さてそんな訳でx86のマーケットを侵食する事に失敗したPowerPCであったが、早くからIBMとFreescaleはこれを組み込み向けにも提供し始めていた。最初に手を打ったのはIBMで、1994年にPowerPC 601をベースにMMUやFPU等を省くなどして簡素化した(のちにMMU付きのものも追加された)もので、20〜100MHz程度の動作周波数で、1〜5Wという低い消費電力を特徴とした。このPowerPC 403は大当たりし、さまざまなEmbedded Controller用途に使われたのだが、いかんせんPowerPC 601ベースということで構造が複雑だった。
そこでPowerPC 403と同程度の性能・消費電力をもっとシンプルにという事でPowerPC 603eをベースにIn-Order構成の形で開発されたのが1996年のPowerPC 401である。50MHz駆動のPowerPC 401は45MIPSの性能で、0.44μmプロセスでコアのエリアサイズは5.5mm2と、悪くない特性だった。このPowerPC 401コアを基に、パイプライン段数強化(3段→5段)による高速化やL1の増量(命令/データが2KB/1KB→16KB/16KBに)、APU(Auxiliary Processing Unit)用I/Fの追加(後からアクセラレーターを追加できる)などを施したのが1998年のPowerPC 405である。1999年には2命令のOut-of-Order化や7段パイプライン化による高速化、L1キャッシュの大容量化+L2実装で大幅に性能を引き上げたPowerPC 440が登場。ここから、これをマルチプロセッサ対応にしたPowerPC 450や、DSP命令を追加したPowerPC 460が出て、2007年にはSIMD命令を追加したPowerPC 470が登場する。この間、IBMはいわゆるGeneral Embeddedに加え、ゲーム機(PS2)とかスーパーコンピュータ(RoadRunner)など幅広い用途にこのPowerPC 400系列を利用した。ただこのPowerPC 400系列、2004年にAMCC(Applied Micro Circuits Corporation)が丸ごと買収、以後はAMCCから発売される事になった。ただ時期的に言えばPowerPC 450/460/470はAMCCの買収後に発売されたコアであるが、PowerPC 470を最後にこれ以上コアの改良は行っていない。
一方のFreescaleは、IBMからちょっと遅れて1995年にPowerQUICC Iを発表する。QUICCは「QUad Integrated Communications Controller」の略で、もともとはMC68000にこのQUICCを組み合わせたMC68360という製品を通信機器向けに提供していた。この後継がPowerQUICC Iで、CPUコアをPowerPC 601をベースとしたものに置き換えた形だ。以後、PowerPC 603ベースのPowerQUICC IIが1998年に、後述するe300コアを搭載したPowerQUICC II Proが2004年にリリースされる。この頃Freescaleは通信プロセッサなどに向けてPowerPC 750をベースとしたコアを開発しており、これが2004年にe600コアとして発表される。e600は32bitプロセッサだったが、この後継というかe600と同時期に開発がスタートしていたのが64bitのe700コアであるが、これは最終的にお蔵入りした。話を戻すと、e600コアはその後、QorIQという同社のNetwork Processorの初期製品に採用されることになった。
Freescaleはさらに、PowerPC 603eと同等の性能を持つe300、これより性能が低い分シンプル(PowerPC 401相当などといわれていた)なe200コア、e300よりやや高い性能を持つe500コアというCPU IPを開発。e200コアは車載向けMCUなどに搭載され、e500コアはネットワークプロセッサ向けなどに主に使われた。e200はその後e200z0/z1/z3/z6と派生型が生まれたし、e500はマルチプロセッサ対応のe500mcに加え、64bit化したe5500やe6500なども生まれている。ただこうした製品のほとんどはもう既にDisconになってしまった。
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