じδの変化幅でも出力電圧の変化は大きくなることが確認できます。
この現象はステップアップコンバーター自身が電圧利得を持つことを意味し、制御ループの利得に影響しますのであるモデルでは安定していたものが出力電圧の上がった新機種では不安定になるといった現象を引き起こします。
ただし4式では電圧の様子は分かっても負荷電流の様子は分かりません。
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